医療情報・ニュース/製品担当者インタビュー

レーシックに続く近視治療『ICL治療』のこれから

近視の悩みを解消する手術として以前から行われている治療法には「レーシック手術」がありますが、今、レーシックに次ぐ新しい近視の治療法として、眼内にレンズを入れる「ICL眼内コンタクトレンズ治療」が注目されています。今回はICL治療に用いられるレンズを販売するスタージャパン合同会社マーケティング部の根木郁夫さんに、ICLの手術方法や、特長などについて最新のお話をうかがいました。

執筆者:All About 編集部

日本で、患者さんが眼科を受診する最も多い原因は「近視」。実は日本人は欧米人と比較して近視の割合が高いといわれ、人口の約3分の1が近視とされているのです。
 
お話を伺ったのはスタージャパン合同会社マーケティング部undefined根木郁夫さんundefined撮影:多田裕美子

お話を伺ったのはスタージャパン合同会社マーケティング部 根木郁夫さん 撮影:多田裕美子

近視でコンタクトをしているけれど、仕事で忙しい時や疲れた時には手入れが面倒!眼鏡を使っているけど、動くのにはやっぱり不便。周囲には、レーシック手術を受けて「とっても具合がいい」という友人もいるけれど、一方でうまくいかない場合もあるという噂も聞くし……。近視の状態はもう慣れてしまったけれど、眼鏡やコンタクトが不要になったらすっきりラクに暮らせそう……。そんな漠然とした不便さを感じる人も多いのではないでしょうか。
 
近視治療として知られているレーシック手術のほかに、最近新しく登場したのが、目の中に眼内レンズを入れる「ICL」手術という方法。“インプランタブル”コンタクトレンズという意味だそうです。インプラントは歯医者さんで有名だけど「埋め込み型」という意味。でも目の中にコンタクトを入れるってちょっと大変……? どんな手術なんでしょう?
 
今回はICL治療に用いられるレンズを販売するスタージャパン合同会社マーケティング部の根木郁夫さんに、ICLの手術方法や、特長などについて最新のお話をうかがいました。
 
 

次世代を担う近視治療法として注目されるICL手術

ICL治療は世界的に見ると10年以上前から認知され、70か国で42万眼以上に使用されているそうです。でも、日本での歴史はまだ浅く、日本で厚生労働省の承認がおりたのが2010年。それから徐々に、日本でも年間手術数が増えているそうです。気になる、レーシック手術との一番の違いは、「角膜を削らない」ことと、「レンズを入れる」ことです。
 
――コンタクトレンズといえば、レンズを眼球の上に載せるわけですが、ICL治療の場合はレンズを目の中に入れるんですよね。どうやって入れるのでしょう?
 
1.点眼麻酔をして角膜を3mm切開します。

1.点眼麻酔をして角膜を3mm切開します。

根木氏 「まず、点眼麻酔をして眼の表面にある角膜のフチを3ミリほど切開します。切開した小さな部分から、折り畳んだ状態の柔らかいレンズを注射器のようなインジェクターで眼の中に挿入します。そして虹彩(黒目)とその下にある水晶体の間にレンズを広げます」
 

 
2.切開した部分からレンズを眼の中に挿入します。

2.切開した部分からレンズを眼の中に挿入します。

「レンズは、コラーゲンを含む素材で作られています。眼の中で異物として認識されにくい素材でできています。目に何かを着けているような違和感も全くありません。外見からレンズが見えることもないんです」
 

 
3.虹彩(黒目)と水晶体の間にレンズを置きます。

3.虹彩(黒目)と水晶体の間にレンズを置きます。

手術の所要時間は両眼で30~40分程度と、短時間だそうです!忙しい私たちには助かりますね。なお、ICL手術を行うには専門ライセンスが必要なため、技術のともなった医師のみが施術します。また、万が一の場合にはレンズを取り出すことで元に戻すことができるのだそうです。
 
 

ICL治療のメリットは?

ICL治療は、レーシックでは対応外の、薄い角膜や強度の近視、乱視にも対応可能とされています。また、ドライアイの方も対応可能です。原則として21歳から45歳までで、緑内障や糖尿病網膜症、白内障など他の眼疾患のない方が適応となります。これまでレーシック治療では不可能とされてきた人々にも「もう一つの選択肢」という希望を与えてくれそうです。
 
根木氏 「そうなんです。『レーシック手術は難しい』『合併症が少し怖い』としてあきらめていた方々にお勧めできると考えています。レーシックでは、一度削ってしまうと、角膜を元に戻すことはできません。一方、ICL治療は体の中にレンズをプラスするという原理。万が一手術後に望んだ通りの見え方にならなかった場合でも、入れた物なら取り出して『元に戻せる』という選択肢があります」
 
根木郁夫さん

撮影:多田裕美子

レーシック手術は、角膜の一部を削ってカーブの形状を調整し、網膜上の1点で像が焦点を結ぶように矯正する手術。術後の痛みが少なく視力回復が早いのが特徴ですが、一方で角膜を削ることによるリスクもあります。例えば、涙液の分泌が安定せずドライアイや、目がしみやすくなる知覚過敏の原因になったり、角膜の中央部しか焦点を調整しないので鮮明度に欠けたり夜間にぼやけたりまぶしく見えてしまう可能性も無いとは言えません。万が一削りすぎて過矯正になった場合は元に戻すことも出来ません。
 
この点、ICL治療 は角膜を削らず手術の傷もわずか3ミリと小さいため、ドライアイや知覚過敏の心配がないのも特長の1つ。また、万が一の合併症で白内障になっても、治療方法は確立されています。術後の再近視化リスクも少なく、術後数年後の視力も安定しているケースが多いそう。
 
コンタクトレンズの管理から解放されるし、眼のケアに特別な気遣いをしなくてもよくなるのは助かります。「ネイルをした指ではコンタクト装着が大変」という女性も、ラクになりそうですね。
 
根木氏 「私は男性なのであまり実感はないのですが、特に女性の場合はお化粧やアイメイクが自由にできるため大変便利で快適なようです。実際にICLの手術をした女性は、まつげエクステなども始めたとか。ゴロゴロもしないし、日々のお手入れも不要。コンタクトレンズが曇るというような困りごともなくなります。そのくらい日常生活の中で自然に感じられるということなのだと思います」
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