介護/食事・口腔ケア

嚥下調整食2以下の介護食の作り方…ペースト状に不向きな食べ物など

【管理栄養士が解説】介護食でも、1日3回の食事を彩り豊かに楽しく食べてほしいですが、介護期間が長くなるほど、毎食毎に自宅で用意することは困難です。しかし、「どうしてもお家の味を!」というお料理もあるはずです。病院や介護施設で取り入れられている、ペースト状につぶしたお食事を作る方法をお話します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

介護食にペースト状以外の選択肢も

介護食をペースト状に

日々の食事の用意は重労働です。それでも、食事は生活の中の楽しみのひとつです。「好きなもの」を食べさせてあげたいと思うのは、介護に携わる者みんなの願いではないでしょうか


介護食は「学会分類2013」の嚥下調整食4・3のレベルであれば、他の家族の食事から取り分けて柔らかくするだけで、ご自宅で用意することも十分可能だと思います。それ以上にレベルが悪化してしまった場合には、おかずを小さく刻んだり、ペースト状にすることが必要になります。そのため、自宅でそのすべてを作ることは現実的ではありません。というのも、介護する側も年齢が高くなっていることが多く、介護する側が介護疲れで倒れてしまうことも懸念されるからです。

さらに、病院や介護施設では最低でも10人分くらいを一気に作るため問題ありませんが、自宅で1人分だけをフードプロセッサーにかけようとしても、いくら小さい機械を使っても刃が回らず、上手にペースト状になりません。2~3人分をフードプロセッサーにかけると、ペースト食は作り置きができないので、食材が無駄になってしまいます(家族の方がペースト状のものを食べるというのも考えにくいですし……)。

そこで、私は病院でご家族の方に、学会分類2013の「嚥下調整食2-2」よりも嚥下レベルが悪化してしまった場合は市販品をメインとし、ご本人がお元気だった頃に好きだったメニューだけ、小さくつぶして差し上げては?とご提案させていただいています。

市販品を使う場合、介護食が手に入るのであれば、介護食専用のものがいいと思います。それでも、手に入りにくいときや急に必要になった場合には、離乳食を購入し、代用してもよいとお伝えしています。現在の嚥下レベルが離乳食のどの時期と同じ程度になるかは、「介護食のレベルを表す5つの指標と使い方」の表に示してありますので、チェックしてみてください。

ただし、離乳食を使う場合には味付けの工夫が必要なことがあります。離乳食は赤ちゃんが味や食感を覚えるための食事であるのに対して、介護食はすでに食経験のある人が食べる食事であるため、味の好みが確立しているからです。

また、赤ちゃんは咀嚼・嚥下機能に問題がないため、さらさらした飲み物や煮汁を飲むことができますが、咀嚼・嚥下機能が衰えている場合には、それが難しいこともあります。さらさらした飲み物や煮汁が飲み込みづらい場合は、その人に合った「とろみ」をつける必要があります。「“ごっくん”できない高齢者…そのカギは『とろみ』」でご紹介した方法で、とろみをつけてください。
 

好きな家庭の味こそ、ペースト状に

上記のように、「介護食を作ることは大変なので、市販品を上手に使って、介護する側が倒れてしまわないように」と指導しています。

しかし、「お元気だった頃に、自宅で作った肉じゃがが大好きだった、とか、自宅で作ったお芋の煮物が大好きだった」というメニューが誰にでも1つや2つあると思うので、そのメニューのときだけは、介護食を自宅で手間をかけて作ってみては?とお話しています。

そこで、次に病院や介護施設で取り入れられている、ペースト状の食事の作り方を簡単にお話します。
 

介護食の基本的な作り方を理解しよう

まず、大まかな作り方を頭に入れましょう。介護食の作り方を一言で説明するならば、「料理をやわらかく作ったら、それを包丁でたたいて小さくするか、フードプロセッサーに入れて希望の大きさになるまで回す」、これだけです。

病院では10人分以上の食事を一気に作っていますので、軽く刻む程度でも専用のフードプロセッサーで刻んでいるところも多いです。しかし、フードプロセッサーの手入れの手間を考えると、家庭で1人分を作るのであれば、包丁でみじん切りのようにたたくほうが効率的かもしれません。欲を言えば、包丁で刻んだあと、出汁の効いた“とろみあん”をかけて差し上げると、食べやすくなります。

問題は、ペースト状の料理を作りたいときです。いくら包丁でたたいてもペースト状にはなりません。そのため「ペースト食は、特別な料理で作る必要があるのですか?」と聞かれることもありますが、特に専用の料理を作っているわけではありません。ただ、使いにくい食材はあります。
 

介護食に不向きな食べ物とその理由

以下に使いづらい食材の例を挙げます。
 
食材一覧

お年寄りは身体のさまざまな機能が変化します。そのため、食材によっては食べづらいものが出てきます。食べづらい食材は最初から使用しないか、調理する際には細心の注意を払います


これらの食材は、包丁でたたいても食べやすくはなりません。また、フードプロセッサーに入れて粉砕しようとしても、なかなかうまく砕くことができません。他にも、機器によってはうまく機械が回らないこともあると思います。機械がうまく回らない食材は、なめらかなペースト状になりません。食べづらい食感になってしまいますので、可能であれば避けてください。

調理の際は繊維質を細かく切るなど、やわらかくすることに気をつけていただければ、あとは普通の料理とまったく同じで大丈夫です。

 

料理をフードプロセッサーでつぶす

おいしく出来上がったお料理は包丁でたたくか、小さくちぎってフードプロセッサーに入れて回します。

フードプロセッサーは固形物だけでなく、煮汁や出汁等の液体を入れないとうまく機械が回りません。固形物だけで回した場合、その時1回は回っても、何度も使っている間に機械が故障する原因となります。

味を考えると、煮汁だけでフードプロセッサーが回ればそれが一番です。ところが実際にやってみると、煮汁だけでは液量が不足して機械が回らないことがほとんど。そのため、煮汁以外の水分を追加して回すことになります。その水分は白湯(一度沸騰した水を冷ましたもの。湯冷まし)でもいいですが、味が薄くなってしまいます。そのため、出汁を入れて回すと味がぼけにくくなります。

均一につぶれたら、味を整えて出来上がり……といきたいところですが、フードプロセッサーを回す際に水分を追加していますので、どうしてもできあがりが「さらさらした状態」になってしまいます。このままでは「“ごっくん”できない高齢者…そのカギは『とろみ』」でお話したとおり、ペースト食を希望する方には飲み込みづらいことがほとんどです。

そこで、病院や介護施設で追加しているのは「とろみ剤」や「半固形化・固形化補助剤」です。これらを適宜追加して、希望の固さになるように調節するのです。とろみ剤を使う場合は、塩分や糖分を多く含んだものはゆっくりととろみがついてきますので、フードプロセッサーが回っている途中で「最高の状態」に調整するのではなく、フードプロセッサーで回した後10~15分後にどのような状態になっているかを想像しながらとろみ剤の量を調節してください。

レシピの詳細は、「毎日すこやか介護食レシピ集(外部サイト)」が便利だと思います。

さらにもう1点、注意点としては、ペースト食を作る際は少量ではフードプロセッサーが回らないので、一度に大量にできてしまいますが「朝のうちに作ったものを3食に分けて提供しよう」というような、いわゆる作り置きはしないようにしてください。フードプロセッサーでつぶした料理は酸素に触れている部分が多いので、傷みやすいのです。

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