注文住宅/家づくり物語 実例を通して

トラブル時のより所となる契約書、その確認ポイント

両親宅の新築を連載化したコラムシリーズの第6回目。今回は注文住宅における請負契約締結時の注意点を、実際に締結した契約書をもとに紹介します。工事依頼者側に不利な項目はないか?――トラブルが発生した際には“より所”となるのが契約書です。事前にしっかりと目を通しておくことが欠かせません。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


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ここ最近、不穏な空気が立ち込める住宅市場(イメージ写真)

ここ最近、住宅市場に不穏な空気が立ち込めている印象をぬぐい去れません。

2014年6月初旬、住友不動産が2003年に横浜市で分譲したマンション「パークスクエア三ツ沢公園」で、建物を支える杭(くい)が支持層(地中にある硬い丈夫な地盤)に到達していない事態が判明しました。集合住宅のような重量が極めて重い建築物では軟弱地盤によって建物が沈下しないよう、支持層まで必ず杭を打つことが法律で義務付けられています。にもかかわらず、このマンションでは支持層に達していない杭があることが判明しました。そこで、売り主は安全面の不安から居住者に仮住まいの提供を開始し、さらに補修工事で対応できない場合は建て替えも視野に入れ、希望者には買い取り補償も行うそうです。

また、2月には三菱地所レジデンスが東京都港区で販売していた「グラン南青山高樹町」でもトラブルが発生しました。配管やダクトを配置するためのスリーブ(コンクリート壁や梁を貫通させて通す穴)の数が大幅に不足していたり、位置が間違っていたのです。そこで、売り主は是正工事に少なくとも1年はかかるとして、買い主(既契約者)に売買契約を解除するよう要請しました。売り主側から「契約を白紙にしてほしい」と要請するのは極めて異例なことです。

さらに思い返せば2009年、木造注文住宅の設計施工・販売を行なう「富士ハウス」と木造注文住宅の建築販売業者「アーバンエステート」が、そろって同時期に自己破産しました。リーマンショックによる金融危機で資金繰りが苦しいなか、住宅不況が経営の継続を困難にさせました。アーバンエステートは当初、東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、法的支援による再建の道を目指しましたが、裁判所が申請を却下したことで自己破産(会社の清算)せざるを得なくなりました。

前払い金の多額請求が横行  「アーバンエステート」と「富士ハウス」 

なぜ、こうした話を持ち出したかというと、いまだ注文住宅を手がけた一部の業者による愚行が忘れられないからです。両親宅の新築工事に当たり、同じ目に遭わないよう自ら注意しなければなりません。と同時に、読者の皆さんにも契約内容を確認する重要性を再認識してもらいたいのです。

2009年1月、前述したアーバンエステートの元会長らが工事代金を詐取した容疑で逮捕されました。報道によると、「工事代金を5%割り引く代わりに、前金を多めに支払ってほしい」と顧客を集めていたといいます。ある施主は総工費2000万円の5%を割り引くと持ちかけられ、契約時に7割を前払いした途端に倒産に遭ったそうです。東京地裁が民事再生法の適用を却下したのも、こうした強い悪意性を重んじたからでしょう。同じく、富士ハウスでも次第に前払い請求がエスカレートし、着工時までに工事代金の7割を支払うよう求めたといいます。

アーバンエステートも富士ハウスも、業績低迷により資金繰りが悪化していました。そのため、苦肉の策として前払い金の多額請求に手を染めたわけです。いうまでもなく資金の枯渇は企業生命の死滅に直結します。“延命”のため自己の利益を最優先すべく、蛮行を繰り返していたのです。

さかのぼれば、2005年に発覚した分譲マンションやホテルの耐震強度偽装事件、いわゆる姉歯ショックでは耐震強度不足により分譲マンション11棟が建て替えを余儀なくされました。その中の1棟、「グランドステージ溝の口」(総戸数24戸)では、建て替えるのに1世帯あたり2000~2700万円の追加負担金が必要になりました。これらの追加金は既存の住宅ローンに上乗せされ、“Wローン”として被害者の生活にのしかかりました。

こうした事実を知っていただけに、両親宅の新築工事では契約に対して慎重にならざるを得ませんでした。

では一体、どのような点に気をつけて契約を締結すればいいのか、次ページでは契約に当たって確認したポイントを具体的に紹介します。


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