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夜空の星が1つ残らず盗まれた!『星どろぼう』

「星を盗むなんて無理!」という子どもたちの声が聞こえてきそうですが、その男はなんと夜空の星を全部盗んでしまいました。星泥棒にまつわる優しいファンタジーが、「星に願いを」という言葉の意味をそっと教えてくれます。

執筆者:大橋 悦子

お星さまをめぐるロマンティック・ファンタジー『星どろぼう』

宇宙には天の川の星よりもずっとたくさんの星があるそうです。夜空に輝く星々はどれもため息が出るほど美しく、幼い子が「星をとってほしい」と駄々をこねる気持ちもわかりますね。ところが、あろうことかその星々を1つ残らず盗んでしまった不届き者がいるのです。そんな星泥棒と夜空に星を取り戻したい村人たちのてんやわんやを描いたロマンティックなファンタジーをご紹介します。

盗まれた星たちは無事に夜空へ帰れるのでしょうか?

『星どろぼう』の表紙画像

西洋のおとぎ話から抜け出したようなこの男こそ、星を盗んだ張本人です

山のてっぺんに住むその人は、空の星があまりに美しいので自分だけの星を1つ欲しいと思っていました。ある晩、村人たちが寝静まったあとに星を盗みに出かけた男は、1つだけでは物足りず、もう1つまたもう1つと次々に星に手を伸ばし、とうとう空の星を全て盗みとってしまいました。

翌日の夜、空を見上げた村人たちは星がなくなっていることに気づいて大騒ぎ。残された月まで盗まれては大変と泥棒にワナを仕掛けました。月の裏側に隠れた若者が星泥棒を捕まえて星を取り戻したまではよかったのですが、それを夜空に戻す方法がわからず、みな頭を抱えるばかりです。

さてこの男、泥棒とはいうものの表紙絵で見る通りあどけない顔で、「綺麗なお星さまが1つ欲しい」なんて子どもみたいな動機で盗みを働く……なんとなく憎めないのです。それは、絵を手がけたアーノルド・ローベルの画力によるところが大きいのかもしれません。

ローベルが描く絵には温かさがあって、泥棒だけでなく星々もまた魅力的。1つとして同じもののない星は、砂糖菓子のような可愛らしさと宝石のような輝きを合わせ持ち本当に綺麗です。夜に繰り広げられるお話は黒を基調とした画面ですが、不思議なことに暗さが少しもなく星の美しさばかりが際立ってくるのです。

美しい星空のイメージ画像

美しい星の1つを手にとって願いを込めて空に返すことができたら……

お話を戻しましょう。やがて、ひょんなことから星を空に戻す方法がわかりました。それは、星に願いをかけること。何とロマンティックな方法でしょう! 誰かが1つ願い事をするたびに、星も1つひゅうっと空に戻っていくのでした。村人がみんな星に願いをかけたので、星は全て空へ戻ることができました。

でも星の数が足りなくて、星泥棒だけは願いをかけることができません。そのことを「残念だったね」という心優しい少年に、星泥棒がそっと告げた彼の心からの願いがとても良いのです。さてその願いとは? そして彼の願いはかなったのでしょうか?

読んでいる私たちの気持ちまでふわっと温かくなるようなその答えは、ぜひ絵本でご確認ください。その答えを聞けば、この泥棒が2度と盗みを働くことはないだろうと思えて、じわっとひろがる幸せな読後感を心ゆくまで感じることができるでしょう。


【書籍DATA】
アンドレア・ディノト:文 アーノルド・ローベル:絵 やぎた よしこ:訳
価格:1512円
出版社:ほるぷ出版
推奨年齢:4歳くらいから
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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