不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

埋蔵文化財包蔵地での住宅建築

埋蔵文化財包蔵地の上に建てられた住宅は意外と多く、土地や中古一戸建てを買うときには一定の注意が必要です。埋蔵文化財包蔵地では、建築の際にどのような手続きが求められるのか知っておきましょう。(2018年改訂版、初出:2014年6月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.043】

発掘調査をする人々

埋蔵文化財包蔵地では、住宅建築の前に発掘調査が必要となる場合もある


埋蔵文化財包蔵地とは、住居跡などの「遺構」、土器や石器などの「遺物」といった文化財が埋もれている土地(遺跡)のことを指します。都市部では古くから人が住んでいた地域が多く、文化財が出土することも珍しくないでしょう。

文化庁の資料によれば、埋蔵文化財の存在が分かっている土地(周知の埋蔵文化財包蔵地)は全国で約46万か所にのぼるようです。そのため、埋蔵文化財の上に建てられている住宅も多く、それが売買対象になることも少なくありません。

周知の埋蔵文化財包蔵地内で建築工事などをする際には、規模の大小にかかわらず工事着手の60日前までに教育委員会へ届け出をしなければならず、その後に協議や現地調査、試掘調査が実施されることになります。

また、自治体によっては周知の埋蔵文化財包蔵地に近接する土地(50メートル以内など)でも届け出が必要です。

事前の調査によって、遺跡が残っていないこと、あるいは工事が埋蔵文化財に影響しないことが分かればとくに問題はありません。しかし、建築工事によって現存する遺跡が壊されるような場合はなかなか厄介です。

計画の変更により遺跡部分の現状保存を図るなどといった協議に応じるか、もしくは工事に先行して本格的な「発掘調査」を実施し遺跡の記録を残さなければなりません。

発掘調査にかかる費用は原則として事業者負担となりますが、個人の住宅建築(非営利目的)の場合には国から補助金を受けることもできます。

なお、木造住宅など基礎が浅い建物の場合には、土盛りによって遺跡と基礎との間に「保護層」をつくることで、発掘調査を避けることのできるケースもあります。

いずれにしても、埋蔵文化財包蔵地内の土地に住宅を建築しようとするときには、他の土地よりも数か月は工事着手が遅くなる可能性を考えなければなりません。

購入しようとする土地あるいは中古住宅の敷地が「周知の埋蔵文化財包蔵地」に該当するかどうかは、事前に仲介業者が調査のうえで説明してくれるはずです。

ところが、通常の物件調査での窓口となる役所の建築・土木の担当課ではなく、埋蔵文化財は教育委員会の管轄となるため、土地の取引に不慣れな仲介業者がこれを失念する事例も少なからずあるようです。

自治体によって異なりますが、web上で情報を公開している場合や、地図に印をつけてFAXを送れば電話で回答してくれる場合、公立図書館で資料の閲覧ができる場合などもありますから、気になるときは自分でも確かめてみるとよいでしょう。

ただし、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当しない場合でも安心はできません。これまで知られていなかった遺跡が出てくることや、地中から人骨が発見される事例もあります。

建築工事に伴い新たに埋蔵文化財が見つかったときには、教育委員会へ「遺跡の発見に関する届出」をして所定の手続きが済むまで、工事の中断が避けられません。

人骨が出た場合にはまず警察署へ届け出をしますが、事件性がないと判断されれば教育委員会が調査をすることになります。

以前に比べて、住宅建築の際に深く地面を掘り返すことが多くなったため、江戸時代あるいはそれ以前の墓地跡が最近になって発見される事例も増えているようです。

古い分譲地などでは、当時に適切な調査がされていないケースもあり、「これまで家が建っていたから大丈夫」とはいえないのが難しいところです。


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