ミスマッチがベストマッチを生んだ?本場同士のぶつかり合い!
キャノンボール・アダレイ「キャノンボールズ・ボサ・ノヴァ」
キャノンボールズ・ボサノヴァ
このCDは、ジャズアルト界の横綱といって良い、キャノンボール・アダレイが、ブラジルに乗り込んで、さしずめブラジル場所を開催したといった趣のある、楽しいアルバムです。
一曲目、「クラウズ」。いつもは、はじけ気味のキャノンボールがこの曲は、神妙にテーマを吹いているのが少し可笑しいところです。知らない土地に行って、襟を正した態度が功を奏したのか、良い具合に味わいが出て、深みのある演奏になっています。それには、このCDで四曲提供しているギタリストのドゥルヴァル・フェレイラの曲の良さも大いに関係しています。「クラウズ」(雲)と名付けられたこの曲。おだやかで朗々としたテーマのバックで、どんどんコードが変わっていくというボサノヴァの特徴が、よく出た佳曲です。
正調のボサリズムに乗って、キャノンボールのソロは、いつものファンキーさを半分ほどに押さえ、さすがの構成力をみせ圧巻です。
その上、このジャズとボサノヴァの本場同士のぶつかりあいには、ブラジル代表にも大物がいます。この吹き込みの四年後には、「マシュ・ケ・ナダ」の世界的ヒットを飛ばすセルジオ・メンデスです。セルジオのサポートにより、この吹き込みのサウンドがより上質なものになったのは間違いがないところ。
セルジオ率いるボサ・リオ・セクステット(六人編成バンド)は、当時ブラジルにあって、ジャズ演奏を目指していたバンドです。それが、ここでは本格ボサノヴァの抑え目の伴奏に徹していて、とてもクール!
セルジオのピアノソロも快調。3:29のところでは、セロニアス・モンクの「ラウンド・ミッドナイト」のイントロをさりげなくクオーテーション(有名なメロディをアドリブソロで引用すること)。さすがのジャズピアノぶりです。
続く二曲目の「ミーニャ・サウダージ」も好演。全編にわたってとても楽しい、おススメの名盤です。
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十八歳でデビュー!「本物」とうたわれた天才の名曲
リー・モーガン 「コーンブレッド」より「セオラ」
Cornbread
この「セオラ」は、十八歳でセンセーショナルにレコーディングデビューし、「Indeed!」(まさに、本物!)とうたわれたトランペット奏者リー・モーガンの、ボサノヴァを取り入れた名曲です。題名の「セオラ」は、リーの女性の友人の名前からつけられました。
軽快なボサのリズムと、センスの良いひねりのきいた曲調で、不思議なひきつける魅力を持った曲と言えます。トランぺッターとしてだけではなく、作曲家としてもすでに名声があったリーの面目躍如といったところ。でも、実はこの曲にはもとになった曲がありました。リー・モーガンの生涯とその音楽について書かれたジェフリー・S・マクミランの「DelightfuLee」の中にその記載があります。ジャズ研究家のBertrand Uberallによって、この曲は古いアメリカのポピュラー・ソング、「イフ・サムワン・ハド・トールド・ミー」からメロディがとられているとあります。
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ちなみに、同じトランペット奏者のサド・ジョーンズの「ザ・マグニフィセント・サド・ジョーンズ」よりのこの「イフ・サムワン・ハド・トールド・ミー」を聴いてみましょう。
The Magnificent Thad Jones
それでも、「セオラ」が名曲なのはゆるぎがありません。モーガン流の味付けで、まったく魅力的なものに変わっているのが、聴き比べるとわかるはずです。
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学生時代にジャズ喫茶でバイトをしていたというジャズ好きで有名な、「北野武」(ビートたけし)氏。氏の選出したコンピレーションアルバム「たけしとブルーノート」にも「セオラ」は選出されています。通好みの選曲で有名な北野氏の琴線に触れる魅力があることは確かなようです。
たけしとブルーノート
次のページには、えっこれもボサノヴァ?と思ってしまう変わり種のジャズボサをご紹介します。
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