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消費増税だけではない!? インフレの家計への影響は?

2014年4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比で3.2%上昇。安定的なインフレは、市場に資金がまわり景気回復にもつながり、その結果、企業・家計にもお金が回り、家計は潤います。けれども、何も対策を取らないでいると、家計にトリプルダメージを与える恐れがあります。今回は、インフレの家計への影響を考えてみました。

平野 泰嗣

執筆者:平野 泰嗣

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インフレは、トリプルダメージ!家計への影響とは

忍び寄るインフレによる家計への影響……

忍び寄るインフレによる家計への影響……

2014年4月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比で3.2%上昇。安定的なインフレは、市場に資金がまわり景気回復にもつながり、その結果、企業・家計にもお金が回り、家計は潤います。けれども、何も対策を取らないでいると、家計にトリプルダメージを与える恐れがあります。今回は、インフレの家計への影響を考えてみました。

家計の負担増、消費税の次はインフレ

4月の消費増税から2か月が経過し、消費増税に関する話題やニュースも少し落ち着いてきた感じがします。皆さんも増税後の値段に慣れてきて、節約意識も少し薄れてきた頃ではないでしょうか?(参考コラム:「消費増税後の支出慣れに要注意!」)来年10月には、消費税はさらに10%に引き上げられることが予定されていて、そちらの動向も気になります。けれども、もう1点家計の負担増につながる事象があります。それは、インフレ(物価上昇)です。

5月30日総務省発表の平成26年4月消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月対比3.2%上昇しました。消費増税による物価上昇の影響もありますが、平成26年1月から3月にかけても1%台前半で推移しています。現在実施されているアベノミクスは、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」を柱とした、景気回復とデフレ脱却を主な目的とした経済政策です。

その第1の矢「金融政策」ではインフレ目標を2%に定め、日銀による金融機関からの長期国債の買入、REITやETF購入を継続的に行っています。その効果が表れ、デフレからの脱却から安定的なインフレへの第一歩を踏み出したところといえるかもしれません。


インフレの家計への影響は?

インフレの家計への影響を「支出」、「収入」、「資産」の3つの視点で考えてみましょう。

■インフレはジワリと家計負担が増加する
インフレとは、モノの値段が上がりお金の価値が下がり続ける状態のことを意味します。100円のコンビニコーヒーの価格を例に考えると(消費税は考慮せず)、毎年2%で物価が上昇したと仮定すると、10年後には、コンビニコーヒーの価格は約122円になります。現在の価格100円を基準にすると、22%の負担増加となるのです。

インフレも消費増税も、家計の支出が増えるという点では共通しています。インフレと消費増税とで異なるのは、消費増税の場合は、上がる率と時期は分かっているので、家計の支出増加が目に見えてわかりやすいのに対し、インフレの場合は、少しずつ、ジワリと家計に影響を及ぼし、なかなか気づきにくいという点です。目標2%の物価上昇を実現できるかどうかは確定したものではないけれども、国の方向性として、安定的なインフレを目指しているという点は、将来の家計を考える上で留意しなければならないでしょう。

■インフレで支出も目減りする?
●インフレで給料も目減り?
インフレでモノの値段が上がっても、収入が増えれば、インフレによる家計の負担増加を吸収することができます。一般的には安定的なインフレと景気回復の下では、企業業績が良くなり、賃金が上昇します。今回のアベノミクスでも、企業の利益を従業員に還元(給料アップ!)させ、消費に回すお金を増やすことで、安定的なインフレと景気回復につなげることを期待しています。賃金は、毎月の給料とボーナスなどの一時金にわかれていますが、特に毎月の給料に注目してみます。一般的な賃金アップは、1年間の勤務実績によって給料が上がる定期昇給部分と、賃金テーブルの改定をともなうベースアップにわかれます。世間に出る「賃上げ率」は、通常、定期昇給とベースアップが含まれています。

経団連による「2013年1~6月実施分の昇給、ベースアップ実施状況調査結果」によると、賃上げ額5784円、賃上げ率1.9%となっています。このうち、ベースアップを実施した企業は9.5%なので、賃上げ率の中に含まれるベースアップの割合は、僅かであると考えられます。定期昇給は、経験年数によって個人の能力が向上したことに対する対価で、インフレとは無関係です。一方、ベースアップは、インフレだけではなく、企業の生産性向上なども加味して決められるものですが、ベースアップ部分がなければ、インフレ分だけ、実質的な給料は目減りしていることになります。

収入は、毎月の給料だけではなく、ボーナスを含めた年収で考えるものですが、2014年以降の賃上げ、とりわけ、ベースアップに注目しましょう。

●公的年金は、マクロ経済スライドで目減りする
老後の収入の柱となる年金も、インフレの影響を受けます。従来の年金は、毎年度、物価や賃金の変動に応じて自動改定する仕組みとなっています。物価が1%上昇すれば、基本的に年金額も1%上昇することで、年金生活者は物価変動に影響を受けない安心した老後を過ごせるのです。ところが、平成16年の年金制度改正において、将来の現役世代の過重な負担を回避するという観点から、「現役人口の減少(現役全体でみた保険料負担力の低下)」と「平均余命の伸び(受給者全体でみた給付費の増大)」というマクロでみた給付と負担の変動に応じて、その負担の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組みを導入しました。これが、「マクロ経済スライド」です。

スライド調整率は、平成16年改正当時、調整期間(約20年)の平均として0.9%という値が示されています。つまり、物価が2%上昇した場合、年金は2%から0.9%を差し引いた1.1%だけ上昇するというもので、0.9%分だけ実質的に目減りしていることになります。

>>資産と負債(借金)は、どうなる?

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