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ASKAのCD・DVDの回収は正しい判断か?

ミュージシャン・チャゲ&飛鳥のASKA容疑者が覚醒剤所持の疑いで逮捕された。ミュージシャンが禁止薬物に手を出してしまう事件はこれまでにも起きているが、そのたびに行われるのが作品の回収と出荷停止だ。今回の事件もすでにCDやDVD等の回収が行われている。なぜいつも当たり前のように回収や出荷停止が行われるのか。その判断は正しいのだろうか。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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ASKAのCD・DVD回収は正しい判断か?

ASKAのCD・DVD回収は正しい判断か?

ミュージシャン・チャゲ&飛鳥のASKA容疑者が覚醒剤所持の疑いで逮捕された。ミュージシャンが禁止薬物に手を出してしまう事件はこれまでにも起きているが、そのたびに行われるのが作品の回収と出荷停止だ。今回の事件もすでにCDやDVD等の回収が行われている。

なぜいつも当たり前のように回収や出荷停止が行われるのか。果たしてその判断は正しいのだろうか。

なぜ音楽作品だけなのか

一つ目の疑問はなぜ音楽作品ばかりが回収や出荷停止になるのかという点だ。
本と比較するとわかりやすい。の場合も、罪を犯した人の作品が回収されることが全くゼロというわけではないが、たいていその逆で、罪を犯した人の書いた本が出版されベストセラーとなることさえある
(音楽関係者と作家の間の)犯した罪の重さに極端な差があるとも思えず、やっぱり音楽作品ばかりが回収される理由がみつからない。

かつて起きた同様の事件

1990年代終わりに似たような事件があった。人気ミュージシャンのM・Nさんが覚醒剤使用で逮捕され、彼の作品が全面的に回収されたのだ。

ちょうどその頃、ぼくは某AVメーカーでプランナーをしており、新技術の発表会でプレゼンを行っていた。発表した新技術は音楽を用いた商品で、そのサンプル曲としてぼくはM・Nさんの曲を使用していた。なぜなら商品の特徴をアピールするのにその曲はうってつけであったし、M・Nさんはそのメーカー傘下にあるレコード会社の所属ミュージシャンだったからだ。

ところが発表をはじめると、上役から「犯罪者の曲を使うとは何事か」とストップがかかった。上役の命令は重いが、ぼくは自分の判断で曲を変えず、プレゼンを続けた。

見学者からは一言も批判は出なかった
なぜなら「いい曲」で商品アイデアに合っていたからである。

曲は作者の人格とは別の存在

これは音楽という芸術作品が、作者の人格からは切り離された固有の魅力と価値を持つ存在ということを裏付ける出来事だった。

たとえばクラシック音楽を聴いて感動したとしても、それは楽曲または演奏に感動したのであり、けっして作曲家の背景や人生に感動しているわけではない。
しかもクラシック音楽の作曲家について、その人格を知っている人など、よほどの専門家でないかぎりいないだろうし、中には作曲家の名前さえ知らずに聴いている人だっているだろう。
それでもなぜ感動するかといえば、曲がいいからである。作品の価値や魅力は、作者の人格とはあまり関係ないのである。

そうした点を考えると、作者であるミュージシャンが罪を犯したからといって作品を回収してしまうのは、音楽という芸術のあり方から見ても適した対処方法ではないように思われる。

陥りがちな事なかれ主義

販売元は民間企業だから「売る自由」と同時に「売らない自由」があると言われればそれまでだ。しかしその会社の「売らない自由」の先には何万人ものファンの「買う自由」がある。一つの会社の売らない自由により、多くのファンの買う自由が奪われることになる。同じ一つの自由ではあっても、その力の間にはあまりに大きな差がある。
しかも、司法当局から販売禁止や回収の命令が出されているわけではない。販売元による自主的行為なのである。

もし販売を継続すれば、何らかの批判が販売元に向けられる可能性はゼロではないだろう。しかし臭いものに蓋をするかのごとく、批判の材料を形式的に排除してしまうのは、一種の事なかれ主義と似ている。

販売元には
「作品を守る自由」があることに気づいてほしい

販売元がそれまで販売していたのは、その楽曲が「いい作品」だったからだ。
先ほど、販売元には「売る自由」と「売らない自由」があると言ったが、それと同時に「作品を守る自由」もあるはずだ。

それは罪を犯した人間をかばうということとは全く意味が違う。

多少の批判はあったとしても、作品はあくまで作品として、その固有の価値を受け入れる度量が、会社にも社会にもあってほしいとぼくは思う。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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