骨・筋肉・関節の病気/骨折(疲労骨折・剥離骨折・圧迫骨折)

骨盤骨折の症状・診断・治療

骨盤骨折は転落などが原因で発生する骨折です。症状は患部の疼痛、腫脹、歩行不可能などです。診断は単純X線、CTが必要となります。治療は、まずは全身状態の安定化です。動脈造影が必要な場合があります。骨盤が安定しないときは、骨折の手術が必要となります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

骨盤骨折とは

骨盤は体幹を構成する骨で、腸骨、恥骨、坐骨が結合してできる寛骨(かんこつ)、仙骨、尾骨で構成されています。

骨盤

骨盤を構成する骨は、腸骨、坐骨、恥骨、仙骨、尾骨です。



転落、交通事故、スポーツなどの高エネルギー損傷に伴い骨盤骨折が発生します。特に転落が一番多い原因です。

骨盤骨折の年齢、性差

転落、交通事故などではあらゆる年齢で発生しますが、男性に多く発生します。比較的若年者に多く見られます。

骨盤骨折の症状

骨折した部位の腫脹、疼痛です。通常初期から激痛となることが多く、救急車で病院に搬送されることも多いです。歩行は通常は不可能です。骨折に伴い動脈損傷を合併すると血圧が低下し、ショック状態となります。

骨盤骨折の診断

■単純X線
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。
骨盤骨折

骨盤単純X線像。骨盤骨折が認められます。



■CT
単純X線で診断がつかない場合でもCTであれば診断可能です。
CT

骨盤単純3次元CT像。多数の骨折が認められます。




骨盤骨折の治療法

骨盤骨折の治療としては、まずは全身状態の安定をはかります。ショックを伴う出血に対しては手術でなく血管造影を施行します。

■動脈塞栓術
血管造影を行い出血部位が同定できた時は有効な治療法です。

動脈造影

骨盤動脈造影像。骨盤骨折に伴い内腸骨動脈の損傷が見られます。

通常内腸骨動脈から、造影後に損傷した動脈に塞栓を詰めて、止血を行います。止血がうまくいけば血圧が安定化します。

■骨折観血的整復固定術
骨盤に安定性がない場合手術で骨盤を安定化させます。安定性がある場合安静で骨治癒を期待します。

創外固定器

創外固定器による骨盤骨折の固定。





骨盤骨折の予後

骨盤骨折は多発外傷に伴うことが多く、時として、出血、ショックなどを合併する重篤な疾患です。予防することは、現実的には難しいので、発生したら速やかに救急車で専門病院に搬送し、適切な治療を迅速に開始することが必要です。治療が遅れた場合、生命に関わることもあります。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます