ソウル/ソウルの観光・世界遺産

宗廟/ソウルの世界遺産

朝鮮王朝の時代に優れた業績をおさめた王とその王妃たちを祀る宗廟。静かで厳かな美が溢れる世界遺産の一つです。昔から祖先祭祀を行ってきた場所で、現在もここで儀礼が行われています。ソウルで必ず見たい歴史スポットです!

松田 カノン

執筆者:松田 カノン

韓国ガイド

素朴な美しさを誇る世界遺産、宗廟

宗廟としては珍しい横長の造りの正殿。宗廟の中心として歴代王を祀るだけでなく、祭祀を行う場所でもあります(c)Korea Tourism Organization

宗廟としては珍しい横長の造りの正殿。宗廟の中心として歴代王を祀るだけでなく、祭祀を行う場所でもあります(c)Korea Tourism Organization

1995年12月にユネスコ世界文化遺産に登録された宗廟。宗廟とは、一族の先祖祭祀を行うための霊廟のことで、ソウル特別市の鍾路に位置しています。すぐ隣にある昌徳宮のような華やかさはありませんが、静かで厳かな美しさを誇る世界遺産です。荘厳な雰囲気に溢れているのは、やはり宗廟が氏族の先祖祭祀のための位牌を祀る場所だからでしょう。 では、宗廟がどんな場所か、詳しく見てみましょう! 

歴代王と王妃が眠る場所

宗廟という性格から、装飾があまりないシンプルな建築物が多い(c)Korea Tourism Organization

宗廟という性格から、装飾があまりないシンプルな建築物が多い(c)Korea Tourism Organization

宗廟は、朝鮮王朝時代の王と王妃の位牌を祀った祠堂です。 朝鮮王朝が漢陽(現在のソウル)に遷都した1394年12月に着工、翌年9月に完成しました。宗廟の中心となる正殿(チョンジョン)には、19人の王とその王妃たち計49の位牌が、永寧殿(ヨンニョンジョン)には、計34の位牌が安置されています。そして、功臣堂(ゴンシンダン)には歴代王に仕え、国の発展に力を注いだ功臣、計83の位牌が安置されています。

特に韓国の歴史に詳しくなくても、宗廟に祀られている王の中で私たちが聞き覚えのある王としては、ハングル(訓民正音)を制定した第4代国王の(セジョン)大王、そして「チャングムの誓い」に登場した第11代国王の中宗(チュンジョン)大王がいます。その他にも、韓国の歴史ドラマに登場する王の位牌がいくつかありますので、各王の功績や生き様、朝鮮王朝時代の長い歴史のドラマなどを思い巡らせながら観覧するのも良い方法ですね。

宗廟の見所と観覧のポイント

世界遺産に登録されている建築物なだけあり、各建物にはそれぞれ深い意味と歴史があります。隅から隅までじっくり観覧できればベストですが、短い日程での旅行では残念ながら時間も限られていますね……。そこで、最低限チェックしておきたい場所を絞ってご紹介します。

■正殿(チョンジョン)
横長に101メートルある正殿。最もたくさんの位牌が安置されています(c)Korea Tourism Organization

横長に101メートルある正殿。最もたくさんの位牌が安置されています(c)Korea Tourism Organization

宗廟の中心となる建築物で計49の位牌が安置されています。横に長く伸びた建築様式になっていますが、これは、朝鮮王朝が長く栄え、安置される王の数も増えたこと、また追尊された王や王妃の位牌を祀る空間を少しずつ増設していったため。

特に正殿は韓国の木造の単一建築物としては、最も長い建物だと言われています。このように横長の宗廟は、アジアでも韓国でだけで見られる特徴です。各部屋の扉には少し隙間がありますが、これは湿度調整のためと、祀られている王たちの魂が自由に出入りできるように、という意味があります。

 

■永寧殿(ヨンニョンジョン)
横長に101メートルある正殿。最もたくさんの位牌が安置されています(c)Korea Tourism Organization

横長に101メートルある正殿。最もたくさんの位牌が安置されています(c)Korea Tourism Organization

第2代王の定宗(チョンジョン)王と第4代王世宗大王の位牌を祀る際、正殿の間が不足していたため、別廟として新たに建てられ、現在は計34の位牌が安置されています。建物と中央部分にあたる4間は、左右の空間よりも高く建設し、階級の違いを表しています。

 

■功臣堂(ゴンシンダン)
国家の発展に寄与した優秀な功臣たちを祀るための建物で、計83の位牌が安置されています。この建物も最初は3間のみでしたが、最終的に16間ある建物となりました。

■三道(サムド)
ただの石畳ではなく、ここにも意味があるんですね。知っておくとこの道を歩くのも楽しくなります(c)Korea Tourism Organization

ただの石畳ではなく、ここにも意味があるんですね。知っておくとこの道を歩くのも楽しくなります(c)Korea Tourism Organization

宗廟の正門、外大門を抜けると前方へ続く石の道です。石がひきつめられた道が3本くっついて前方へ続いています。中央は神の道を意味する「神路(シンロ)」、右(東)側の道は王が通る道として、「御路(オロ)」、左(西)側の道は皇太子が通る道という意味で「世子路(セジャロ)」と名前がつけられています。神路は正殿へ、御路と世子路は、祭祀の際に王や皇太子が身を清めた場所である斎宮(ジェグン)まで続いています。神路のみ少し高めに作られており、中央の道がより格式の高い道であることを表しています。

 

干ばつの時も決して水が枯れなかったという祭井(c)Korea Tourism Organization

干ばつの時も決して水が枯れなかったという祭井(c)Korea Tourism Organization

他にも、王が身体を休めたという、宗廟で唯一華やかな装飾が施された望廟楼(マンミョル)や、祭礼を行う際に使用する水を汲んだという祭井(ジェジョン)、宗廟大祭で演奏する音楽や舞を練習したという正殿楽工庁(チョンジョンアクコンチョン)など、時間が許す限りじっくりと観覧してみてください。

また、宗廟では、毎年5月に先祖祭祀のための宗廟大祭という儀礼を行っています。観光客でも観覧できるので、日程が合えば是非ご覧ください。

>>>宗廟大祭の記事はこちら

 

<DATA>
宗廟/종묘
住所:ソウル特別市 鍾路区 薫井洞 1/서울특별시 종로구 훈정동 1
アクセス:地下鉄1号線「鍾路3街/チョンノサムガ/종로3가/Jongno3(sam)-ga」駅11番出口を出て徒歩約4分。
TEL:02-765-0195
観覧時間:日本語文化解説士とともに。9:00 9:40 10:40 11:40 12:40 13:40 14:40 15:40 16:40(3~9月のみ)※毎週土曜日のみ自由観覧可2~5月 9~10月観覧時間9:00~18:00(チケット発売は17:00まで)6~8月9:00~18:30(チケット発売は17:30まで)11~1月9:00~17:30(チケット発売は16:30まで)/宗廟大祭
入場料:満19歳以上1,000ウォン満7歳以上18歳以下500ウォン、満6歳以下無料※宗廟大祭の日は無料
4大宮(昌徳宮、景福宮、昌慶宮、徳寿宮)および宗廟統合観覧券10,000ウォン※有効期間購入日より1ヶ月間
休業日:火曜日(祝日となった場合のみ開館)

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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