相続・相続税/遺言書の書き方

遺言執行者とは?どんなときに必要?

遺言執行者という言葉は聞いたことがあるものの、その内容まで詳しく知っている人は少ないと思います。遺言執行者は「未成年者」と「破産者」以外であれば誰でもなれます。個人でも法人でも、一人でも複数でも可能です。遺言執行者とは何か、遺言執行者が必要なケース、メリットとデメリットなどを紹介します。

小野 修

執筆者:小野 修

相続・相続税ガイド

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遺言執行者の役割やメリット・デメリットを確認

亡くなった人が遺言書を遺していた場合、「遺言執行者」が記載されていることがあります。公正証書遺言であれば、ほとんどの遺言書に記載がありますが、自筆で作成された遺言書には記載がないことが多いです。これは「遺言執行者」を知らない人が多いこと、その必要性などが理解されていないことが原因ではないでしょうか。

遺言執行者の役割やメリット・デメリット

遺言執行者の役割やメリット・デメリット


相続人から「遺言に遺言執行者の記載があれば良かったのに」と聞くことも多々あります。今回は遺言執行者とは何か、遺言執行者が必要なケース、遺言執行者がいた方が良いケース、逆に遺言執行者がいないほうが良いケースなどを紹介します。

遺言の執行とは

遺言執行者について説明する前に、「遺言の執行」について説明しましょう。

遺言の執行とは「遺言の内容通りに実現すること」で、主には名義変更や金融資産の解約手続きです。特に、金融機関は特定の相続人が取得する場合であっても相続人全員の署名や実印を要求することが多く、相続人全員の協力のもと進めていくことが大半です。

遺言執行者とは

遺言執行者とは「遺言の内容通りに実現する者」を指し、相続人全員の代わりに遺言の内容を実現できる者とも言えます。遺言執行者のみで手続きができることも多く、相続人全員からの署名や実印が難しい場合などは、遺言の執行手続きがスムーズに進みます。

遺言執行者は遺言で指定されることが多いですが、遺言執行者の指定がない場合は家庭裁判所に選任をしてもらうことができます。

遺言執行者になれる人とは

遺言執行者は「未成年者」と「破産者」以外であれば誰でもなれます。個人でも法人でも、一人でも複数でも可能です。相続人や受遺者でも差し支えないとされていますが、利害関係者が遺言執行者になることで他の相続人ともめることもあります。信頼できる人や公平な第三者になってもらうことが望ましいと思います。

なお、指定を受けた遺言執行者は、就職を受諾することも拒否することもできます。

遺言執行者ができること

遺言執行者ができるのは以下の行為です。中には遺言執行者でなければできないこともあります。

◇子の認知
遺言執行者のみが手続きできます。市区町村に戸籍の届出をします。

◇相続人の廃除・廃除の取消
遺言執行者のみが手続きできます。家庭裁判所への申立てをします。

◇遺贈、遺産分割方法の指定、寄付行為
遺言執行者(いない場合は相続人全員)で手続きできます。相続人全員の協力が得られない場合は、遺言執行者が必要になります。

◇名義変更手続き、解約手続き
遺言執行者(いない場合は相続人全員)で手続きできます。ただし、不動産は取得者が登記申請するか、司法書士に委任して司法書士が登記申請することとなります。遺言執行者自身が登記申請や司法書士に委任をすることはできません。

遺言執行者の任務

遺言執行者は以下の通り、執行手続きを進めます。

  1. まずは相続人や受遺者に、自分が遺言執行者になった旨の通知をします。(遺言書のコピーを添付)
  2. 財産目録を作成し、相続人や受遺者に交付します。
  3. 遺贈があった場合、受遺者に遺贈を受けるか確認します。
  4. 登記手続の手配。登記申請はできないため、司法書士との窓口になります。
  5. 遺言通りに財産の引き渡し・名義変更・分配を行います。
  6. 相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をします。

遺言執行者のポイント・注意点

遺言執行者の指定で失敗しないためには、以下のようなポイントがあります。

■遺言執行者は複数指定すると安心
遺言執行者を1人だけ指定した場合、被相続人より先に亡くなってしまう可能性もありますので、複数を指定しておくことも検討が必要です。

反面、遺言執行者を複数指定した場合、例えば預金の解約などの際に、遺言執行者のうちの誰か1人で手続きをすることはできません。過半数の署名と実印が必要になるので注意してください。

■遺言執行者の行為を妨げる行為は禁止
遺言執行者は相続財産の管理、その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務があります。そのため、遺言執行者以外の相続人は執行を妨げる行為を禁止されおり、そういった行為を行ったとしても無効となります。

■遺贈をスムーズに行うにも遺言執行者は有効
遺贈は、相続人全員からの署名・実印があれば遺言執行者は必要ありません。しかし、相続人の数が多い場合や、財産を取得しない人から署名や実印をもらうことが難しく、遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所へ、受遺者を候補者として遺言執行者の選任を申し立てることが大半です。

■遺言執行者に対する報酬の決め方
遺言執行者に対する報酬は、遺言者が定めておくことも、相続人と執行者で決めることもできますし、家庭裁判所に決めてもらうこともできます。遺言執行者が専門家などでなければ無料でも問題はありません。弁護士や税理士といった専門家の場合は報酬が必要ですが、その金額はまちまちです。なお、信託銀行は基本報酬100万円からとしているところが多いようです。

遺言執行者がいたほうがよいことが大半ですが、相続人全員が協力できるのであれば、報酬を支払ってまでの必要はないかもしれません。反面、上記のような何らかの事情があれば、遺言作成の際に遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。

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