注文住宅/家づくり物語 実例を通して

築35年のわが家、自宅の新築が必要になった理由とは?

私事ですが母が要支援2の認定を受け、日常生活もままならない状態になったことで、両親が自宅を新築することになりました。そこで、僭越(せんえつ)ながら建設プロセスを公開し、同じような境遇の人に役立ててもらおうと本コラムで連載することとしました。すべて実体験に基づくリアル情報です。新築検討者には知識の向上として、また、そうてない人にも1つの読み物として楽しんでいただければ光栄です。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


国会議事堂

高齢社会と言われて久しいなか、政府の対応は後手といわざ得ない。

2014年4月から消費税率が5%から8%へと引き上げられました。将来世代への負担の先送りを軽減し、安定した社会保障制度へと立て直すためです。しかし、増税によって高齢者にも生活しやすい社会が本当にやって来るのでしょうか ――。

首都圏白書(平成24年度)によると、東京圏では都心部およびその周辺を中心に高齢者数の急激な増加が見込まれています。平成22年から同52年までの30年間の高齢者(75歳以上の後期高齢者)の伸び率をみると、全国平均が1.57なのに対し、東京都は1.73、千葉県は1.95、神奈川県は2.01、埼玉県は2.03と、今後は東京圏での高齢化が最も深刻化すると予想されています。

厚生労働省のまとめでは、すでに特別養護老人ホームに入所できない待機者数は52万4000人(平成25年10月時点)に達しており、需要増に供給が追いついていません。一定資産のある高齢者であれば、民間の福祉施設も選択可能ですが、特に都心部での入所となると敷居はさらに高くなります。安心で希望と誇りが持てる社会の実現には、まだまだ時間がかかりそうです。

高齢者ほど環境変化には対応しにくい 住み慣れた自宅での老後生活は最善の策 

実は、77歳になる私ガイドの母は現在、「要支援2」(下記参照)の認定を受けています(平成26年4月時点)。かろうじて自立歩行は可能なのですが、背骨がもろくなっているため姿勢は猫背になり、1人では外出もままならない状態です。そのため日常生活の行動範囲は狭くなり、寝食はもとより入浴やトイレ、さらに電話の受信、来客対応にいたるまで不便な日常生活を強いられています。

幸い、わが家は父親がいたって健康であるため、一時は老人ホームや高齢者向けの施設なども検討対象には挙がったと聞いていますが、最終的には施設への入所は選択肢から除外されました。些細な点でも住環境が変化することを嫌気した母にとって、最適な選択肢が在宅による腰痛療養だったからです。

≪参考≫ 要支援2とは?(平均的な状態・目安)
  • 身だしなみや居室の掃除などの身の回りの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。
  • 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。
  • 歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。
  • 排泄や食事は、ほとんど自分ひとりでできる。

福祉先進国のデンマークでは「ノーマライゼーション」の理念が浸透しています。ノーマライゼーションとは、高齢者であろうと障害者であろうと健常者と同等の権利や保障がなされなければならないという考え方です。地域や社会で高齢者や障害者を尊厳ある一人の人間として支援していこうという概念です。

こうした概念は90年代以降、わが国にも広がりを見せ始め、誰もが自分らしい生活を実現するという社会福祉の思想が具体的な施策となって展開されていきました。ノーマライゼーションの考え方の中には「施設から地域や自宅へ」といった発想が含まれており、施設頼みを脱し、在宅生活を安心して続けられる環境整備の促進も意図されています。

高齢者によっては、住み慣れた地域で暮らし続けたいと願う人も少なくありません。多くの高齢者が自宅で家族や親しい友人と、出来るだけ自立した生活を送りたいと望んでいます。生活の継続性を維持し、地域の中で今までのように暮らすことは極めて重要です。

その点、私の母も例外ではありませんでした。日常生活のストレスを感じさせない住宅に住み替えることで、母の苦痛低減を期待して高齢者仕様の住宅を新築する運びとなりました。

次ページでは、さらに詳しいわが家のいきさつをご紹介します。

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