年収200万円時代に考えるお金サバイバル術/エコノミスト熊野英生さんに聞く!家計サバイバルの方法

エコノミストに聞く!食える人になるための3つの方法

大企業の景気回復にともない、人手不足が起きています。雇用の状況とそこに潜む問題点はいったい何でしょうか。また、厳しい時代に食いっぱぐれずに生き残るための方法とは?

執筆者:All About 編集部

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人手不足なのに「仕事がない」? 

第一生命経済研究所undefined首席エコノミスト熊野英生さんに引き続きインタビューです

第一生命経済研究所 首席エコノミスト熊野英生さんに引き続きインタビューです

厳しい時代を軽やかに生き抜くためには、どんなスキルを身に付け、お金とどう付き合っていけばいいのでしょう。そのためのサバイバル術を専門家にレクチャーしてもらいます。第1回目は、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生さんに仕事のサバイバル方法についてインタビューしました!(第1回目の熊野さんが考える家計サバイバル方法はコチラです)


――大企業を中心に業績が改善していますが、雇用の状況はどうでしょうか?

熊野  企業の業績改善で労働力不足が強まっており、求人数は増えています。特に、建設や製造業、外食産業や介護・警備などのサービス業では、急激な人手不足に陥っています。なかでも今、深刻な労働力不足が起きているのは、正社員です。労働人口自体が減っているうえ、90年代半ばから企業が人を育ててこなかったのも、大きな原因でしょう。しかし、2020年には東京でオリンピックも控えていますし、厳しいといわれる非正規雇用の人たちにとっても、職を探しやすい売り手市場の状況になっていくと思います。(図表を参照)

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」

出所:厚生労働省「一般職業紹介状況」



――しかし一方で、“なかなか転職できない”“正社員になれない”という声も根強く聞かれます。

熊野  「仕事がない」というより、「やりたい仕事に就けない」ということだと思います。職を探す側としては、自分のキャリアや条件に合うところがない。企業側は、求めているスキルと合致しない。要は、雇用のミスマッチです。しかも今は、一度辞めたらなかなか正社員に戻れません。雇用者全体の3割を占める非正規の人たちや、ノンスキルワーカーたちが低い収入のなかで、グルグル回っている状態です。とりわけ女性比率が75%と高い医療・福祉介護職の賃金の安さは問題です。介護報酬は診療報酬と同様、固定化されているため、介護事業の生産性が低くなってしまっています。

――低所得から抜け出すには、どうすればいいのでしょう?

熊野 当たり前のようですが、転職する前にはスキルをしっかり身につけた上で動くことでしょうね。技能を身に付けないうちに辞めてしまっては、低所得が固定化されてしまう。できれば正社員として5年くらいは修行のつもりでひとつの場所で踏ん張れば、スキルも習得できて次に繋がるのではないでしょうか。また、今は自動車などの輸出関連企業が好景気にわいていますが、“食っていくこと”を考えるならば、あまり業界に固執せず、「自分の得意分野やスキルを生かせる職場」という視点で仕事を探すのも、食いっぱぐれないためには必要だと思います。

投資と人生は同じ。必要なタイミングで必要な資源を投入しよう

――今後、生き残っていくためには、どんな状況でも「食える人」になる必要があります。そのためにはどんな方法があるでしょうか?

熊野 食える人になるためには、1.チャンスを見つける 2.自分でお金をだしてスキルを身につける 3.起業して会社をやる、の3つに尽きると思います。昔から「時代が揺れたときには、裂け目にチャンスがある」といわれますが、裂け目のチャンスは一瞬しか顔をのぞかせません。その瞬間に気づくには、当然普段からアンテナを張っておかないといけない。これは投資にも言えることですよね。人生と投資は同じ。「チャンスに気付く能力」と、必要なタイミングで「金」「時間」「人」の資源をうまく投入できるかにかかっています。

――しかし、家計が厳しさを増すなか、スキルアップにお金を回す余裕がないという人も少なくないようです。

熊野 
資格を取るために学校に通ったり、勉強会に参加することは、自分への大事な投資であり、それ以上のリターンが戻ってくるはずです。そして、得られるのはスキルだけではないと思うのです。そういった場所にはいろんなバッググラウンドを持った人が集まりますから、社外の人脈が増えるのも大きな利点ではないでしょうか。そこで出会った人同士で一緒にビジネスをするという展開もありだと思います。3の起業はリスクも高いのですが、自分でビジネスチャンスを見つけて仕事を作れる人というのは、結局いつ何時でも食っていける人ということになる。また、そんなリスクを負うより、会社のなかで生き残りたいというなら、会社にとって自分が必要な人間になるしかありません。組織がどんなスキルを求めているかを見極める目を養いながら、自分のコアになる競争力を磨く以外にないと思います。

――“自分の競争力”は、どうすれば磨けるのでしょうか?

熊野 決められた仕事以外のことをすることで、多面的な視点が養なわれたり、発想力がついて他の人との差別化につながります。コアスキルがあって、他のスキルを足していくイメージですね。たとえば我々エコノミストは統計の分析が主な仕事ですが、それだけだと現場に鈍くなって顧客と上手な対応ができなくなる可能性もありますから、私もなるべく決められた仕事以外のことをやるように意識しているんです。自分の幅を広げるのは、自分自身しかいません。戦略的に考えていくことが大切だと思います。

★インタビュー第3回目はコチラ!熊野さんが考える節約のアイデアです!

教えてくれたのは……
熊野 英生(くまのひでお)さん
第一生命経済研究所 首席エコノミスト。専門は、金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。日本銀行を経て第一生命経済研究所へ入社。著書に『3時間でつかむ金融の基礎知識』や『バブルは別の顔をしてやってくる』など。


取材・文/西尾英子 パネルデザイン/引間良基


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