不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

不動産仲介「両手取引」の問題点

仲介手数料に関して「両手」といわれる契約パターンがあります。いったいどのようなものかご存知でしょうか。なにかと問題視されることも多い「両手取引」ですが、その現状や弊害など、買主からみた注意点を含めて考えてみましょう。

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.031】

仲介手数料

売主と買主の双方から仲介手数料をいただくのが「両手」


住宅など不動産の取引にあたっては、一定の場合を除いて、売主も買主もそれぞれ仲介手数料(媒介報酬)を支払うことが原則です。このとき、仲介にあたるのが1社であれば双方から手数料を受け取ることができ、これを「両手」と呼んでいます。これに対して、売主側と買主側にそれぞれ別の仲介会社が存在するときは「片手」となります。

両手取引(両手仲介)であれば、同じ一つの売買契約で2倍の手数料を得ることができるため、一部の仲介会社では意図的にこれを狙うケースがあり、以前から問題とされることが少なくありませんでした。

専任媒介または専属専任媒介によって売主から売却の依頼を受けた物件については、業者間の情報交換システムである「レインズ」に登録しなければならないのですが、自社で買主も見つけて「両手」にするため、他の仲介会社からの問い合わせに対して物件の紹介を拒否するなどしていたのです。

法律によって規定されたレインズへの登録はするものの、外部からの問い合わせには「契約予定だ」「売り止め(契約交渉中)だ」などと虚偽の回答をして物件の紹介をしないといった方法で物件の囲い込みをし、自社の顧客から購入希望者が出てくるまでの時間を稼ぐのです。不動産仲介の仕事をしたことがあれば、あからさまに拒否されたという経験をもつ人も多いでしょう。

物件の囲い込み(紹介拒否)によって、売却の機会が阻害されるといった事態も生じるため、売主が気づかないうちに不利益を被っているケースも否定できません。

このような状況に対して東日本レインズ(東日本不動産流通機構)は利用規程を改定し、2013年10月1日に施行しました。「元付け業者(売主側業者)による正当な事由のない紹介拒否の禁止」を定めるとともに、指導や処分規定の厳格化なども図られています。

しかし、両手取引を狙った物件の囲い込みについて第三者が立証することは困難で、禁止規定の効果がどの程度あるのか難しいところです。さらに、両手取引を禁止しようとする議論も見受けられますが、仲介手数料以外の面からもしっかりと問題点を考えなければなりません。

不動産の売買契約をめぐるトラブルで私のところに寄せられる事例のうち、およそ9割は1社仲介、つまり両手取引における買主からのものです。トラブルそのものは両手でも片手でも起きるでしょうが、売主側と買主側にそれぞれ仲介会社が存在すれば、たいていの問題は仲介会社同士で話し合って解決策を導き出すことができます。

ところが、1社による仲介においてトラブルが起きたとき、売主と買主の間にいる仲介会社が完全に中立を保つことは困難でしょう。たいていの場合は売主との付き合いのほうが長く、売主を押さえておけば次の収入機会も期待できるのですから、「売主+仲介会社」vs「買主」の構図になりやすいのです。

もし単純に「両手取引」を禁止して「1社仲介」をそのまま認めれば、「買主は手数料無料」とする集客によって「1社仲介」が大幅に増えることも予測されます。それによって、トラブルで窮地に追い込まれる買主が増えることにもなりかねません。

その一方で、不動産の売買価格の水準が低く、1つの取引で仲介手数料を十分に得られない地方都市などでは、「両手でなければ不動産業の経営が成り立たない」という切実な問題を抱えるケースもあるでしょう。

両手取引が良いか悪いかの判断は別にして、住宅を購入する際には、しっかりと信頼ができ、自分の側に立ってくれる仲介会社、あるいはその担当者を選ぶことがとても大切です。


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