不眠・睡眠障害/その他の睡眠障害

寝ている時に身体がビクッ!「入眠時ぴくつき」の原因と対処法

【日本睡眠学会所属医師が解説】寝ているときや寝るときに身体がビクッ!とすることはありませんか? 眠るときやウトウトと居眠りをしかけたときにビクッと落下感を感じて目が覚めてしまうこの現象は、「入眠時ぴくつき」「睡眠時ひきつけ」と呼ばれるものです。ひどくなると睡眠の質が悪くなりますし、他の病気が隠れている可能性もあります。入眠時ぴくつきの原因や似ている病気との見分け方、対策法・治療法についてご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

寝る時にビクッ! 入眠時ぴくつきの主な症状

ベッドで眠る女性の足

「入眠時ぴくつき」というのは、れっきとした医学用語です

眠りに落ちる瞬間、脚がビクッ!と勝手に動いてしまうことはありませんか? 授業中の居眠りでビクッとなって机を蹴って大きな音をたててしまった……。学生の頃、そんな経験をした方もいらっしゃるかもしれません。

寝つくときに体の一部が急に短時間(0.075~0.25秒ほど)だけ動くことを、「入眠時ぴくつき」といいます。「睡眠時ひきつけ」とか、「睡眠時ぴくつき」「入眠前ミオクローヌス」などとも呼ばれています。

多くの場合、片方の脚に起こりますが、ときには両脚だったり、腕や頭に起こったりします。一回だけのこともありますが、連続して起こることもあります。普通は特に原因がなくて起こりますが、何か外界からの刺激によってぴくつきが起こることもあります。

ぴくつきと同時に、フラッシュのような明るい光や落ちていく感覚、夢、幻覚などの異常な感覚を伴うこともあります。筋肉のぴくつきがなくて、これらの異常感覚だけが起こることもあります。

入眠時ぴくつきはあらゆる年齢層で起こりますが、大人になって初めて経験することが多いようです。入眠時ぴくつきはよくある現象で、およそ6~7割の人が経験しています。入眠時ぴくつきは誰にでも起こりうる現象なので、病気というより生理的現象のひとつと考えられています。

普通はぴくつきや異常感覚以外に症状はありませんが、時にはベッドパートナーを蹴ってしまったり、足を打撲して痛い思いをすることがあります。また、ぴくつきの回数が多かったり、ぴくつきに対する不安が強かったりすると、睡眠障害を起こすことがあります。

このような場合には、睡眠障害の専門医の診察を受けることをお勧めします。
 

入眠時ぴくつきの原因・関連する主な病気の見分け方

眠り始めると、目覚めていたときに働いていた脳の部分が、次第に休みだします。完全に眠ってしまうと筋肉は緊張が取れて動かなくなりますが、覚醒状態から睡眠に移る境目の時間には、脳の働きが不安定になります。このときに間違って脳から指令が出て、急に脚や腕の筋肉が動くのが入眠時ぴくつきです。

一方で、入眠時ぴくつきと症状が似ていて間違えやすい病気として、周期性四肢運動障害やこむら返り、睡眠てんかんなどがあります。ただの入眠時ぴくつきなのか、他の病気の症状なのかは注意して観察する必要があります。以下に、入眠時ぴくつきに似た症状を起こす主な病気と見分けるための違いを挙げます。

周期性四肢運動障害
周期性四肢運動障害の場合、0.5~5秒の筋肉の収縮が、5~90秒の間隔で続けて起こります。入眠時ぴくつきとの違いは、筋肉の活動時間が長いことや、運動が周期的に起こることです。

こむら返り
病気というほど深刻なものではありませんが、似た症状のものとしてこむら返りが挙げられます。こむら返りも持続時間が長く、2~3秒から数分間続きます。また、つったところの痛みや不快な感じが残ることも、入眠時ぴくつきとは異なります。

睡眠てんかん
睡眠てんかんは文字通り、眠っている間に起こるてんかん発作です。脳波検査でてんかんに特有な波が見つかると、睡眠てんかんと診断されます。

以上のような病気でない場合でも、肉体的に疲れていたり、夕方以降に激しい運動をすると、入眠時ぴくつきが起こりやすくなります。また、精神的なストレスがあったり、カフェインやニコチンなどの刺激物を多くとりすぎるのも良くありません。
 

入眠時ぴくつきの対処法・治療法

入眠時ぴくつきは多くの場合、時間がたてば自然になくなります。しかし、ぴくつきがひどくてよく眠れないような場合は、いくつかの対処法を心がけるようにしましょう。

夜の激しい運動や刺激物を控え、眠る前にはリラックスを心がけましょう。また、睡眠と覚醒のパターンがバラバラだとぴくつきが起きやすいので、規則正しい生活をすることも大切です。

自分でできることをしてもまだ眠れないときには、病院を受診し、薬による治療を受けることも可能です。一般的な睡眠薬であるベンゾジアゼピン系睡眠薬が使われ、特にクロナゼパムやジアゼパムがよく効きます。医師と相談の上で、改善に向けて試してみるのもよいかもしれません。
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