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儚き恋に官能の色 イザベル・ファウストのバルトーク

人気・実力ともに最高の女性ヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが追求しきった、実らなかったはかなき恋慕を優しく官能的に描くバルトークの協奏曲。世に知られてこなかった理由とは?

大塚 晋

執筆者:大塚 晋

クラシック音楽ガイド

実らなかった儚き恋慕を優しく官能的に描くファウストによるバルトーク

26歳のまだ駆け出しの作曲家だったベラ・バルトークは、7歳年下の美貌のヴァイオリニスト、シュテフィ・ゲイエルに恋し、彼女のためにヴァイオリン協奏曲を作り贈りました。しかし、彼女の心は別の男性にあり、この曲は演奏されることなく、世に存在すら知られていませんでした。

ところが、バルトークも亡くなり、ゲイエルも亡くなった後、ゲイエルの遺品の中から楽譜が発見され、バルトークの「ヴァイオリン協奏曲第1番」として知られるようになったのです。
イザベル・ファウストundefinedバルトーク

イザベル・ファウストとダニエル・ハーディングという今最も輝く演奏家の共演というのも見事

―― 今をときめく人気ヴァイオリニスト、イザベル・ファウストは、93年にパガニーニ国際コンクールに優勝し、97年にバルトークの作品集でCDデビュー。そして彼女が満を持して録音したのが、そのバルトークのヴァイオリン協奏曲集。共演はこちらも若き名匠ダニエル・ハーディングで、彼が音楽監督を務めるスウェーデン放送交響楽団を指揮。

上に記した第1番は、バルトークの草稿にも当たったファウストの真摯さが隅々まで行き渡ったもの。切々と歌われるヴァイオリンに弦楽器群が絡み、次第に輪は大きくなりオーケストラがヴァイオリンを優しく力強く包み込む。ファウストの無駄がなく媚びない美しさからは、自然な官能さが滲み出ていて息を呑む。

第2番は、代表作「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」(1936年)と近い、1937年から1938年に書かれた作品で、彼が愛した民族舞曲的な要素から(12音音楽的な)現代音楽的な響きまで聴こえる充実作。

ここでもファウストは丁寧に完璧に弾き切り、また、ハーディングがぴったりと合わせ唸らせる演奏に。

彼女の飽くなき探究心はとても深く、そして表現意欲とそれを叶える技術が最高のレベルで結実。今、彼女の演奏の充実ぶりは圧巻と言えます。

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そんな彼女が2013年10月下旬から11月にかけて来日。

東京公演は、
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団(指揮:イルジー・ビエロフラーヴェク)との共演。
日時:2013年10月31日(木)19:00開演
場所:サントリーホール
曲目:ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲

他、全国の公演詳細は下記。
http://www.pacific-concert.co.jp/foreigner/view/122/
旬のアーティストの演奏、楽しみですね。

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