不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

住宅街にある居酒屋の影響は?

住宅街の中に居酒屋があるときは、近隣の住民に対してどのような配慮をしているのかも気になるところです。酔客の話し声やカラオケの音が気になって安眠できないというのでは、快適に暮らすことができません。法律による規制や、住宅選びの際の注意点などを考えてみましょう。(2017年改訂版、初出:2013年9月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.017】

居酒屋

このお店と記事本文とは関係ありません


住宅に囲まれた場所で営業している居酒屋をときどき見かけます。大手チェーン店が住宅街に出店することはほとんどなく、たいていは個人営業のお店でしょう。静かに落ち着いてお酒を飲めるのであれば、むしろありがたいと思う人もいるのではないでしょうか。

しかし、酔えば酔うほど話し声は大きくなり、路上で騒ぐ客も現れます。とくに夏場などには入口のドアや窓を開けっ放しにする居酒屋もあって、まわりの住人には騒音としか感じられない場合もありそうです。

夏の夜に自宅の窓を開けたままで寝ようとしても、近所の居酒屋からの音がうるさくてなかなか寝付けないこともあります。なかには防音設備がないままで、カラオケの音を外部に漏らし続けている店もあるようです。

このような居酒屋が法律でどう扱われているのか気になるところですが、まず用途地域による制限を確認してみましょう。

第1種低層住居専用地域では、兼用住宅である一定規模以下の「食堂もしくは喫茶店」が認められ、第2種低層住居専用地域ではそれに加えて、独立店舗として一定規模以下の「食堂もしくは喫茶店」も認められます。

しかし、この「食堂もしくは喫茶店」に居酒屋は該当しないため、第1種・第2種低層住居専用地域に居酒屋ができることはありません。

ところが第1種中高層住居専用地域になると、床面積の合計が500平方メートル以内で、かつ2階以下の「飲食店」が認められるようになり、居酒屋はこれに含まれます。

第2種中高層住居専用地域と第1種住居地域では面積要件が緩和され、第2種住居地域からは面積の上限もありません。工業専用地域では飲食店そのものが禁止されますが、それ以外の用途地域ならどこでも居酒屋を開くことはできるのです(建築基準法施行令による)。

ちなみに、スナックやバーなどは風営法(風俗営業法)による許可を必要とし、原則として住居系の用途地域内では営業することができません。

しかし、自治体の条例などで、商業地域から一定距離内にあることや、近くに学校・保育所・その他一定の施設がないことなどを要件として、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域での立地が認められる場合があります。

深夜0時以降の営業に関する「深夜酒類提供飲食店届出」についても同様です。

いずれにしても、購入しようとする住宅の周囲、あるいはマンションの1階などに居酒屋があるときには、その様子をしっかりと確認しておきたいものです。もちろん、昼間ではなく夜の様子を観察することが欠かせません。

昼間に現地見学をするときには、ひっそりとしていて営業しているお店かどうか分からなかったり、そこにお店が存在することすら気付かなかったりするような場合もあるでしょう。

騒がしいのは夏場の夜だけ、あるいは週末の夜だけというケースもあるため、なかなか判断しづらい面もありそうです。居酒屋だけにかぎった話ではありませんが、気になる場合には売主や近隣の住民からよく話を聞いてみることも大切です。


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