妊娠の基礎知識/高齢出産

変わる不妊治療 「助成は42歳まで」の時代へ

不妊治療の公的助成制度に「42歳まで」という年齢制限が登場。その意味とは? 日本の不妊治療に訪れた大きな転機を読み解きます。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

日本初の年齢制限「42歳まで」

不妊治療の公的助成制度のあり方を検討している厚労省の検討会では、7月29日、助成対象について下記の意見をとりまとめました。

検討会風景

検討会メンバーは不妊治療に携わる医師、カウンセラー、当事者グループ代表者などで長時間の審議となりました。

●「42歳以下」という年齢制限の新設

●回数を現在の「10回まで5年以内/年間回数2回まで(初年度のみ3回)」から「6回まで・40歳以上は3回まで/年数、年間回数は制限なし」に変更

これらはおもに医学的な有効性と安全性からの判断でした。最近の不妊治療は、出産できる可能性がかなり低く、妊娠後のリスクも高まる高年齢の治療が急増していました。

補助金の制度は、不妊治療のうち保険が効かない体外受精の経済的負担が非常に大きいことから2004年に始まり、これまでも頻繁に改訂されてきました。しかし初期の改訂が対象者を増やすための改訂であったのに対し、最近は体外受精の方法や対象者の変化を反映したものになってきています。

そのため、今までもらえていたお金がもらえなくなる人も出てきます。報道でも「43歳になったらもらえない」「6回までしかもらえない」というように対象となる範囲が狭められる面がクローズアップされています。

変更の狙いはどこに?

本来は、体外受精をしようとする方は年齢や妊娠のしにくさには関係なく、誰もが平等に応援されるべきなのかもしれません。既存の所得制限も北欧などにはありませんし、日本の助成制度はそもそも決して充実したものではありません。

でもこの改訂では「1年に2回まで」と制限されていた年間回数が無制限になりました。これにより、卵子老化が進まないうちに一気に治療を進められる人が増えます。

現在、不妊治療をする人の最多年齢は39歳と非常に高くなっています。高齢の不妊治療に求められるものは回数よりも「スピード」、そして1回ずつの治療が「質」の高いものであることです。

今までの制度下では、年に2回おこなったあとは翌年まで治療を休んで高齢化してしまう人もいましたし、不妊治療の質も施設によってばらばらでたくさんの人が施設得選びに四苦八苦してきました。検討会では、今後は治療の質の保証についても話し合いが進む方向となっています。

新しいルールには非常に厳しい状況で治療をする人の急増に対応し「つらい思いをして、しかも妊娠できない人を減らそう」という願いもこめられているように思います。

今回の改訂ポイントから見えてきた不妊治療、そして家族の「未来」を展望してみましょう。
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