株・株式投資/決算書からチェック!気になる銘柄の株価

キヤノンの株価に見る「自社株買い」の効果

自社株買いには3つの効果がありますが、なかでも1株利益(EPS)の上昇効果に注目です。1株利益が増加すれば、1株価値も上昇し、ひいては株価上昇を期待できます。キヤノンは株価の下落局面で、機動的に自社株買いを実施しています。

日根野 健

執筆者:日根野 健

公認会計士ガイド

  • Comment Page Icon
 「自社株買い」という言葉、ときどき耳にしますが、株式投資にどんな影響があるのでしょうか?そういえば、決算短信の2ページ目に「期末自己株式数」が書かれていますが、それとはどんな関係があるのでしょうか?

今回は、頻繁に自社株買いを行っているキヤノン(7751)をケーススタディとして取り上げながら、自社株買いと株式投資の関係を見ていきたいと思います。

自社株買いには3つの効果がある

自社株買いとは、企業が自らの株を購入することをいいます。「キヤノンがキヤノン株を購入する」というのが自社株買いです。企業が株を新たに発行して資金調達する「新株発行増資」とは対照的ですね。

では、企業はなぜ自社株買いを行うのでしょうか?自社株買いには次の3つの効果があります。
【図undefined自社株買い3つの効果】

     【図 自社株買い3つの効果】


1つめの「経営者の株価に対するメッセージ効果」とは、経営者が「今の株価は安すぎる!」と考えているという意思を表明する効果です。

経営者は、その企業について最も熟知した人です。企業の事業内容、収益力、将来性などについて誰よりも詳しい経営者が、その時点の株価で自社株を購入することを決断するわけです。

高すぎる株価で自社株買いをしてしまえば、売り抜けた株主は適正な株価よりも高い株価で売却できたのだから、トクです。でも、株を売らなかった既存株主にとっては、企業から理不尽に現金が流出してしまい、不利になってしまいます。
ですから、経営者は自社株買いをするときに、株価水準には細心の注意を払います。

ともかく、その企業について最も詳しい経営者が「買い」と判断したこと自体が、マーケットに対して強い意思表明になるのです。

2つめの「需給の改善」とは、自社株買いにより資金力の大きな買い手が登場するわけですから、需給が改善するという効果です。

株式市場においては、やむをえない事情で株式を売却する人も出てきます。そういう売り需要に対して、企業の自社株買いは強力な買い需要として立ち向かうのです。

なお、自社株買いが需給に与える影響が大きいかどうかは、「発行済株式数」に対する「取得予定の株式数」の割合で判断することができます。

例えば、2012年7月30日にキヤノンが発表した自社株買いは、発行済株式数11億7116万7703株に対して、取得予定の株式数は2100万株でした。その割合は、1.8%になります。

一般的には、1~2%の範囲の場合が多いのですが、ときには10%を超えるような大規模の自社株買いが行われるケースもあります。

自社株買いの3つめの効果、「1株利益の上昇効果」とは?詳しくは次ページ>>>
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます