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マンションの駐車場

マンションの駐車場は、車を所有する世帯であればとても便利なものです。しかし、これは区分所有者全員の共有財産であり、車を持たない世帯にとっても決して無関係ではありません。マンション駐車場のタイプの違いとともに、それぞれの注意点などを考えてみましょう。

執筆者:平野 雅之


マンションの駐車場にはさまざまな種類があります。しかし、どのようなタイプであっても区分所有者全員の共有財産であることに変わりはなく、車を所有しない世帯でも、駐車場についてしっかりと理解しておくことが大切です。

マンションの駐車場

敷地が広いマンションなら平置きの駐車場も多い


郊外立地などで敷地の広いマンションであれば、平置き(平面式)の駐車場も多いでしょう。たいていは屋根がないものの、使い勝手が良く、高さのある車でも容易に置くことができます。メンテナンス費用が他の方式に比べて安く済むことが大きなメリットです。しかし、台数の確保が難しいため他の方式と組み合わせられることが多く、屋外の平置き駐車場だけというマンションは意外と少ないかもしれません。

マンションの駐車場

マンションの1階が平置きの駐車場になっていることもある


同じ平置きでも、マンションの1階の一部が駐車場として使われていることがあります。屋外の平置きと同様に使い勝手は良く、屋根もあるため雨天時の乗降にも便利です。ただし、奥行きが1台分しかなければ、乗降の前後にいったんは外に出なければならない構造がほとんどです。

マンションの駐車場

1階の大半が駐車場になっているマンションは耐震性能にも注意


それに対して、1階部分の多くが駐車場になっているマンションでは、たいてい奥に出入り口が設けられています。雨天時に傘がなくてもまったく濡れることなく車の乗降ができます。一方、このような構造で、とくに旧耐震基準により建てられたマンションでは、建物全体の耐震性能にも十分に注意しなければなりません。

専用庭の駐車場

1階の専用庭が駐車スペースを兼ねていることも


事例は少ないものの、1階の専用庭部分が駐車スペースを兼ねているマンションもあります。専用庭は「共用部分」ですが、駐車スペースの使用者はそれに面した部屋の住人に限られます。駐車スペースから直接、部屋に出入りすることができるため、門扉の鍵を閉め忘れると大変です。

地下駐車場

地下の駐車場は便利だが…


ある程度の規模のマンションでは、地下が自走式または2段の機械式駐車場になっている場合もあるでしょう。出入りの際の動線は若干長くなるものの、使い勝手は良く、駐車場からそのままエレベーターで部屋のある階へ行くこともできるほか、敷地内における歩車分離の動線も作りやすくなります。ただし、建設コストはそれなりに高くなるため、新築分譲時の価格にどう反映されているのか注意も必要です。

自走式立体駐車場

自走式の立体駐車場を備えたマンションもある

自走式立体駐車場

壁や天井のある自走式立体駐車場も


より多くの駐車台数を確保するため、立体駐車場を備えたマンションもあります。鋼材を組んだだけで屋根のないものから、壁や天井がある本格的なものまでタイプはさまざまです。機械式の駐車場よりも、置くことのできる車種に柔軟性が生まれます。ただし、自分の駐車スペースが1階ならさほど問題はないでしょうが、上のフロアだと車を利用するたびに階段を上り下りしなければならない場合もあります。3層以上の自走式立体駐車場だと、建物内を何度も回ることになり、運転に慣れていないとなかなか大変です。

機械式駐車場

最近のマンションでは機械式のものも多い


最近のマンションであれば、機械式の駐車設備が設置してあることも多いでしょう。パレットが上昇して地上に2~3段の駐車スペースを取るものと、地下に格納されるものとがあります。

機械式駐車場

1階部分に機械式の駐車設備があるマンションも

機械式駐車場

駐車可能な車種は限られる?


マンションの1階部分に2段式の機械が設置されている場合もあります。天井高がそれほどないところに車を格納するため、駐車可能な車種は限られます。

機械式駐車場

敷地が機械式駐車場で埋め尽くされたようなマンションも


屋外の敷地に数多くの機械式駐車場が据え付けられているマンションも多く見られます。両面道路などの配置で、エントランスとは反対側の敷地の裏手にあれば良いのですが、「マンションの顔」とも言うべきエントランス前を、武骨な機械式駐車場が塞いでいるような場合もあるでしょう。機械式の駐車場は、自家発電装置などがない限り、停電時には動かないことにも注意しなければなりません。

マンションの駐車場

超高層マンションではタワー型の立体駐車場もある

マンションの駐車場

マンションと駐車場建物との間隔がとても狭いことも多い


超高層マンションでは、タワー型の立体駐車場が造られていることも少なくありません。タワーの多くは敷地の北側やマンションの外廊下に面した側に建てられますが、接道条件などによっては日照をかなり阻害している場合もあります。本来は部屋に差し込むはずの陽光が遮られ、採光要件を満たさないことから部屋の間取りが「N」(納戸)や「S」(サービスルーム)と表示されていることもあるでしょう。これから建設される新築マンションの場合には、駐車場タワーとマンション本体との位置関係もしっかりと確認するようにします。

マンションの駐車場

機械の操作であることを忘れずに!


タワー式に限らず、機械式の駐車場では「機械の操作である」ということを常に意識することが大切です。家電品の扱いとは違いますから、気を抜けば重大な事故に繋がりかねません。マンションの駐車場で子供が犠牲になる事故も相次いでいるのです。操作中に装置から離れたり、操作ボタンを何かで固定したりといったことは厳禁です。運転者以外の乗り降りは外で行なうことや、子供の動きにも常に十分な注意を払うことがたいへん重要です。

マンションの駐車場

機械式駐車場では入出庫の時間も考えよう


機械式駐車場では、車の出し入れにかかる時間も考えたいものです。たとえば出庫と入庫にそれぞれ5分かかるとすれば、車を1回使用するたびに機械の操作時間で10分を費やします。1年に300回使えば3,000分、これを20年続ければ60,000分で、約42日に相当します。もちろん、それがなくなればそのぶん人生が有意義になるというわけではありませんが…。真夏や真冬、大雨など気象条件が厳しいときでも外でしばらく待たなければならない場合があるでしょう。

マンションの駐車場

機械式駐車場はメンテナンスコストも大きい


機械式駐車場では、当初の建設コストだけでなく日常の維持管理コストや定期的な点検コスト、故障や経年による設備取り換えコストなど、メンテナンスにかかる費用が大きくなりがちです。構造などによってもだいぶ違いは生じるでしょうが、50~60台程度を収容する機械式駐車場で、20年間にかかるコストが約2億円に達するとの試算もあるようです。また、立体式駐車場などではそれ自体に固定資産税がかかることもあります。

多くの自治体では、「建築基準条例」や「駐車施設設置要綱」などによって、マンションにおける最低限の駐車台数を定めていますが、車離れが進む現代では過剰となっている例も少なくありません。とくに駅から近いエリアに立地するマンションでは、空きが目立つことも多いようです。

駐車場契約者から集める駐車料金だけで維持管理コストや固定資産税などを負担できれば良いのですが、そうでなければマンション管理組合の財務状況を圧迫することもあります。最近では、マンションの駐車場を外部の第三者に貸し出す動きも見られるようですが、いずれにせよ駐車場を使用しない世帯でも、その維持管理コスト負担の内情がどうなっているのか、しっかりと確認することが欠かせません。


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