不動産売買の法律・制度/不動産売買ワンポイントアドバイス

囲繞地通行権とは?

囲繞地通行権とは、いったいどのようなものでしょうか? 都市の住宅地では、ときどき囲繞地と袋地の関係が問題となる場合もあります。いざというときに困らないよう、その権利内容について正しく理解しておくことが大切です。(2017年改訂版、初出:2013年6月)

執筆者:平野 雅之

【不動産売買ワンポイントアドバイス No.007】

囲繞地と袋地

囲繞地と袋地の関係は?


囲繞地(いにょうち)……何だか怪しげな響きのする不動産用語ですが、戦前からあるような都市の住宅地では決して珍しいものではありません。

上の図で「E」は道路に接しておらず、このような土地は「袋地」と呼ばれます。そして、この「袋地」を取り囲む「A~D、F~I」の土地が「囲繞地」です。現実にはもっと複雑な形状で入り組んだ土地の場合が多いでしょう。

袋地の所有者は、回りの土地のどこかを通らなければ道路に出ることができません。そこで、袋地の所有者が他人の土地を通ることのできる権利を認めたものが「囲繞地通行権」(民法第210条)です。

これは「袋地通行権」ともいわれますが、囲繞地通行権は「袋地所有者が、囲繞地を通行できる権利」、袋地通行権は「囲繞地を、袋地所有者が通行できる権利」であり、どちらも意味することは同じです。

土地の成立時点から袋地だった場合には、その土地を囲んでいる他の土地のうち、相手にとって最も損害の少ないところを選んで通行しなければなりませんが、必要に応じて通路を開設することも認められます。

その通行にあたっては1年ごとに償金を支払うほか、通路開設に伴う損害に対しては初めにまとめて支払わなければなりません。

ただし、「囲繞地通行権」として民法で認められる通路は人の通行を想定したものであり、建築基準法により求められる2メートル幅や、車の進入に必要な幅を考慮したものではないことに注意が必要です。

「囲繞地通行権」は、その土地に出入りするための最低限の権利を認めたものにすぎず、建築基準法によって建築が認められる敷地条件の確保は考慮されていないのです。

裁判による判例では、個々の事情により通路として認められる幅が異なっているようですが、一般的には90センチメートル程度の幅に留まることが多いでしょう。

ただし、住宅用地ではない袋地の利用において、自動車の通行を前提とした囲繞地通行権が認められた判例(特段の事情が考慮されたケース)もあります。

一方で上の図において、たとえば「DとE」がもともと一つの土地であり、その分割や一部譲渡によって袋地となった場合には、「E」の袋地所有者が通行できるのは「D」の土地に限られます。このようなときには無償で通行することが法律で認められています。

「袋地」のほとんどは「無道路地」であり、建築基準法による接道義務を満たしていません。そのため、あえて袋地を購入することは少ないでしょう。ところが、「袋地のために通路を開設した囲繞地」の購入を検討するケースは十分に考えられます。

「囲繞地通行権」は法律により守られた権利であり、建築の邪魔だからと勝手に通路を廃止したり、袋地所有者の通行をやめさせたりすることはできないので注意しなければなりません。

なお、民法の口語化に伴う改正(2005年4月施行)により、法律のうえで「囲繞地」という用語が使われることはなくなりました。

また、「公路ニ通セサルトキハ」という表現も「公道に通じない土地」などと置き換えられています。「公路」が「公道」に変わっていますが、この場合の「公道」には、一般の通行ができる私道を含むものとして解釈されています。


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