「抑肝散」はどんな人・どんな症状にいいの？
似たような処方に「（加味）逍遥散」があるので、比べてみよう
「抑肝散」の効果
小児のひきつけ、疳の虫、夜泣き、歯ぎしり、不眠に。一般的なイライラ、神経症、更年期障害、不眠、歯ぎしりになどにも応用できます。「抑肝散」に入っているもの
釣藤鈎（アカネ科のカギカズラの鈎刺の茎枝）、柴胡（セリ科の根）、川きゅう（セリ科の根茎）、当帰（セリ科の根）、茯苓（サルノコシカケ科の菌核）、白朮（オケラなどの根茎）、甘草（マメ科などの根やストロン）。「抑肝散」が合わない人
嘔吐などの胃腸トラブルがある場合は、抑肝散に陳皮と半夏を加味した「抑肝散加陳皮半夏」の方がベターです。「抑肝散」の飲み方などの注意点
■飲む時間一般的には食事と食事の間の空腹時、食事の前の30分前など、お腹が空で胃に吸収されやすい時期に飲みます。胃腸が荒れやすい人は食後、通便させるクスリは空腹時の服用を勧める場合もあります。なお、食間に飲み忘れた場合は食後でいいので、飲みましょう。
■「水」or「白湯」？
症状によって、冷たい水で飲むほうが効果的な場合（その反対も）もありますが、基本的には生薬を水で煎じた「煎じクスリ」の場合は、人肌に冷まして飲みます。生薬の有効成分を抽出して乾燥・加工した「エキス剤」の場合、お湯に溶かしたり、水と一緒に飲んでください。
「抑肝散」の副作用
体質や症状に合わない、西洋薬との併用、アレルギー体質などの場合、不快な症状や副作用が出る場合があります。ちょっとおかしいな、と思ったらすぐ服用をやめ、漢方の専門家や処方してくれた医師に相談しましょう。「抑肝散」が買える場所
漢方薬局や病院、診療所、ドラッグストアなどです。代表的な商品名：（アイウエオ順）
- 一元 抑肝散 （一元製薬)
- クラシエ 抑肝散加陳皮半夏エキス顆粒 （クラシエ薬品）
- ツムラ 抑肝散加陳皮半夏［医療用］ （ツムラ）
- 松浦漢方 抑肝散加陳皮半夏エキス細粒 （松浦漢方）
- ヨクカーンＮ（抑肝散加陳皮半夏） （小太郎漢方）
「抑肝散」の漢方的メカニズム＜中級者向けトリビア＞
肝うつ化風による虚熱のひきつけや歯ぎしり、木乗土（肝機能の亢進により消化機能を低下させる）を改善させるおクスリです。なので、平肝熄風とともに、健脾や補血を補助する生薬も配合されています。■具体的な生薬の効能
主薬は釣藤鈎で、肝気の高ぶり（興奮）を鎮めます。柴胡と川きゅうが主薬をサポートし、気の流れを整えます。なお川きゅうは、当帰とともに血の流れをスムーズにしたり、痛みを止めます。
茯苓、白朮は消化機能を整えて水分代謝をよくし、甘草はその補佐とともに、全体の調和薬になっています。
「抑肝散」のおまけのエピソード
処方名に「肝を抑える」とあるように、肝の高ぶりを鎮める漢方薬ですが、肝＝肝臓だけではなく、自律神経のコントロールをになっている働きがあると、中医学では考えられています。なお医学書には、飲む際には「母子同服」とあるように、母親のイライラした精神不安を改善させるという治療方法も、いかにも中医学らしくていいと思いませんか？
最近では育児を積極的に行うイクメン・イクダンが急増中なので、「父子同服」の時代が来るのもそう遠くないかもしれませんね。
