定年・退職のお金/定年退職にまつわる各種制度

早期退職は損か? 得か? 割り増し退職金はいくら

早期退職には、経営再建などを目的とした「早期希望退職制度」と、業績に関係なく導入されている「選択定年制」があります。二つの制度の相違点と、早期退職に応じる前に検討しておくべきポイントをご紹介します。

大沼 恵美子

執筆者:大沼 恵美子

貯蓄ガイド

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早期退職には2種類ある

わが社が希望退職募集をするとは…

わが社が希望退職募集をするとは…

早期退職制度には二種類あります。一つは、業績に関係なく、従業員の世代間の人員バランスの均衡や定年前に転職や独立を考える従業員の支援などを目的として、人数を限定することなく随時募集する「選択定年制」あるいは「早期退職優遇制度」です。これらは退職制度の一つとして常設されており、自己都合退職扱い(会社によっては定年退職扱い)です。企業が勤続年数や適用開始年齢など適用要件を定めており、退職一時金や退職年金の優遇などがあります。
 
中央労働委員会の「令和元年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、選択定年制を導入している企業は179社中90社(約50%)です。
 
もう一つは、経営再建や事業の再構築・構造改革のために、期間と人数を限定して退職者を募集し、早期退職してもらう制度で、一般に「早期希望退職制度」「希望退職制度」と言われます。整理解雇を回避するために実施されるので、多くの場合、退職金の割り増し加算や再就職の斡旋があります。特定受給資格者あるいは特定理由離職者扱いです。

東京商工リサーチによると、2021年6月3日時点で「早期・希望退職」を実施した上場企業は50社、そのうち直近の本決算で最終赤字の企業が34社、黒字企業が13社です。募集人数は1万人を超えています。
 

離職理由と基本手当の給付内容の関係

退職後受給する雇用保険の基本手当は、年齢や被保険者期間、離職理由などによって異なり、「45歳以上60歳未満、被保険者期間20年以上」の場合は下記の通りです(令和3年8月1日以降適用)。
 
●離職理由区分/給付日数/給付金額(上限額)/待期後の給付制限
  • 自己都合退職者/150日/8265円/2カ月(一定の要件あり)
  • 定年退職者/150日/8265円/なし
  • 特定受給資格者・特定理由離職者/330日/8265円/なし
*待期は、離職票を提出し求職の申込みをした日(受給資格決定日)から7日間
 
「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」はこちら
 

割り増し退職金は1~2年

選択定年制は人事制度の一つなので、優遇措置などの規定内容は就業規則に明記されています。一方、早期希望退職は、募集ごとに優遇内容が異なります。1回の募集で目標人数に達しない場合や経営環境の悪化などから募集を複数回行うこともあり、回を重ねるごとに優遇内容は悪くなる傾向があります。

早期希望退職募集の場合の割り増し退職金は、企業業績や経営状況、募集理由、対象者の年齢など諸条件で異なるので一概にはいえませんが、「退職金+給与12~24カ月分程度を上乗せ」が多いようです。
 

「売り」や「ネットワーク」は?

「早期希望退職」への対応を決めるには、少なくとも次の3点を熟慮する必要があります。
 
  1. 割り増し加算の退職金で退職後の収入ダウンを賄えるか
  2. 現在の会社の将来性
  3. 転職市場での自分の「売り」

自分の「売り」や「資格」、人的ネットワークを持っている人は、再就職が有利に進むようです。
 

高年齢者雇用安定法改正の影響も?

働き方改革(在宅勤務やリモート会議、ロボットの活用など)による業務の急激なIT化や技術革新、生産拠点の見直しなどから企業には人員の余剰感が出てきています。70歳までの就業機会確保措置を求める「高年齢者雇用安定法改正」(2021年4月施行)の影響もあり、選択定年制の導入や早期希望退職の実施は続くと思われます。いつ早期希望退職が実施されても慌てることなく転身できるように、シンプルな生活と堅実な家計管理で貯蓄額を増やし、目標を持って自己研鑚に努めましょう。
 
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