早期教育・幼児教育/早期教育

3歳までの育て方……可能性を広げる教育で大切にしたいポイント

3歳までの発達は、赤ちゃんから幼児に成長するスピードが著しい期間。毎日のように変わる表情や成長ぶりに幸せな気持ちになりますよね。可能性が広がる「ゴールデンタイム」ともいわれる3歳までの育て方のポイントを、教育や育児の点から解説します。

小林 サラ

執筆者:小林 サラ

早期教育・幼児教育ガイド

 

3歳までは個性や能力の基礎作り期

親子で個性や能力の基礎づくり

親子で個性や能力の基礎づくり

個性や能力は、主に脳の働きによって決定づけられています。科学的な研究が進み、脳の形成の仕方が、個性や性格、能力に影響を与えることが分かってきました。そこで、育児を科学的根拠に基づいて行うことができることも増えてきています。

脳はごく小さな頃から、あらゆる可能性の中で取捨選択を始め、機能特化するものと捨てるものを決め統合して、各所の役割分担をさせていきます。例えば、足の指。生まれてしばらくは、まるで手のように動いていたのに、その指の動きは次第に衰えますよね。足の機能に撤していくように専門化が進んでいくからなのだそうです。

世界中の大人が用いる赤ちゃんをあやすための「子守歌」や「ベロベロバー」、「いないいないばー」に、赤ちゃんの脳は強い反応を表します。これは外からの刺激を受けて脳が発達している証拠。遺伝的要素だけでは個性や能力は決定されないということなのですね。
 

3歳までの育て方で、子どもの可能性をさらに広げる!

遺伝子をもとに育った環境で可能性がひろがる

遺伝子をもとに育った環境で可能性がひろがる

1歳までに愛情深く育てられた子どもは、相手の感情を読み込む力や自分の意思を伝える力がしっかりと育ち、コミュニケーション能力が高いそうです。逆に、放っておかれた子どもは大脳新皮質の厚さが薄く、言語能力があまり育たなかったというレポートがありました。

つまり、子どもの能力に大きな影響を与えるのは、もともと持っている遺伝子だけでなく、育て方や環境などの後天的なできごとなのです。先天的な遺伝子はあくまでも材料にすぎず、遺伝だけで個性や能力が決定するわけではないということだそうです。

このように書くと、心配なさる方がいるかもしれませんが、ご安心ください。この時期に全てが決まってしまうわけではありません。子どもの能力や個性の大まかな土台ができあがるというだけで、もちろん3歳以降もいつからでも作られ、更新されます。

では、子どもの能力や個性の基礎を作るには、どうしたら良いのでしょうか?
「子どもの個性や人間性を伸ばす3つのポイント」を紹介します。

  ポイント1 子どもがしたい時にしたいことで好奇心を伸ばす
  ポイント2 基本的な生命欲求を満たす
 
ポイント3 必要な時期に必要な働きかけをする
 

3歳までの育て方において個性や人間性を伸ばす「環境」は重要

子どもの個性や人間性を伸ばすには、両親など周りがどんな対応を選択するかが大切です。

■ポイント1 
      子どもがしたい時にしたいことで好奇心を伸ばす
我が子の好奇心の冒険につきあう

我が子の好奇心の冒険につきあう

もし、周りが何もかも先回りして、新しい刺激を用意したり、手を出しすぎたりすると、子どもはどうなるでしょう? 受け身でいることに慣れ、自主性を育むチャンスを失うかもしれません。

子どもが自分から“新しい動作にチャレンジしたい”と思うこと、周りの大人はそのシーンに気づくことが大事です。そのチャレンジや冒険に余計な手出しをせず、危険がないように注意しつつ、ただ温かく見守ります。

五感をフル活動させ、体を動かすことで脳は活性されるので、「活動は楽しい!」と子どもが感じられることが理想です。そして時には励まし、成功したら、いっしょに喜びをわかちあいましょう。
おしゃべりしたり、スキンシップをとることでセロトニンという幸せを感じるホルモンが放出されます。その結果、また同じようになりたいと思うようになります。この良いサイクルを作り上げ習慣化することが、新たに開発された能力を定着させていくようになります。また、セロトニンがスムーズに分泌する脳はストレスに強い脳とも言われています。

■ポイント2  
    
基本的な生命欲求を満たす
生命欲求とわがまま欲求を区別する

生命欲求とわがまま欲求を区別する

安心できる環境のなかで、愛情や栄養を十分に受け、守ってもらえることが、子どもにとっては全ての基礎になります。不安や生命的危機を感じながらの環境では、身体や能力の向上にエネルギーを回そうとはしないのです。
お腹が空いたり、お尻がぬれて気持ち悪かったり、怖くて抱きしめてほしい時に放っておかれたり、声が枯れるまで泣かされていたのでは、基本的な欲求は満たされません。子どもにとって基礎になる生命欲求が満たされれば、自然と次の発達ステップに進むようになります。


ここで注意したいことは、わがままな欲求への対応です。子どもの欲求が、健康な心と体を維持するためのものなのか、それともわがままからなのかを選別しなくてはなりません。実は、なんでもかんでも満たしてあげるのも考えものなのです。ある研究では、我慢のできる子どものほうが、我慢に弱い子どもより学力が高いという結果が出ています。

小さな子どもだから我慢できないというのは間違いで、自分のわがままを我慢することを身につけさせていないだけということがあります。子どもが我慢を学ぶと、本人はもちろん、周りにとってもプラスになります。子どもは自分に自信を感じるようになりますし、周囲も子どものわがままに振り回されずに済むようになります。また、善悪の判断によって自分をコントロールしていくことにも我慢が必要です。それを身につけさせるかどうかは、子どもの将来にとって大きな分かれ道となりそうですね。

■ポイント3 
      必要な時期に必要な働きかけ
タイミングは子供から教わる

タイミングは子供から教わる

良いタイミングと必要な働きかけを周囲が率先して誘導する必要はありません。最適なタイミングとプロセスは子ども自身が知っているので、自然の流れに任せるのが一番です。子どもの毎日の成長に合わせて、周りの大人の対応も臨機応変に更新していくことだけ気をつけてください。

子どもをよく観察して、良い時期が来たら、適切な刺激を与えます。例えば、生後3-4か月頃になって体がしっかりしてきたと感じたら、仰向けにばかり寝かせず、うつ伏せにしてみてください。自ら頭を持ち上げようとしたり、腕や足を上げようとすることでしょう。そうすることで上半身や体全体が鍛えられ、ハイハイをするのに必要な筋力を整えていくことができるのです。
適切な刺激を与えれば、後からでも取り返せます

適切な刺激を与えれば、後からでも取り返せます

ここで想定している動きができなくても、すぐに気にする必要はありません。何回か経験してからのじっくり派の子もいますし、突然できるようになることも実はよくあります。たいてい後から取り返すことができるものです。大切なことは諦めずに、適切なタイミングで必要環境を与えてあげることです。

最終的に、子どもの能力を伸ばすには、ご両親など周りの理解と手助けが大切です。子どものためにいろいろしてあげたくなってしまうのは心情ですが、子どもの力を信じて見守ること。そして、好奇心や興味に気づき、手助けすること。見守りつつも時期や必要に応じて刺激や手助けをすることを見極めるのは、簡単なようで難しい課題なのかもしれません。

参考文献
・Chilling Brain Scans Show the Impact of a Mother's Love on a Child's Brain Size Christine Hsu Medical Daily Oct 29, 2012

・Effects of Immobilization Stress on Serotonin Release in Rat Brain as Determined by in vivo Microdialysis 九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi 46(1), 319-328, 1992-02-25

・“The Warshmallow Test:Mastering Self-Control” Walter Mischel. Copyright 2014 Little, Brown and Company.

・3歳未満児保育から見た親子関係が、青年期前後の人格形成に及ぼす影響について : その2 乳幼児期からの縦断的研究の信憑性と、不登校・神経性食欲不振症の統計資料や臨床ケースからの、3歳未満児保育の問題点 淑徳短期大学研究紀要 53, 39-52, 2014-02-25

・Young Children Develop in an Environment of Relationships National Scientific Council on the Developing Child (2004). Young Children Develop in an Environment of Relationships: Working Paper No. 1. Center on the Developing Child HARVARD UNIVERSITY

・がんばらない&あきらめない対談 鎌田實×今月のゲスト 有田秀穂 セロトニンDojo代表・東邦大学医学部名誉教授・脳生理学者 セロトニン、オキシトシン研究の第1人者が説く「幸せホルモン」の効用とは 「幸せホルモン」の分泌を促すにはおしゃべりやスキンシップが大切 鎌田 實 有田 秀穂 がんサポート 東京 : エビデンス社 12(10)=145:2014.9

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