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湊かなえ&吉永小百合タッグの感動ミステリー映画

大ベストセラー「告白」の湊かなえの原作を、吉永小百合主演で映画化した『北のカナリアたち』。宮崎あおい、満島ひかり、森山未來などの若手演技派も出演した本作は、ミステリーと感動の両方を味わえる作品です。

斎藤 香

執筆者:斎藤 香

映画ガイド

湊かなえの短編を映画化『北のカナリアたち』

『北のカナリアたち』

吉永小百合はなぜか寒い地方が似合う

今回ご紹介するのは、人気作家・湊かなえ原作の短編小説「二十年後の宿題」(「往復書簡」収録)の映画化作品『北のカナリアたち』です。

湊さんの小説は映画化やドラマ化作品が多く、『告白』(松たか子主演)は大ヒットを記録。WOWOWドラマ「贖罪」(小泉今日子主演)も映画監督の黒沢清監督が手掛け、話題となりました。

『北のカナリアたち』の主演は吉永小百合! 日本映画界、永遠の大スター女優です。もう年齢なんて関係ないってくらい、いつまでも美しくエレガントな吉永小百合の魅力は、本作でも十分に描かれております。というか、この映画は吉永小百合ありきの映画であり、彼女自身がトリック(!?)といってもいい作品でもあるのです。

物語は北海道の離島が舞台。この地の小学校に赴任してきた川島はる(吉永小百合)は、6人の生徒たちを受け持つことになります。彼らの歌の才能に気付いたはるは、合唱を通して生徒たちに歌うことの楽しさを教え、つまらない毎日を送ってきた生徒たちの生活をガラリと明るく変えていきます。しかしある日、はると夫(柴田恭平)と生徒たちでバーベキューを楽しんでいたときに悲しい事故が起こってしまいます。はるは追われるように島を後にすることに……。

そして20年後、東京の図書館で働くはるの元に、元生徒の信人(森山未來)が事件を起こして逃亡中という連絡が入り、刑事が聞き込みにやってきます。「なぜ、あの子が!」。はるは、元教え子たちを訪ね歩き、信人に何があったのかを知ろうとするのですが……。

先生と生徒の信頼が一転、崩れていく物語

『北のカナリアたち』

ヒロインのはる先生は生徒たちから絶大な信頼を得ていた。あの事件までは……

『北のカナリアたち』を見る前は、はる先生と生徒たちの心のふれあいを中心に描かれた感動作だと思っていました。それは間違いではなく、はる先生は温かく、離島で暮らす子供たちにとって、希望の星のような存在でした。生徒たちは「先生と一緒にいれば楽しい」「先生は自分たちに新しい世界を見せてくれる!」と信頼を寄せていたのです。でも、バーベキューで起こった事件で、はる先生は図らずも、生徒たちに見せてはいけない大人の世界を見せてしまい、生徒たちを落胆させてしまうのです。

ネタバレになるので、これ以上は書けませんが、多感な年ごろの子供たちとって、はる先生の行為に嫌悪感を持ったのは当然。そして20年後、信人が起こした事件をきっかけに、はる先生は、そのとき生徒たちをガッカリさせてしまった償いとばかりに、信人を探すために奔走します。

はる先生が、大人になった生徒たちと再会し、話を聞いていくうちに、紐解かれていくバーベキューの日に起こったできごとの真相。それとともに、信人の生活もあぶりだされていくのです。「幸せそうだったのに……なぜ?」。過去のエピソードが明らかになることでわかる、生徒たちの子供時代のお互いへの嫉妬心は興味深かったですね。これが作品の謎を取り巻くアクセントとなっていました。

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