本屋大賞受賞作の映画化、主演は岡田准一と宮崎あおい
2012年の夏は、人気シリーズの最新作『BRAVE HEARTS 海猿』が大ヒット。ハリウッド映画を凌駕する勢いで、日本映画を活気づけてくれましたね。確かに夏にピッタリで、公開時期もドンピシャでした。しかし、秋は肉体を使うことより、しっとりと「夜空を見上げてみましょう!」という映画が公開されます。その映画のタイトルが『天地明察(てんちめいさつ)』。本屋大賞第一位となった冲方丁のベストセラーの映画化で、この秋、日本映画の話題作です。主演は岡田准一と宮崎あおい。二人はお互い思いを寄せ合い、やがて夫婦になるカップルを演じます。巷では噂の二人のようですが、それも納得しそうになるほど、とても爽やかでお似合いです。でもこの映画、夫婦の愛の物語はサイドストーリー。メインは主人公である天文学者・安井算哲が日本初の暦を作りだす物語です。
舞台は江戸時代。算術と星の観察に夢中の安井算哲(岡田准一)は、徳川家の後見人に、新しい暦を作る計画を任されます。算術や天文の知識に加え、長年に渡り天体観測を続け、天体の動きを解明しなければなし得ないこの仕事。算哲は努力を重ねて失敗を繰り返しながら、少しずつ暦の謎に近づいて行きますが、暦は朝廷が利権を握っており、公家は新たな暦を握りつぶそうとして……。
新しい暦を作る天文学者と支える妻の清らかな愛
当時はまだ中国の都を中心にして作られた暦を使用していたそうで、経度差という認識がなかったため、どんどん時間がズレていってしまったそう。その原因がわからなかったため、そのまま継続されていた暦を、本作の主人公が経度差に気づき、新たな暦を作りだしたのです。と、書くと簡単だけど、当時の技術ではひたすら観測して測ってメモして、算出しての繰り返し。しかも経度差に気づいてないので、何度も失敗をする算哲。しかし、やはり何かを発見し、創り出す人の粘りはすごい。何年も諦めないで天体観測を続けるのです。それを支えたのが、妻のえん(宮崎あおい)。でしゃばらず、でも、いつも側にいるという宮崎あおいの上品な存在感は、この映画の清涼剤です。何しろ暦作りに苦戦する算哲はボロボロで、演じる岡田准一は役に没頭しすぎたのか、後半かなりやつれてました。メークもあるでしょうが、何やら痩せて行く様子があり、役にかなり入り込んでいたのがわかります。それだけに、算哲がえんの存在に癒されるのはリアルに映ります。宮崎の爽やかな笑顔は周囲をホっとさせるのです。