相場を読むのが投資の神髄という思い込み
株式投資やFXによる為替の取引をする人のほとんどは、「投資とは相場を読むこと」だと思っています。なぜなら「安く買って高く売る」が投資だと考えているからです。確かに株価や為替の騰落を抜きにして投資は考えることができません。しかし、どこまで「相場を読む」に時間を割くのがちょうどいいか、となると、なかなか難しいものです。毎日ネットのニュースをチェックしたり、アナリストの銘柄分析レポートを読んだり、企業の情報開示について吟味したりすればそれなりの時間を要します。リアルタイムで市場の動きを見る必要があれば、9時から3時の間は、他の仕事ができません。
いわゆるトレーダーという人(金融機関でファンドマネージャーをやっている人から、個人投資家としてデイトレやスイングトレードを専業としている人までを含む)は、それが「本職」ですから、投資の分析に時間をかけるのは当然です。普通のサラリーマンが8時間労働をするとすれば、トレーダーの人たちが実際の投資と情報収集や分析に毎日8時間かけてもおかしくないわけです。しかし、「会社員兼投資家」がこれを真似て、相場を読むための時間を費やしてもいいものでしょうか?
本職を見失った個人投資家の末路は悲しい
仮に専業のトレーダーの人たちと同じくらい時間を使うとすれば、会社の仕事が終わってから明日の始業時間までの時間に「相場を読む」努力をすることになります。これでは間に合わないので仕事をさぼって「相場を読む」努力をする人もいます。なんとか仕事も投資も両立しようとがむしゃらにチャレンジするものの、疲労度は高まり、時間は失われ、もしかすると睡眠時間も削る羽目になります。仕事の生産性は下がりますし、プライベートにも支障が出ます。仕事に8時間使い、相場を読むために8時間使えば、家族の不満は高まるでしょうし、独身であっても部屋は乱雑になり友人づきあいは悪くなるはずです。
しかし、相場を読むことに時間をかければ、それに比例して運用のパフォーマンスが上がるという保証はありません。(あればいいのですが!)
ところで、トレードを仕事としている会社員なら運用の失敗が年収に影響することはありません(人事評価に影響するとしても、市場の騰落によるマイナスは一般にトレーダーのマイナス評価ではない)。個人の財産が減らされることもありません。
ところが、同じ会社員であっても、個人投資家の場合はどうでしょうか。運用に時間をかけすぎ、相場を読む努力が報われなかったとき、自分の財産は減少し、おそらくプライベートにおいては家族の不満が残り、あなた自身も不機嫌となることでしょう。
会社員の投資で最悪なのは、仕事に集中できなかったことで会社内の評価が下がることです。本人がどんなに隠しても仕事中の投資はバレます。実際に業績も落ちればボーナスが下がったり、来年度の人事にマイナスの影響もあるかもしれません。年収が下がり投資でもマイナスなんて目も当てられません。
私は、相場は「読めない部分のほうが多い」と考えています。不確定要素も多いですし、市場参加者が増えれば増えるほどその意思を読むことは困難です。個別企業の将来の動向も、当事者でも予想が難しいところ、投資家が短時間でどこまで分析できるかあやしいものです。そもそも、あなたの「読み」が当たったのも実力なのか偶然の結果なのかさえ分析は困難でしょう。
であれば、普通の個人投資家の場合は、会社員兼個人投資家であることを前提とした「相場を読む」方法を考えて投資に臨むべきだと思います。
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