不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

建築協定がある敷地を購入する際のポイント

建築協定によって住環境の改善、向上を図っている住宅地も数多くみられます。このような敷地を購入するときには、どのような注意が必要でしょうか。建築協定制度の仕組みと合わせてみていくことにしましょう。

執筆者:平野 雅之


住宅地

建築協定のある住宅地は落ち着いた街並みを形成していることも多い

住宅地における生活環境の保護や、景観の向上・保全など、住民意識の高まりから「建築協定」を結ぶケースも徐々に増えてきています。気に入って購入を決めた敷地がたまたま建築協定区域だったという場合だけでなく、あえて建築協定がある敷地を選ぶような場合もあるでしょう。もっとも、建築協定がある敷地だからといって、必ずしも良好な住環境を実現できている区域ばかりだとはいえませんが…。

今回は建築協定制度の仕組みと、その敷地を購入するときに注意したいポイントなどについてみていくことにしましょう。なお、建築協定制度を運用するうえでの詳細については、市町村ごとの条例によって異なる場合もあります。


建築協定とは?

住宅などの建築にあたっては、都市計画法建築基準法に基づき、用途地域建ぺい率容積率をはじめとするいくつかの基準が設けられています。しかし、これらは一般的な最低限の定めであり、地域の実情や特性が反映されたものではありません。

そこで良好な住環境の形成や改善などを目的とし、必要に応じて建築物に関する制限を建築基準法の規定に上乗せ、あるいは詳細化できるようにしたものが「建築協定」です。これは法による一般的な建築制限を強化するものであり、逆に制限を緩和する内容は認められないことになっています。

建築協定が定められている区域は、数区画単位の小さなものから1,000区画を超えるような大きなものまでさまざまです。また、住宅地だけではなく、商店街の活性化や魅力あるまちづくりなどを目的として商業地で定められる建築協定、あるいは生産環境の維持や防火対策、環境保護などを目的として工業地で定められる建築協定などもあります。

建築協定を締結するためには、その市町村で建築協定についての条例が定められていることが前提となります。そのうえで、住民同士の話し合いによる「建築協定書」を作成し、特定行政庁の認可を受けなければなりません。この認可によって法的な効力が生じ、認可の公告の日以降にその土地の所有者などとなった人に対しても、その効力が及ぶことになります。ちなみにこれを「第三者効」といいますが、この「法的な効力」とは民事上のものであり、建築基準法などによる法的な拘束力ではありません。

建築協定書で定められる主な事項は次のとおりですが、その内容は建築基準法の規定に違反するものではないこと、さらに土地や建築物の利用を不当に制限するものではないことが求められています。

□ 建築協定区域
□ 建築物に関する基準(敷地、位置、構造、用途、形態、意匠、建築設備)
□ 建築協定の有効期間
□ 協定違反があった場合の措置

〔敷地に関する制限の例〕
・ 敷地の最低面積を150平方メートルとする
・ 敷地の分割はできないものとする
・ 敷地の地盤面の変更はできないものとする

〔位置に関する制限の例〕
・ 建物の外壁から道路境界線までの距離は1.5m以上とする
・ 建物の外壁から隣地境界線までの距離は1m以上とする

〔構造に関する制限の例〕
・ 木造または鉄骨造に限るものとする
・ 鉄骨造、鉄筋コンクリート造など耐火構造とする

〔用途に関する制限の例〕
・ 一戸建て専用住宅または医院兼用住宅に限るものとする
・ アパート、マンションおよび店舗を禁止する

〔形態に関する制限の例〕
・ 建築物の高さは9m以下、軒の高さは7m以下とする
・ 建ぺい率は40%以下、容積率は80%以下とする
・ 地階を除く建物の階数は2以下とする

〔意匠に関する制限の例〕
・ 屋根や外壁の色調は原色を避け、周囲の景観と調和させるものとする
・ 敷地面積の10%以上を緑化するものとする
・ 外構は生け垣にするものとする
・ 看板や広告の設置は禁止する

建築協定を締結できるのは、敷地の所有者および建築物の所有を目的とした借地権者です。借地権の目的となっている敷地では、その借地権者の合意だけで足り、その敷地の所有者(底地権者=地主)の合意は不要となっています。

建築協定に合意しなかった所有者または借地権者の敷地は建築協定区域から外れるため、その効力が及びません。そのため回りを建築協定区域に囲まれながら対象外となった敷地が点在している場合もみられます。このような敷地を「穴抜け地」と呼ぶこともあるようです。

また、建築協定は建築物およびその敷地に関する基準を定めるものであり、建築物を伴わない土地の利用方法や空き地の管理などについて規制することはできません。

なお、都市計画法による「地区計画」は行政側によって定められた法的拘束力を持つものであり、廃止や変更がないかぎりその適用期間も永久的です。それに対して建築協定は住民側の自主的な発意によって定められ、有効期間の定めがあることが地区計画との大きな違いの一つです。


1人協定とは?

土地の所有者(借地権の目的となっている土地を除く)は、その土地の区域を対象として、1人で建築協定を定めることもできます。これを「1人協定」といい、昭和51年の建築基準法改正により可能となった制度です。1人協定の場合は、認可を受けただけでは効力がありません。認可の日から3年以内に協定区域内の土地の所有者が2人以上となった時点で、建築協定としての効力が生じることになっています。

実際には、ある程度の規模をもった開発分譲地のデベロッパーが「1人協定」を作成し、それを販売することによって建築協定が有効となる事例が多いでしょう。100区画を超えるような比較的大規模な建築協定は、もともとデベロッパーによる「1人協定」だった場合が多いだろうと考えられますが、現時点で効力のある全国の建築協定区域のうち約半数は、この「1人協定」によって認可されたもののようです(国土交通省資料より)。


建築協定の更新および廃止など

建築協定の有効期限は任意に定めることができます。一般的には10年とする事例が多く、期限の満了時に制限の内容を見直したうえで更新されます。もちろん合意に基づき、期限満了をもって更新せずに終了することも可能です。

有効期限が満了する前に建築協定を廃止しようとする場合には、協定の対象となっている敷地の所有者および借地権者の過半数の合意に基づいて特定行政庁に申請をし、その認可を受けなければなりません。また、協定の内容を変更しようとするときは、変更後の内容に全員が合意したうえで、改めて認可を受けることが必要となってきます。

なお、建築協定の有効期限内は本人の意思だけで協定から脱退することはできません。1人の敷地所有者または借地権者が脱退しようとする場合でも、協定区域内の敷地の所有者等の全員の合意が必要となります。


建築協定がある敷地を購入するときの注意点など…次ページへ


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