歯・口の病気/歯痛・歯の異常

口内・歯の手術で多いのは?歯周外科手術や抜歯など

【歯科医が解説】手術や外科治療と聞くと身構える方が多いと思いますが、歯科治療は「口内の手術」とも言えます。抜歯や歯ぐきや骨の形を整えたりする歯周病治療はいずれも手術です。臨床上での体験を元に、歯科で行う手術を頻度順にご紹介します。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

歯の手術など、口の中の手術

歯の手術など、口の中の手術


口の中の手術といってもすぐにイメージできる人は少ないかもしれません。しかし病院では、意外に日常的に行なわれていたりするのです。そこで今回はそんな口の中の手術を、ガイドの臨床上の体験を元に頻度別順位でご紹介します。
 

第5位:根先端切除術……横から根の先端部を取り出す手術

骨の中に埋まっている状態のまま、横から穴をあけて根の先端部分をおよそ2~7mmほど切断して取り出す手術です。

■手術前の状況
・歯の根の先にレントゲンで黒い影がある。
・歯ぐきに「おでき」のようなものができて、押すと膿が出る。
・硬いものを噛むと痛い。
・根の治療を繰り返しても治りが悪い。

■手術方法
上の前歯の部分のおできの周辺部分の歯ぐきを切開してから、病気によって骨の内部にできた空洞などを利用して、病気の原因である根の先端部分をカットして取り出します。

■手術段階までの経過
根の先端に膿が溜まる病気はときどき起こります。通常はすでに取り付けてある被せものや土台を外して根の治療を行ないますが、土台の本数の多いブリッジでは1本の歯の治療に全てのブリッジを外すことは困難なこともあります。

その場合、特に上の歯の前歯などであれば、被せものは外さずに、歯ぐきから根の先端をカットして取り出したりして、治療できることがあります。さらにしっかり根を治療した(している)のに、治りが悪く再発したような場合などにも行なわれることがあります。
 

第4位:歯根嚢胞摘出術……液体の入った膜を取り出す歯の手術

根の先端の骨の中にできた液体などが入った膜のようなものを取り出す手術です。

■手術前の状況
・根の先端部にレントゲンで比較的大きい丸い影(直径1cm以上)がある。
・歯の神経は死んだ状態のため初期は無症状で次第に大きくなっていく。
・硬いものを噛むと痛いときがある。

■手術方法
歯の根の先端部分にできた嚢胞(のうほう)と呼ばれる、骨の内部に液体などが溜まった袋を取り除きます。

前歯では根先端切除術と同時に行なわれることもあります。歯の先端の切断と周囲にある液体などが入った袋を同時に取り出します。また歯を抜歯した直後に骨に開いた穴から器具を入れて、根の先端部分できた嚢胞を取り出すこともあります。

■手術段階までの経過
一般的には根の先端に黒い影があり、膿や液体が溜まっている状態があると、歯に穴をあけた根の治療を行なうことで次第に小さくなり、治ることがほとんどですが、治療しても治りが悪いことがあります。

その後、もし可能であれば根先端切除術で歯を残し嚢胞を摘出、それも困難な場合は、抜歯してから嚢胞を摘出という順番が一般的です。(※歯根嚢胞は、虫歯がなくて自然にできたものですが、臨床的には、虫歯が原因で出来た膿が溜まった袋も同じように扱うことが多いようです。)
 

第3位:歯周外科手術……歯ぐきを切開して歯石等を目視状態で取る手術

進行した歯周病になるとときどき行なわれる、歯ぐきや骨の形を整えたり、歯ぐきを切開してから歯ぐきの奥に隠れている歯石などを目視状態で取る手術です。

■手術前の状況
・歯がグラグラして、歯ぐきから出血する。
・歯ぐきを押さえると歯の周囲から白い膿が出る。
・以前から長期間、歯肉の炎症を放置。

■手術方法
スケーリング(歯石とり)は、歯ぐきの内部に歯石がある場合、目で確認しながらではなく、術者の感覚を頼りに行ないますが、進行した歯周病では、取り残す可能性が増加します。

このため歯ぐきを切開して見やすい状態にして歯石を取り除くことを目的として手術が行なわれます。さらに術後の歯ぐきの安定状態を維持しやすくするために歯ぐきや骨の形を整えます。また溶けてしまった骨の再生を促す膜を設置したりします。

■手術段階までの経過
歯周病は早期であれば、歯石を取るスケーリングなどを行なうだけで改善するため、手術する必要はありませんが、中程度~重度になると歯石の量も多く、取り残しのリスクや治療期間の短縮に役立つため、歯周外科手術を行なうことがあります。
 

第2位:口腔内消炎手術……歯に溜まった膿などを切開・穿通で出す

ぐきが腫れて、膿を出して楽になった経験がある人も多いのでは。 腫れた時に良く行なわれる、歯ぐきや骨の内部に溜まった膿などを切開や穿通で出す手術です

ぐきが腫れて、膿を出して楽になった経験がある人も多いのでは。 腫れた時に良く行なわれる、歯ぐきや骨の内部に溜まった膿などを切開や穿通で出す手術です


腫れた時によく行なわれる、歯ぐきや歯の内部に溜まった膿などを切開や穿通で出す手術です。

■手術前の状況
・歯ぐきが短期間でだんだん膨らんできた。
・鏡で顔が腫れたようになった。
・歯が浮き上がって噛むとひどく痛む。

■手術の方法
歯ぐきであれば、腫れで膨らんだ部分にメスで切開して、内部の膿を出し洗浄します。骨の内部の場合は、歯の被せものなどを取り外して、根の内部の細い穴を広げて根の先まで穴を穿通させ、奥に溜まった膿を出します。

■手術段階までの経過
進行した歯周病や親知らずの炎症、歯のヒビや虫歯、歯の根の先に溜まった膿が主な原因で、急に短期間で膿がどんどん溜まってくる状況(急性症状)になってしまった時に行なわれます。急激に溜まってしまった膿を出すことで、消炎の手助けをします。あくまで根本的な治療ではなく応急処置です。
 

第1位:抜歯……口の中で最も頻繁な手術

口の中の手術で最も頻繁に行なわれている、皆さんもご存知な歯を抜く手術です。

■手術前の状況
親知らずの炎症、大きな虫歯、重度の歯周病、歯のヒビ割れなど。

■手術の方法
歯を抜歯します。

■手術段階までの経過
現在では、歯を保存することが最重要視されているため、どの病院でも簡単には抜歯は行ないません。抜歯に至るまでありとあらゆる方法で保存できないか、検討されるはずです。しかしどんなに手を施しても、抜歯しなければならない状況があるのも事実です。この場合、ある意味で歯の寿命として受け入れなければなりません。


いかがでしたか? これらの手術の前には、最低でも体調、全身的な病気の有無、現在の投薬内容などを知らせるようにすると安心です。

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