マーケティング/マーケティング事例

銀座争奪戦!なぜファストファッションは銀座なのか?

3月30日、銀座に低価格カジュアルウェアのジーユーの大型店がオープンしました。ここ数年、ファストファッションは次々に銀座に進出を果たしています。もともと、高級ブランドや百貨店のイメージが強かった銀座に何が起こっているのか?そのマーケティング戦略の背景に迫ります!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

銀座に相次ぎ出店するファストファッション
 

ファストファッションの銀座進出

次々に銀座にファストファッションが進出!

3月30日、低価格のカジュアルファッションを手掛けるジーユーが銀座に大型店をオープンさせました。3月16日には、一足先に“兄貴分”のユニクロも同社では世界最大級の売り場面積を誇る銀座店を華々しくオープンし、オープン記念セールには多くの人が押し寄せました。

ここ数年、2003年4月に世界のファストファッションをリードするZARAが銀座店をオープンさせたのを始めに、2005年10月にユニクロ、2008年9月にH&M、2009年12月にアバクロンビー&フィッチ、2010年4月にフォーエバー21、2011年2月にはGAPと世界の名立たるファストファッションが銀座に集結します。

それでは、ファストファッションは、今なぜ銀座を目指すのでしょうか?

ファストファッションとは?


そもそも、ファストファッションとはどのようなビジネスなのでしょうか?

ファストファッションのビジネスモデルをここで明確化していくことにしましょう。ファストファッションとは、消費者にとっては低価格で手軽に購入ができるファッションであり、企業側では低価格を実現するためにSPA(Speciality Store Retailer of Private Label Apparel)と呼ばれるビジネスモデルを採用しています。SPAとは日本語で『製造小売業』とも呼ばれ、商品の企画から生産、販売までを1社で全て賄うことで、流行のファッションを短期間で生産し、売り切ることができるというメリットがあります。ユニクロなどは、低価格のファッションということで、当初は郊外を中心に出店していましたが、1998年11月にオープンした原宿店の成功をきっかけに都心への出店を加速させていきます。

ファストファッションの銀座出店の背後に隠れる戦略とは?


今やユニクロを始めとして、世界でNo.1のファストファッション企業であるZARA、最先端のファッションが手軽な値段で購入できるフォーエバー21など、多くのファストファッションブランドがこぞって銀座に出店しています。

この背景には、景気の低迷による日本一高いと言われていた銀座の賃料が、低価格のファストファッションでも十分にペイできるだけの水準に落ち着いてきたということも挙げられるでしょうが、その他にもマーケティング戦略的な狙いがありそうです。

まず一つ目はブランドイメージの向上でしょう。

銀座は言わずと知れた日本でも最も高いブランドイメージを誇る場所です。数々のブランドショップが立ち並び、道行く人々も最先端のファッションに身を包んでいます。このような銀座に出店することは、それだけでブランドイメージの向上につながり、「ファストファッションは低価格のファッション」というイメージから脱却することも可能になるというわけです。

この“場所のブランドイメージを借りる”というプレイス戦略は、これまで数々の企業にマーケティング的な成功をもたらしてきました。

たとえば、日本マクドナルドは1971年、三越銀座店の1階に1号店をオープンさせます。アメリカの本社からは、アメリカの成功事例にならって郊外に1号店をオープンさせよという指示が出ていましたが、創業者の藤田社長はハンバーガーという当時の日本では馴染みのないファーストフードを日本に定着させるにはインパクトのある何かが必要だと考え、日本の流行の最先端であり情報発信基地ともなっていた銀座の一等地に1号店をオープンさせたのです。この藤田社長の狙いは当たり、日本マクドナルドは銀座に出店することにより、短期間でブランドが日本中に知れ渡って今日の大きな成功の礎を築いたのは周知の事実でしょう。

このように、現代のファストファッションも銀座に出店することにより、ブランドイメージを高め、売上アップを図ろうという戦略が背景にあるということなのです。

また、二つ目は同業店が立ち並ぶことによる集客力のアップでしょう。

今や銀座に行けば、世界をリードするファストファションの店舗が立ち並んでいます。高級ブランド店や百貨店などを含め、銀座はさながら一大ショッピングモールの様相を呈しています。もともと、銀座は収入の高い年配の消費者が訪れる街というイメージがありましたが、従来の銀座の消費者層はファストファッションのターゲット顧客ではありません。やはり、メインターゲットはより若い消費者層といえるでしょう。

そこで、いくら世界でも有数のファストファッションブランドが進出しても、1店舗だけでは人の流れを変えることは難しいかもしれません。ただ、同じようなお店が数多く進出することで、ターゲット顧客に強烈なアピールとなり、人の流れを変えることもできるようになるのです。銀座周辺では、2007年にJR有楽町駅前にオープンした複合商業施設「有楽町イトシア」に若者に人気の丸井が出店したあたりから、より若年層が訪れやすい街として変貌を遂げてきました。

このように銀座の街並みは時代と共に大きく変わってきていますが、日本の最先端であり、情報の発信基地というポジションは従来と何ら変わることがありません。

今後世界でも指折りのファッションブランドが集まり、銀座という戦場でどのような戦いが繰り広げられるのでしょうか?

グローバルレベルでの競争を占ううえでも重要な戦場となることは間違いないでしょう。
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