かつて台所は家の北側の位置にありました。それが現在では陽のあたる明るい場所に位置するようになりました。台所が「ケ」から「ハレ」の舞台に上がってきたのです。あらためて台所や食のあり方をひもとき、さらなる台所のあり方を考えてみましょう。
台所は食をつくる楽屋裏
かつて台所は家の北側の位置にありました。それは陽のあたる場所では食料が腐りやすいという理由と、台所は食事のための準備スペースと考えられてきたからです。つまり楽屋裏は人の眼にさらすものではないということだったのです。
しかしながら1970年代前半に外国製、後半には国産製のシステムキッチンが登場すると薄暗く寒々しい場所だった台所は間取りを考える上でとても重要な位置に配置されるようになりました。台所が「ケ」から「ハレ」の舞台に上がってきたのです。あらためて台所や食のあり方をひもとき、さらなる台所のあり方を考えてみましょう。
食で人生は楽しまないという考え方
日本にはハレとケという伝統的な考え方があります。かつて住まいの中でのハレは玄関と客間ぐらいで、それ以外はすべてケのスペースに閉じ込められていました。もちろん台所もケのスペースです。
そして食事中におしゃべりはするなと言われてきました。それは調理は食事のためであり、食事は生きるためのものであり、食事そのものを楽しむことはつつしみのないとの儒教的な考え方があったからです。
食事として保たれる生命もそれ自身が目的なのではなく、その生命は公的なことに役立てるものであり、人生を楽しむという考えにはならなかったのです。
食で人生を楽しむという考え方
戦後はマイホームというフレーズに代表されるように家族の生活が社会や国家のためというのではなく、個々の楽しみや喜びというものに価値を置くようになってきました。家族とは一言でいえば食をともにする人なのです。したがってその場所は陽あたりのよい南側や東側などに面し、準備するスペースなどの隠れた場所ではなく、家族に開かれた共有するスペースの場とするのがふさわしいのです。
つまりハレ的な、祝祭的な要素をもった空間づくりです。
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