住まいのプロが提案「イエコト」/納得できる『住まい選び』のレッスン

ありがちな住宅の衝動買い 後で後悔しないために

賃貸、分譲、定期借地、注文、マンション、一戸建て、コレクティブハウス、タワーマンション、京町家、都心、郊外ニュータウン、里山など……私は、社会人になってから15回転居し、16軒の家に住んだ経験があります。私と一緒に“自分の住みたい家のイメージづくり”について考えてみませんか?

大久保 恭子

執筆者:大久保 恭子

これからの家族と住まいガイド

これが典型的な衝動買いのパターン 

モデルルーム

モデルルームの雰囲気が気に入って、ついつい衝動買いしてしまった……なんて話はよく聞きますね。

数千万円もする買い物だからといって、誰もが慎重にことを進めるとは限りません。私のかつての職場の同僚は、週末のまとめ買いにスーパーへ出かける途中で、マンションのモデルルームに遭遇。出産間近の妻に促され、冷やかし程度の気持ちで見学に入ったところ、出てきたときには、既に申込書に必要事項を記入済みでした。

何故、彼は即決したのでしょうか。以下は私とのやりとりです。

:「即決するなんて、どこがそんなに気に入ったの?」
同僚:「オープンカウンターのキッチンは使いやすそうだし、お風呂もすぐにお湯がでる。ウォークインクロゼットや下駄箱など収納もたくさんあって、今よりずっと暮らしやすそう。リビングにはソファも置けて素敵!と妻が超乗り気になってしまってね。」
:「今どきのマンションならオープンカウンターキッチンはあたりまえ。2DKの社宅にいたら2LDKの間取りは新鮮かもしれないけれど、分譲マンションとしては、普通。」
同僚:「そろそろ家賃補助の期限も切れるし、2DKの賃料並みで買えるのが、いい。」
:「それは今どきのマンション販売会社の常套句。もう少し都心に近くて、会社にも近いところで、家賃並みで買えるエリアはもっとあるはず。」
同僚:「妻も喜んでいるし、もうすぐ子供も生まれるし。今が我が家の買い時なんだよ。」

私の元同僚に似た人は、案外たくさんいそうな気がします。あなたもそのうちの一人ではありませんか?

衝動買いをしてしまうのはこんな人 

このように、衝動買いしてしまう人には、ある特徴が見られます。まず、家には寝に帰るだけ、という仕事人間です。こういう人は朝から深夜までオフィスが主たる生活空間のため、自宅での暮らしが希薄です。生活をしていないので、間取りの使い勝手の悪さ、キッチン浴室など水回り設備の古さ、収納スペースの少なさ、友達を呼べない狭さなど、ほとんど何も気になりません。もっとこうすれば住みやすくなる!という具体的な住まいへの要望など持ちようがないのです。仕事では常に顧客ニーズを追求していても、自分の住まいに対するニーズなど全く考えたことがない、という人です。住まいは暮らしの器なので、暮らしがなければ、器もどうでもいい、ということになってしまうのです。

夫婦の場合、よく住宅購入のイニシアチブは夫ではなく妻がとるといわれるのは、もっぱら家事の担い手は妻であるため、家の中のことを知りつくしているからなのです。昨今は専業主婦より、共働き夫婦やシングルが増え、女性といえども家事から遠ざかった仕事人間も珍しくありません。女性だからといって衝動買いから免れる、ということにはならないようです。

また、日頃住まいに関心がないため、住宅関連の雑誌や書籍にも縁がありません。モデルルームや、モデルハウスに行く機会もないので、いま現在、どんな住まいが標準的か、どんな住まいが進歩的か、といった住宅の水準つまりモノサシを持っていません。もちろん、高い、安いといった相場感もありません。何をどう選んでいいのか分からない人の前に突然、今より広くて、便利そうな設備とおしゃれなインテリアが並ぶモデルルームが現れ、妻に欲しい!と切望され、家賃並みで買える!と営業マンに説得されれば、迷う隙も与えられず、即決!という道を選んでしまっても不思議ではありません。

衝動買いで後悔しないためには・・・次のページ
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