穏やかな青空の下で育つ美味なるフルーツ
稲刈り間近の田んぼを走るJR津山線。1時間に1本程度というローカル線に旅情をいっそうかきたてられます。「晴れの国」だけあって、この日も快晴でした
岡山北商工会の瀧本三枝さん(グルメ番長)。会話の隅々に「おかやまLOVE」なオーラがビシバシあふれていました
「マスカット・オブ・アレキサンドリアが食べごろですよ! そのうえ、地元のシェフが作った白桃スープ試作品が賞をとったんです。ぜひ試食しにいらっしゃいません?」と連絡をくださったのは、岡山北商工会の瀧本三枝さん。食べ歩きが大好きで、商工会内ではグルメ番長的存在です。
10月中旬、赤く色づいた山中にぽこんと広がる岡山空港に降り立ちました。この空港があるのが、岡山市北区。2009年の市町村合併で誕生した区で市最大。岡山県は晴天率が高いことから、「晴れの国」として知られています。
空港から商工会へと向かう道の車窓は、ゆったり流れる旭川、田んぼの中をゆくJR津山線……。岡山城やJR岡山駅といった中心部とは全く違う田園風景に驚きます。岡山市北区、広いです。
マスカット研究会「スマイル」代表の金光裕子さん(中央)と奥様方。現在会員は13名。なんとも陽気な笑い声がぶどう棚に響いていました
まずは、岡山特産のマスカット・オブ・アレキサンドリア(以下、マスカット)の農園へ。ぶどう農家の奥様たちの集まり「スマイル」の会員が迎えてくださいました。ついついマスカットに見入っていると、代表者の金光裕子さんが「これがいいわよ」と木からパチンッと一房摘んでくれました。ハリがあってジューシー、そして気品のある香りとやさしい甘さ……。このみずみずしさと高貴な香りが、果物の女王と呼ばれるゆえんなのです。
晴れに映えるマスカット。丁寧に育てられ、まさしく「女王様」という威厳のある実のつけよう
さらにスマイルでは、手摘みしたマスカットを使ったフルーツソースや種に含まれる有効成分を活用した石けんなども作っているのです。「農家の妻の悩みは共通。栽培方法、子育てまで話すことはたくさんあるわね」と、ふふと笑いながら話す金光さん。おいしいぶどうは奥様方の努力があってこそなのです。
「スマイル」が企画・製作したマスカット製品。晴れの国女王の石けん800円。マスカットソース「みつの味」550円。石けんはしっとりとした洗い上がり。ソースはヨーグルトのほか、ドレッシングのベースにもばっちり合います
常識を覆す!? 岡山でドラゴンフルーツ発見!
白はさっぱりとした甘さ。種のぷちぷち感が楽しい。赤はやわらか、濃厚な甘さ、そして舌触りでとりこになりそう
スコレーの大内巌さん。「ドラゴンフルーツの栽培を息子が熱心にしているのが親としてはうれしいですね」と。この日、不在だった息子さん(26歳)はかなりのイケメンという噂
岡山産ぶどうの実力に驚きつつ、次のフルーツ農園へ。な、なんとドラゴンフルーツの生産者がいると聞いて温室ハウスを訪ねてみると、一面に蘭の苗が並んでいました。
スコレー社長、大内巌さんの名刺の肩書は「洋蘭栽培家」。美しい響き。でも、果物農家ではない……?
「ドラゴンフルーツは蘭栽培技術を応用して育てているんです。これからご案内しますよ」と。ドラゴンフルーツというと沖縄や南国のイメージがありますが、最近は本州でも栽培が始まっているそうです。
隣接のハウスに移動すると、ありました! ドラゴンフルーツ。サボテンの仲間だけあって、葉はまさにサボテン。そこに鮮やかなピンクの果実がなっています。3年前から本格的に栽培を始めたそう。しかも完全無農薬栽培。早速切っていただきました。
産地で生産者自ら手渡してくれる果実をその場で味わう。なんと幸せなことでしょう。白と赤、贅沢にも食べ比べ。甘さと食感が違うのがおもしろい。ちなみに、黄色い果肉のものもあり、とってもおいしいのだとか。食べたかったなあ。空港も近いので、そのまま買って帰って夕飯のデザートに……なんていうことも可能。ドラゴンフルーツ、新たな岡山みやげになるかもしれませんよ!
ドラゴンフルーツティー果潤。ピンクがかったルビー色が魅力的。ペタシアニンというポリフェノールの一種。ビタミンCが豊富で美肌も期待できそう!?
大内さんは、ドラゴンフルーツの茎などを低温乾燥させたお茶「果潤」も開発中。見た目は鮮やかですが、ローズヒップほど酸味やクセがないので、ハーブとブレンドしたりオリジナルのフレーバーと合わせてもよさそう。近日中に発売予定。1缶20袋入りで1000円(予定)と、なかなかお買い得です。
田んぼのなかのフレンチレストランで、芳醇な白桃スープを堪能
清水白桃ならではの甘みやふくらみを上手に引き出した存在感あるスープ。初めての味!
岡山原産の清水白桃。表面は白く、ほのかに赤みがさした上品な姿は、白桃の最高品種とも称賛されています。皮をむくとクリーム色の果肉が現れ、すぐに果汁がしたたってくるほどジューシー。繊維が少なく、とろけるような舌触りが魅惑の味わい。樹上で熟すのを待つことで蜜のような甘さになるのです。なかでも岡山市北区の一宮産が最高峰とされ、セレブリティの贈答品として指名されることも多い逸品。旬は7月~8月のごく限られた期間のみで、大玉のものは400グラムを超えるほど! 1個1000円以上はするという高級品です。
ぶどうの木舎のシェフ、薮原さん。野菜も自家栽培するなど食材へのこだわりはつきない
この一宮産清水白桃をフランス料理に生かせないかと考えたのが、レストラン「
ぶどうの木舎(もくしゃ)」のシェフ、薮原正雄さん。白桃をデザートではなくスープに仕立てたのです。シロップ漬けにした桃をピューレにして加えていますが、デザートにならないよう特に気をつけたといいます。
「うちはレストランですから、コースメニューの一品として作りたかったんです」。確かに白桃ならではの甘みやふくらみはあるのですが、余韻を残しながらも次の料理への期待をふくらませる味。「白桃のほかに使っているのは、チキンブイヨン、たまねぎ、生クリームなど基本的なものですよ」と言いますが、清水白桃が持つポテンシャルをうまく引きだしています。
薮原さんご一家。父親の秀雄さんが岡山市内のホテルを退職後、こちらに店舗を構えたとのこと。正雄さんの奥様は接客、社交的な秀雄さんの奥様が広報や営業を担当。地元に愛される名店です。日替わりランチは1050円
レシピは完成しており通販も始める予定ですが、お店でコースとしていただくのがおすすめ。なぜなら、「ぶどうの木舎」は山と海に恵まれた岡山県産食材をふんだんに使い、無添加で作る料理で支持されている人気店なのですから。薮原さん一家の心づくし料理が味わえますよ。この日はゴボウのスープもいただきました。しっかりと土の香りとゴボウの力を感じました。薮原さん、間違いなくスープ作りの名手です。
もう、お気づきになりましたか? 今回ご紹介したフルーツのキーワードは「樹上完熟」。通常は流通の都合で傷まぬよう早めに摘み取ってしまいますが、今回ご紹介した農家さんたちは、もっともおいしくなるときを見極めて収穫しているのです。だからこそ、ご当地で味わうことに価値があるのです。
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