不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

建ぺい率、これだけ分かれば万全の基礎知識(2ページ目)

建ぺい率の制限は、住宅を検討するときにぜひ知っておきたい基礎知識の一つです。しかし、建築や不動産に接していないとなかなか分かりづらい部分も多いでしょう。建ぺい率について、図解を交えながらなるべく分かりやすく解説してみました。(2017年改訂版、初出:2011年6月)

執筆者:平野 雅之


建ぺい率の制限が異なる区域にまたがる場合は?

建築をしようとする敷地が、指定建ぺい率の異なる2つ以上の区域にまたがっている場合には、それぞれの区域ごとに建築面積の限度を計算して、その合計数値が敷地全体に適用されることになります。

建築面積の合計を敷地面積で割れば、敷地全体に対して適用される建ぺい率となり、これを「加重平均」ともいいます。この場合、加重平均で求められた建ぺい率の限度以内であれば、実際に建てる建築物の配置は制限されません。
建ぺい率の制限が異なる区域

同じ敷地に2つ以上の建物がある場合は?

同じ敷地の中に、母屋と離れ、自分たちの住宅とアパートのように2つ以上の建物がある場合には、その建築面積の合計によって建ぺい率の制限を受けます。

建ぺい率の限度いっぱいの住宅を建てた後に、別棟の車庫や子供部屋などを造ろうとすれば、建築違反にもなりかねないので注意しなければなりません。


防火地域内における建ぺい率の緩和

都市計画によって「防火地域」(用途地域とは異なる規定で、用途地域に重ねて指定されます)に指定された区域で、「耐火建築物」を建築する際には建ぺい率が緩和されます。

商業地域(指定建ぺい率がすべて80%)、および近隣商業地域・第1種住居地域・第2種住居地域・準住居地域・準工業地域で、もともとの指定建ぺい率が80%の場合には、これが「制限なし」となり、一切の空地を設けずに敷地いっぱいの建築をすることが可能です。

ただし、その場合でも隣地などとの「相隣関係」は別問題として考えなければなりません。

その他の地域(指定建ぺい率が30%~70%の地域)で「防火地域」に指定されている場合には、一律10%が加算されます。もっとも、実際に「防火地域」の指定を受けるのは大半が商業地域なのですが……。

なお、敷地が防火地域とそれ以外の地域(準防火地域または指定なしの地域)にまたがっている場合、「その敷地内の建築物をすべて耐火建築物とすれば、その敷地はすべて防火地域である」とみなして建ぺい率の緩和を受けることができます。

ただし、同じ敷地内に複数の建物があるとき、1つでも耐火建築物でないものがあればこの緩和は不適用となります。

この場合に、敷地にかかる防火地域の面積割合についての規定はありませんから、敷地のうちのほんのわずかな一部でも防火地域にかかっていれば、敷地全体を防火地域とみなすことができ、建築する耐火建築物の配置についても特段の制限は受けません。


特定行政庁が指定した角地などにおける10%の緩和

一定の角地などにある敷地は、建ぺい率が10%加算されます。上記の防火地域における緩和と両方の条件を満たせば、+20%ということになるでしょう。

ただし、角地などにおける建ぺい率の緩和は特定行政庁ごとに基準が異なり、自治体の条例などによって具体的な適用要件が定められています。

適用要件には、2つの道路が交わる角度や、敷地と道路が接する長さの割合、敷地面積の上限などがあり、角地であれば必ず緩和されるということではありませんから注意が必要です。

両面道路の場合や、片方が公園や河川などに接する場合に「角地に準ずるもの」とみなして緩和するかどうかなども、特定行政庁によって異なります。
角地における緩和
また、敷地のセットバックが必要な狭あい道路に接するときには、「セットバックをして道路状に整備をしなければ、建ぺい率の緩和を認めない」という場合もあるでしょう。

なお、詳しい説明は控えますが、「壁面線の指定」などがある敷地で特定行政庁の許可を受けたときには、建ぺい率の制限そのものが適用されない場合もあります。


建ぺい率は意外と大きい?

敷地が狭くなりがちな大都市部では、少しでも建ぺい率が大きな敷地のほうがよいと考える人も多いでしょう。高額な土地の有効利用のためにも、50%よりは60%、60%よりは70%の敷地を考えたいところです。

しかし、建ぺい率が大きな敷地に上限ぎりぎりまでの住宅を建てれば、庭はほとんど諦めざるを得ません。下の図はある建ぺい率による建物のイメージを表したものですが、いったい何%だと感じるでしょうか?
建物の大きさのイメージ
実はこれで建ぺい率60%なのです。これが70%になれば、建物の周囲に細長い空地が残るだけですから、小さな庭でも造ろうとするなら、逆に建ぺい率は50%~60%程度あれば十分だともいえるでしょう。


建ぺい率100%の建物は存在しない

防火地域による建ぺい率の緩和では、もともとの指定建ぺい率が80%の場合に「制限なし」となりますが、これを「100%」あるいは「10分の10」として解説している場合もあります。

ところが、住宅にかぎらず建物の建築面積や床面積は「壁や柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」となっています。つまり、壁などの厚さの半分は面積に含まれませんから、そのぶん建物の外周で囲まれた面積よりも建築面積のほうが小さくなります。

つまり、敷地のすべての境界線に沿って1ミリの隙間もなく建物を建てたとしても、建ぺい率は100%に届きません。

逆に建ぺい率100%の建物を建てようとすれば、外壁の厚さの半分に相当する面積分を「越境」しなければ実現できないことになります。よほどの事情がないかぎり、建ぺい率100%の建物は存在できないことになるでしょう。


関連記事

不動産売買お役立ち記事 INDEX

水平投影面積とは?
容積率、これだけは知っておきたい基礎知識
都市計画法と都市計画区域の基礎知識
市街化区域と市街化調整区域の違いを知る
住宅購入者は必須! 用途地域の基礎知識
特別用途地区、特定用途制限区域とは?
自治体ごとに異なる、高度地区の制限とは?
高度利用地区、特定街区とは?
特例容積率適用地区と高層住居誘導地区
防火地域と準防火地域の基礎知識
景観地区とは?
風致地区による住環境の保護とは?

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます