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災害時に労災保険は適用される?

病気や怪我の際の公的な保障というと、健康保険や厚生年金を思い浮かる人が多いと思いますが、労災保険も強い味方です。病気や怪我の治療の際や休業補償についても非常に手厚い内容となっています。労災保険は仕事中や通勤途中の怪我や病気、死亡の際に給付を受けることができます。では、仕事中に災害を受けた場合に労災保険は適用されるのでしょうか?

和田 雅彦

執筆者:和田 雅彦

年金ガイド

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病院での治療時に使える保険は、健康保険だけではない!?

病気や怪我、死亡の際の公的な保障というと
  • 医療(病気や怪我の治療費)……健康保険、国民健康保険
  • 死亡……遺族基礎年金、遺族厚生年金
などを思い浮かべることと思います。
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通勤途中に労災適用は「経済的、合理的な経路」であるかどうか。なお会社に届けている経路でないと認められないわけではないことも


ご存知の方もいらっしゃると思いますが、これ以外にも公的な補償が存在します。それが「労災保険(正式名 労働者災害補償保険)」です。

この労災保険は、労働者(正社員は勿論、パートやアルバイトも該当)が仕事中や通勤途中に怪我や病気になった場合に補償される制度で、治療費や休業補償、遺族補償などがあります。

つまり、医療(病気や怪我の治療費)については、
  • 仕事中、通勤途中の怪我や病気……労災保険
  • プライベートでの怪我や病気……健康保険
という「棲み分け」ができているわけです。

医療補償も休業補償も非常に手厚い補償

労災保険の補償は「非常に手厚い」のが特徴です。例えば、病気や怪我の治療費について、窓口負担を比較すると、
  • 健康保険、国民健康保険……3割
  • 労災保険……0割!
つまり、労災保険の方は、自己負担がないのです。

更に、病気や怪我で会社を休んだ期間、会社から給料が支払わなければ、休業4日目から「休業補償」を受けることが可能です。

この休業補償についても、
  • 健康保険(傷病手当金という)……給料(標準報酬月額)の3分の1が、最長1年6ヶ月間
  • 国民健康保険……一部を除き、制度そのものがない
これに対し、
  • 労災保険(休業補償給付という)……給料(給付基礎日額)の8割が、休業が続く限り
給付額、期間とも労災保険の休業補償給付に軍配が上がります。

災害時に適用されるかどうかは、ケースバイケース

先ほど挙げた(治療費、休業時)以外にも、労災保険は遺族給付や障害給付等手厚い補償があり、万が一の際にとても頼りになる存在です。

それでは、どういった場合に「労災保険」が適用になるのでしょうか?

「通勤途中」は文字通り、自宅と会社の間の往復ということです。ただ、途中で寄り道したり、帰りに飲みに行ったりすると、その後は通勤と認められないこともあります。

「仕事中」かどうかの判断、労災保険が適用されるかどうかについて、2つの判断基準が設けられています。それは、「業務遂行性」と「業務起因性」です。

業務遂行性とは、簡単に言うと「勤務時間内に業務に従事していたこと」となります。ですから、休憩時間については基本的に業務に従事していないと考えられます。

業務起因性とは、「仕事が原因で怪我や病気になったかどうか?」が問われます。
災害時の労災適用の壁となるのが、この「業務起因性」です。

仕事中に災害が原因で怪我をした場合、「業務遂行性」は問題ないでしょうが、仕事が原因ではなく災害が原因となると「業務起因性」はないと解釈されてしまうことになります。

今回の災害では、「業務起因性」ありとの判断も!

今回の東日本大震災のような災害時に労災保険が適用されるのでしょうか? 先ほども書いたとおり、原則は災害時には業務起因性はないと判断されるため該当しないと考えられます。

しかし、作業環境などが被災しやすい状況だったと判定されれば、労災と認められるケースもあります。阪神淡路大震災の時に、「作業方法や作業環境、事業場施設の状況などの危険環境下の業務に伴う危険が現実化したものと認められれば業務災害となる」という通達も出ています。

三陸地方は過去に何度も津波被害を受けており、津波による被害を「危険環境下での業務をしていた結果」として、災害と業務の因果関係を認めたケースも出ています。

今回の災害は、日中に起きているため、勤務中に被災された方も多いと思われます。該当される場合は、各地の労働基準監督署や社会保険労務士等専門家にご相談されることをお勧めします。

【関連リンク】
東北地方太平洋沖地震と労災保険Q&A
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