東北地方太平洋沖地震での労務管理

更新日:2011年04月18日

東北・太平洋沖地震での休業手当の扱い

東北・太平洋沖地震をうけて、厚生労働省は地震に伴う休業に関する取扱い、派遣労働者の雇用管理、解雇、採用内定者への対応、1年単位の変形労働時間制についてなどをまとめました。今回は、地震や計画停電による休業手当の概要について解説します。

従業員を休業させた場合、給与補償はどうしたらよいのでしょう

従業員を休業させた場合、給与補償はどうしたらよいのでしょう

今般の東北地方太平洋沖地震の発生で被害を受けた事業場は、事業の継続が困難になったり著しく制限される状況になっています。また被災地以外の事業場でも、鉄道や道路等の途絶で原材料、製品等の流通に支障が出ています。

労務管理の上では、こうした状況では、従業員の給料の支払いが困難になったり、場合によっては解雇せざるを得ないようなことも想定されることでしょう。こうした際、企業ではどのように対応すべきなのでしょうか。非常に判断しにくい問題です。

厚労省がQ&Aを取りまとめ

こうした対応の参考に厚生労働省が今回の震災に関連し、労働基準法の一般的な考え方などのQ&Aを取りまとめました。地震に伴う休業に関する取扱い、派遣労働者の雇用管理、解雇、採用内定者への対応、1年単位の変形労働時間制についてなどが解説されています。

内容が多岐に渡りますのですべて紹介できないのですが、本記事では今回の地震や計画停電の影響で従業員を休業させた場合の休業手当の支払い義務を解説します。今私が、顧問先企業の経営者から実際に相談を受けている内容でもあります。特にピックアップしてご紹介します。従業員へ一定額の給与補償義務があるのかないのかは、経営者の一番の悩みどころです。要点を確認しておきましょう。

事業場の施設等が直接被害を受けた場合の休業手当

今回の大地震によって、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け労働者を休業させる場合、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たり休業手当の支払い義務があるのでしょうか。

(答え)
休業手当の支払義務がありません。

労働基準法第26条によって、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合には、使用者は、休業期間中に従業員に対して休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければなりません。ただし、天災事変等の不可抗力の場合は、「使用者の責に帰すべき事由」ではないので、使用者に休業手当の支払義務がありません。不可抗力とは、

  1. その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

の2つの要件に該当する場合です。

今回の大地震で、事業場の施設・設備が直接的な被害を受け従業員を休業させる場合、原因が事業主責任の範囲外なので上記2の事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故に該当すると考えられます。従って、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないと考えられ、休業手当の支払義務はないと考えられます。

平均賃金とは、一定の計算方法で計算した従業員ごとの1日当たりの給与額のことです。地震により従業員を休業させた場合に、会社に一定額以上の給与補償の義務があるのかないのかを解説したものです。国の解釈は、会社の施設・設備が地震で直接被害を受けた場合は、使用者の責任ではない(不可抗力)ということで、給与補償の義務はないと解説しています。

ただし、本当に不可抗力かどうかの判断は疑問点が残ります。所轄労働基準監督署に具体的な相談をお勧めします。

間接的な被害を受けて休業した場合の休業手当

今回の大地震によって、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていません。一方で取引先や鉄道・道路が被害を受け、原材料の仕入、製品の納入等が不可能となったことで従業員を休業させる場合、「使用者の責に帰すべき事由」による休業に当たり休業手当の支払義務があるのでしょうか。 

(答え)
休業手当の支払義務があります。ただし、下記の2つの要件に当てはまる場合は、休業手当の支払義務がないと考えることもできます。

今回の大地震で、事業場の施設・設備は直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、休業について、

  1. その原因が事業の外部より発生した事故であること
  2. 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

の2つの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由」による休業には該当しないと考えられ休業手当の支払義務はありません。

具体的には、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断する必要があると考えられています。

国の解釈は、会社の施設、設備が直接被害を受けていない場合、前問と違い「使用者の責任あり」と解釈し一定額以上の給与補償の義務があるとしています。ただし、前述の2つの要件がある場合には「使用者の責任なし」とも解釈しています。これも、会社側で判断をするのではなく、所轄労働基準監督署への相談をお勧めします。

次のページは、計画停電中の休業手当について解説します。
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小岩 和男

人事労務コンサルタント・特定社会保険労務士。企業人時代を含め通算24年の人事コンサルを経験。一部上場…

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