Q.採用内定はどうなる?
雇用問題に関して、公的な支援を受けられる場合もあるので、政府の動向に注意を
雇用の入り口部分の問題として、採用内定の取消が考えられます。震災により、企業の規模事態を縮小せざるを得ない場合に、内定者の雇用を維持することが現実的に難しい場合が出てきます。内定段階であっても使用者と内定者との間には、試用の労働契約が結ばれた状態であると解釈されています。
ただその関係は「留保」付きで、使用者は客観的に見て合理的で社会一般から見て仕方のない範囲だと許されるような場合には解約することができます。震災に乗じて本来なら維持できる内定を取り消すことは許されませんが、未曾有の災害であるという理由から、内定取消はやむを得ないと判断される場合が多いでしょう。
Q.欠勤はどう取り扱えばよい?
行政の避難指示が続き、勤務できない状態が続いている場合や計画停電で出勤が不能になった場合など、今回の震災の影響で欠勤せざるをえなかった場合にどのような扱いになるのかが問題になります。
使用者と労働者の間でどのような労働契約が結ばれているのかにもよるので、以下に述べるのはあくまで一般的な話になります。震災による欠勤は使用者の責任でも労働者の責任でもなく、不可抗力によるものであると考えられます。使用者は労働者に労働に対して給与を支払う義務を負い、労働者は使用者に対して、労働を提供する義務を負っているわけですが、不可抗力によって労働者側が義務を果たせない状態(履行不能)になってしまったわけです。この場合、労働者は賃金を請求する権利を有しないとされているので(民法536条)、使用者は欠勤分について給与を支払う義務がありません。
しかし、震災による欠勤を通常の欠勤と全く同じように判断するのは不条理ですから、原因が震災にある場合には欠勤が続くことを理由とした解雇は許されません。
Q.賃金が支払えない場合は?
震災により、大打撃を受けた企業も多く、賃金の支払いが資金繰りの関係で滞ることも考えられます。使用者は毎月1回以上、一定期日に賃金を払う義務があり、違反の場合に罰金が科せられることになっていますが、法は不可能を強いるものではありませんから、相応の努力をしても難しかった場合にまで、処罰の対象となることはないでしょう。雇用を維持するために、賃金の引き下げが合理的な範囲で許される場合も出てくると思いますし、それに伴った就業規則の変更などについて弁護士等法律専門家のアドバイスが必要になる場面もあるでしょう。
Q.一時帰休(レイオフ)した場合の賃金は?
労働者が働ける状態であっても震災で工場が損壊してしまった場合等一時帰休とせざるを得ない場合も考えられます。やむを得ないものであるときには、労働者は前述と同じように賃金を請求する権利がないということになりますが、生活に困ってしまいます。
災害救助法や激甚災害法などの特別法によって失業給付が支給される可能性、事業主に雇用調整助成金が支給される可能性など、公的な支援を受けられる場合も考えられますから、政府の動向に注意が必要です。失業保険の支給要件が緩和される措置も採られるようです。兼業禁止の契約があったとしてもやむを得ない場合に別のアルバイト等でつなぐことも、会社に損害を与えない限り許される場合が出てくるでしょう。
Q.倒産した場合の賃金は?
回復困難な損害を被った場合には、倒産することが避けられない場合も出てきます。その場合には、未払いになっている賃金の支払いが問題になります。倒産の手続の中でも賃金の支払いは優先されるのですが、残された会社の財産だけではまかなえない場合も多いので、未払い賃金の立替払い制度が用意されています。会社を管轄する労働基準監督署に相談されるのがよいでしょう。
Q.その他の法律上の問題は?
時効の進行がどうなるか、裁判所に控訴するまでの期間を守れない場合にどうするかといった、法律上の期間をめぐる問題、相続や行方不明者の財産管理の問題、被災者の納税に対する優遇措置、原発事故にからんでその補償問題、義捐金詐欺や家屋の修理詐欺等震災に乗じた犯罪の問題、まだまだ様々な法律上の問題が考えられます。
ご紹介した問題は起こりうる問題の一部に過ぎません。現状の法律だけでは解決の難しい問題も出てくる可能性があります。阪神・淡路大震災の際には、新たに16もの法律が制定されました。難しい法律問題の解決に奔走した多くの弁護士等法律専門家の活躍もありました。
解決できなければ新しい法律を考える、被災した人々の復興のために例外的な法的措置を採る、多くの人の英知を結集して解決していくことができるはずです。