土地活用のノウハウ/空室対策・賃貸管理・老朽化

家賃滞納督促で、大家さんが警察に出頭?家賃滞納(1)

夜遅い時間に家賃滞納の督促に行った大家さん、平穏な督促なのに警察署に呼ばれてしまい、挙げ句の果てに起訴までされてしまう? 国会審議中の「賃借人居住安定法案(通称)」が可決・成立すれば、そのようなことにもなりかねません。賃貸住宅を自主管理されている大家さんには、法案に関心をお持ちいただくとともに慎重な対応が求められます。また、家賃滞納が始まった場合の初期対応もご説明します。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

突然、警察から出頭を求められた大家さん!ありえる未来です

家賃滞納

これから家賃滞納は、二重の頭痛の種

平成23年のある日、大家さんのもとに警察からの電話が入りました。丁寧な言葉遣いで、「○○アパートの大家さんですね?ご多忙かと存じますが、警察署までご足労願えませんか」というお願いのような促しでした。

大家さんは驚いて質問しました。「いったい何の件ですか?」

「○号室の入居者のAさんに関することです」

Aさんは家賃を滞納して3カ月目の入居者でした。「まさか……。あいつは、家賃滞納ばかりでなく、何か事件でも起こしたのかな?」と、大家さんは不安を感じながら、すぐに警察へ出頭しました。

ところが、警察署で待っていたのは、担当官の厳しい追及でした。「大家さんは先月、夜の11時頃にAさんの部屋を訪ねて家賃の催促をしたことがありますね?」

「はい、それが何か?」

「大家さん、あなたには法律で禁止されている不当な取立て行為を行った疑いがあります」

「不当な取立てなんてしていませんよ。その頃の私は、家賃を滞納しているAさんと連絡が取れず、困っていたのです。昼はもちろん、夜の8時に行っても、10時に行っても部屋にいなくて、張り紙もしましたが連絡もくれず、やっと夜の11時半頃に、部屋の灯りが点いたのを確認して、チャイムを鳴らしたのです。夜遅かったので心配した息子と管理会社の3人で行きましたよ。玄関先で、家賃をいつ支払ってくれるかを聞いただけです。特にもめてなんかいませんよ。何か問題がありますか?」

「大家さん、夜の11時に催促に行くこと自体が法律で禁止されたことを、まだご存じないのですか?それに、これに見覚えがありませんか?あなたが書いてドアに貼り付けたものではありませんか?」

テーブルの上に、1枚の紙きれが置かれました。そこに書かれているのは、『 Aさん、連絡をください。今月中に家賃の入金が確認できない場合は、部屋の鍵を交換して出入りできなくします。大家 』

これは確かに大家さん自身が書き、家賃を滞納しているAさんの部屋のドアに、自ら貼り付けたものでした。

滞納する悪質な入居者より、督促した大家さんが悪い?

「確かに私が書いて貼りましたよ。Aさんは先月会った時には『今月中に必ず払う』と言ったのですが、結局、家賃は入金されず、その後もまったく連絡が取れない状態が続いたので、やむなくこの紙をドアに貼ったのです。家賃を滞納して3カ月目ですし、連絡もくれないのだから、これくらい厳しくしないとね。でも、鍵の交換は実際にはやっていませんよ」

「大家さん、この文章も法律で禁止されている『威迫』行為に該当する可能性があります。実際にやっていなくても、威迫するだけで、不当な取立て行為とみなされます。それに3人の男に威嚇されて非常に怖かったと、入居者から被害届まで出ていますよ」

慌てて、大家さんは反論しました。「何を言うのですか!悪いのは家賃を払わないAさんです。Aさんが契約違反をしているんです。私は被害者ですよ。当然の権利として、未払いの家賃を払ってもらいたいだけです」

担当官は首を横に振りました。「今回、新しい法律が施行されました。今回の大家さんの行為が事実とすれば、罪となって罰せられることになったのです。2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金……」

「えっ!」

「とりあえず調書を取ります。あとで署名、押印をいただきます」

がっくりとうなだれて、警察署をあとにした大家さん。その日からは眠れない夜が続きました。そして数日後、電話が鳴りました。警察からの連絡でした。

「大家さん、あなたは起訴されることになりました」

……いかがでしょう?

これは、実際の話ではなく、未来に起こりうる、かなり可能性のある、大家さんの身に迫った話なのです。
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