心臓・血管・血液の病気/心不全・不整脈・心房細動

不整脈の重症度とそれぞれの治療法(2ページ目)

不整脈は、放置してよいもの危険なものの見極めが重要です。合併症を引き起こす可能性があるものから、一分一秒をあらそうものまで、不整脈の重症度別に、それぞれの治療法を解説します。なお大切なひとのいのちを守るために蘇生救命の講習を受けておくのは大変役立ちます。

米田 正始

執筆者:米田 正始

心臓血管外科専門医 / 心臓病ガイド

速やかな治療が必要な重症不整脈

診察

早めに専門医に相談しましょう。不整脈の場合、落ち着いているときはまずまず良くでも、状態が悪くなるときは一気のときもありますから。

不整脈そのものは、この次に紹介する超重症不整脈ほど深刻ではないものの、長時間放置すると血液循環が悪くなり、死亡する恐れもある不整脈。背景に何らかの心疾患を持っている人に起こる比較的まれな状態ですが、発生時はいずれも注意深い観察と緊急治療が必要ですので、なるべく早く専門医を受診し適切な処置を受けてください。

■頻脈性不整脈
WPW症候群における頻脈性心房細動
肥大型心筋症における頻脈性心房細動
心房粗動の1対1伝導

■徐脈性不整脈
Mobitz II型第2度房室ブロック
発作性房室ブロック
急速に進展する三枝ブロック

一分一秒をあらそう超重症不整脈

蘇生救命

心室細動は心停止と同じ状態ですから直ちに心肺蘇生やAEDが必要です

別名「致死性不整脈」。このタイプの不整脈が発生した場合は、一刻も早い治療が必要です。ただちに救急車を呼び、救急室のある病院へ急いでください。

■ 心室細動
もっとも危険なタイプです。こうなると心臓はけいれんしているだけで、血液を送り出すことはできません。血圧はほぼゼロとなり、事実上心停止の状態になるため、そのままでは4分以内に脳死になってしまいます。

心室細動が起こった場合は、ただちに心臓マッサージ・心肺蘇生や電気的除細動(電気ショック治療)を行う必要があります。最近普及したAEDを早い段階で使って電気ショックを与えると改善する可能性があります。平素からBLS講習会などでこうした勉強・実技練習を経験しておけば大切な肉親や友人をいざという時に助けるチャンスが増えます。

■ 心室頻拍
致死性不整脈

致死性の不整脈では一刻も早く病院へ行く必要があります。そうしないと、心停止から脳死になる心配があるからです

心室が毎分100~200回という速さで動いてしまい、送り出すべき血液が溜まる時間がないために、血液を十分送り出せず、血圧も下がる危険な状態です。そのままでも死亡する恐れが大きいですが、この心室頻拍が心室細動に移行すると、さらに死亡リスクが高くなります。多くの場合、心筋梗塞や心筋症などが背景にありますのでこれらへの治療も大切です。

■ トルサード・ド・ポアン
心室頻拍の特殊なタイプ。死亡する恐れの高い不整脈で、心電図では「QT時間」が延長しているときに起こりやすいです。

■ 房室ブロック
心臓の中の電気信号(「不整脈の原因・メカニズム・診断」参照)が途中で途切れてしまうために脈拍が極端に遅くなり、時には止まってしまう危険な不整脈。失神発作が起こったり、突然死にもなりかねません。ペースメーカーで安全を確保できます。

■ 洞不全症候群
心臓の中の自然のペースメーカーが壊れてしまい、何秒かの間、心停止が見られる状態。この間の心電図はまったく平坦で、血圧もゼロに近づき危険です。洞結節の機能が低下することによって、さまざまな徐脈性不整脈を起こします。これもペースメーカ治療の適応になります。

不整脈治療、最近の考え方

近年の大がかりな臨床研究によって、不整脈治療への考え方はずいぶん変わりました。かつての「何でも薬などで治そう」という方針から、「本当に必要かつ有効な治療だけ」するようになりつつあります。

軽症不整脈

不整脈の中には治療が不要で生活の適正化だけで行けるものも多くあります

軽症の不整脈に対して強い薬剤を長期間用いると、その不整脈は消失しても別の不整脈を起こしてしまう「催不整脈作用」や、その他の副作用のために、かえって予後が悪くなる可能性があります。

一般的には重い心臓病がない患者さんで不整脈が見られても、不整脈の重症度が高くなく症状も軽ければ、生活習慣の改善などの指導を行うだけで積極的な薬物治療などは行わないというのが最近の考え方です。

中等度の不整脈でも、治療する場合の治療目標は、無理をして完全治癒を目指すのではなく、患者さんの生活の質QOLの改善が得られること、あるいは多少の不整脈が残っても長期予後の改善が得られることのほうが重要です。

このような考えから、実際の治療法も眼の前の不整脈を表面的に治す対症療法から、不整脈の原因に対する治療すなわち根治を目指すようになり、さらには個々の患者さんに応じた個別の治療へと、治療戦略が大きく変貌しつつあります。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます