感染症/HIV感染症・エイズ

HIV・AIDSの症状・治療法

日本国内でも増え続けているHIV、AIDS(エイズ)。HIVとAIDSの違い、症状、感染後の経過について解説します。

三上 彰貴子

執筆者:三上 彰貴子

薬剤師 / 薬ガイド

HIVとAIDSの違い

よく「HIVとAIDSは、どう違うの?」と、質問を受けることがあります。まずは、両者の解説から触れていきましょう。

まず、HIVとはウイルスの名前です。「ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)」の頭文字をとって「HIV(エイチアイブイ)」と呼ばれています。HIVというウイルスは、ヒトの免疫に関係する細胞に感染(免疫細胞の中に入り込む)します。そして、その免疫細胞を破壊してしまうので、ヒトの免疫機能が低下します。

virus

ウイスルがヒトの免疫細胞に感染していく状態のイメージ写真です

そのため、通常では感染しないような菌やカビ(真菌)などが、皮膚や粘膜などに付着しても病気を発症してしまいます。

このように後天的な原因により免疫が低下してしまう状態が「後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome)」という病気。頭文字をとって「AIDS(エイズ)」と呼ばれています。

すなわち、HIVというウイルスによって引き起こされる状態がAIDSです。HIVに感染しても、すぐにAIDSになるとは限りません、数カ月から数年、治療が奏功すれば数十年も発症しないこともあります。

HIV感染者数、AIDS患者数の現状

世界におけるHIV感染者数、AIDSの患者数は、以下の通りです(2008年12月推定)。

・HIV感染者数
合計3,340万人 (女性1,570万人、子供(15歳未満)210万人)

・新規HIV感染者数
合計270万人 (子供(15歳未満) 43万人)

・AIDSによる死亡者数
合計200万人 (子供(15歳未満)28万人)

HIVsuii

国内のHIV感染者数とAIDS患者数の推移

その中で、日本とロシアが増えており、各国が減少に転じる中、日本は先進国で唯一増加している国と言われています。

また、国内における2009年の日本国籍と外国籍を合算した報告数は、HIV感染者数1021 件(前年より105件減少)、AIDS患者数431件(前年と同数)でした。さらに、HIV感染者とAIDS患者の累計は、それぞれ11573人、 5330人となっています。

なお、2009年にHIV感染者数が減少した理由は、新型インフルエンザの影響で検査を受ける人が大幅に減ったからのようです。

HIV感染と経過・症状

前述しましたように、HIVというウイルスが免疫細胞に感染してHIV感染症となります。このHIVが主に感染する免疫細胞は「CD4陽性リンパ球(CD4と言うこともあります)」という細胞で、この数とHIVのウイルス量の推移が病気の状態を把握する指標になっています。

少し詳しく説明しますと、CD4にHIV(ウイルス)が入り込み(感染)、入り込んだCD4内で増えていきます(複製)。増えたウイルスがCD4を飛び出し血中を流れ、さらに別のCD4に入り込みます。そのため、CD4が破壊されたり免疫としてはたらかなくなることで数が減り免疫力が落ち(免疫不全)AIDSを発症するのです。そのため、血中のHIV量とCD4数を測ってHIV感染の状態をみていきます。

HIVに感染すると、大きく3つの経過をたどります。感染初期(急性期)、無症候期(症状が出ていない状態)、AIDS発症期です。

■AIDSの感染初期(急性期)・初期症状
感染したウイルス(HIV)が急激に増える段階です。この時には、発熱、だるさ、筋肉痛、リンパ節が腫れたり痛んだり、また湿疹ができたりしますが、数週間で症状は消えてしまいます。

■AIDSの無症候期
症状が消えて、治った感じになる無症候期を迎えます。この時も同様にウイルスは増えている(毎日100億個前後)のですが、まだ、残されている免疫機能により症状が抑えられている状態にあります。

■AIDSの発症期
残された免疫機能が落ちてしまうと、AIDSを発症します。AIDSは、以下のいずれかの発症により判定されます。
・真菌症(カンジダ症(食道、気管、気管支、肺)、クリプトコッカス症(肺以外)など)
・原虫感染症(トキソプラズマ脳症、クリプトスポリジウム症など)
・細菌感染症(化膿性最近感染症(敗血症など)、再発を繰り返すサルモネラ菌血症など)
・ウイルス感染症(単純ヘルペスウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症など)
・腫瘍(カポジ肉腫、原発性脳リンパ腫など)
・その他(反復性肺炎、HIV脳症など)

HIVの対処法・治療法

治療では、ウイルス量を抑えることで、上記の無症候期を長くして、AIDSの発症を抑えます。

最近は、新しい治療薬の出現と治療法がうまく奏功して、長期間AIDSを発症しないHIV感染者が増えています。AIDSの発症が抑えられる一方、HIV感染の免疫低下によるガン(上記のAIDS関連性ガンを除く)や、HIV薬の副作用による代謝異常(脂質、糖、骨)のため、高脂血症や糖尿病や骨粗鬆症などが問題になっています。そのため、HIV薬の薬の変更や代謝異常に関連した薬を服用して予防していきます。HIV増殖のしくみや薬についての情報は、「HIV増殖のしくみ・主な薬の種類・効果」「HIV薬の副作用と注意点」に詳しくまとめています。併せてご覧下さい。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます