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どうする? 自営業、フリー、派遣の老後準備

自営業やフリーランスなどの人には、手厚い年金制度も退職金もありません。年間80万円程度の国民年金だけでは、将来が心配です。そこで、自分で選択して加入することができる制度など、年金を増やす方法をご紹介します。

やがら 純子

執筆者:やがら 純子

マネープラン入門ガイド

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はじめに コロナ禍でやむを得ずフリーランスになった方へ

コロナ禍で、さまざまな業界が大打撃を受け、やむを得ずフリーランスになった人もいることでしょう。いまは目の前のことで精一杯だと思いますが、もしかしたらフリーランスで長く働くことになるかもしれませんので、将来の準備についても知っておいてください。また、下記で紹介する中小企業基盤整備機構には共済制度のほか、コロナ禍などでの支援もあります。このような機関の存在を知っておくのもよいと思います。
 

自営業者が将来受け取れる年金は?

自営業者やフリーランス、勤務先の社会保険に加入していない派遣・アルバイトなどの人が将来受け取れる公的年金は、基本的に国民年金の老齢基礎年金だけです。65歳から受け取れる年金額は2021年度は月額約6万5000円、年額78万900円です(保険料を40年間納めた場合)。少ないですね。

そこで、足りない分を補うために、老後資金の準備方法をいくつかご紹介します。
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自分で選んだフリーランスの道! お金のこともしっかり考えたい!

 

1. かんたんに年金を増やす方法「付加年金」

現役時代に支払う国民年金保険料は、2021年度は月額1万6610円です(まとめて前払いすると割引あり)。これに毎月400円をプラスして支払うだけで、将来の年金額が増える制度「付加年金」があります。増える金額は「年額200円×付加保険料納付月数」円です。お住まいの市区町村役場で加入手続きができます。

■たとえば
ぴったり20年間(240カ月間)、付加年金保険料を納めたとすると……、
・20年間で支払う保険料 400円×240カ月=9万6000円。
・将来、増える年金額 200円×240カ月=4万8000円(年額)。
20年間に支払うお金が9万6000円で、将来は4万8000円が毎年もらえる。ということは、将来、たった2年で元が取れちゃうということです。

■その他のメリット
付加年金の保険料は、社会保険料控除の対象になり、少しですが所得税・住民税が安くなります。

■注意点
・付加年金額は物価変動に合わせた金額調整がありません。将来ものすごく物価が高くなった場合、付加年金で収入を増やしても焼け石に水ということになるかもしれません。
・65歳になる前に死亡した場合に遺族が受け取る「死亡一時金」には付加年金の上乗せが(条件付き)あります。しかし「子のいる配偶者」または「子」が受け取れる「遺族年金」には上乗せはありません。
・次に紹介する国民年金基金との併用はできません。
子育て費用を捻出しながら、老後の準備も。

付加年金保険料は、家計への負担が軽い。

 

2. ちょっと頑張って年金を増やす方法「国民年金基金」

国民年金基金は、国民年金に上乗せする形の公的な年金制度です。都道府県ごとに設置された国民年金基金に加入するのが一般的ですが、一部の職業では職業別の基金がありますので、どちらかを選んで加入します。年金制度の内容はどちらも同じです。国民年金基金連合会のサイトで加入申し込み用紙をダウンロードできます。

国民年金基金は口数を決めて加入します。1口目は、一生涯受け取れる年金について2タイプ(A型とB型)から選びます。A型は「受け取り開始から15年間の保障期間付き」で、本人が亡くなってしまった場合には遺族が一時金を受け取れます。B型には保障期間がなく、本人が年金受け取り前に死亡した場合は遺族に1万円が支払われるのみ、年金受け取り中に亡くなった場合はそこで打ち切りです。その分、B型は保険料が安くなっています。

2口目以降は、1口目と同じく終身タイプのほか、受給期間が5年~15年の間で決められている確定年金タイプの中から選びます。掛金(保険料ではなく掛金といいます)や受け取り金額は、加入年齢や口数などによって異なります。国民年金基金のサイトでシミュレーションできます。

■たとえば
30歳0カ月で課税所得300万円の女性が、1口目は保障期間のあるA型、2口目にも同様のA型に加入したとします。掛金は毎月1万7820円、年間21万3840円ですが、税金の控除があるので実質17万円程度です。将来の年金額は年額36万円です。老齢基礎年金(国民年金)と合わせると100万円超になりますね。

■その他のメリット
掛金は社会保険料控除の対象になりますので、所得税・住民税が安くなります。付加年金よりも掛金額が多い分、税金面のメリットが大きく、将来受け取れる年金額も大きくなります。

■注意点
・付加年金との併用はできません。付加年金をやめて基金を始める場合、すでに払った分の付加年金保険料は基金の年金額に反映されますので、ムダにはなりません。
・一度加入すると自由にやめることはできません(口数の増減は可能)。
・会社員になったら資格を喪失しますが、将来、それまでに払い込んだ掛金に応じた年金がもらえます。
・物価変動に合わせた年金額の調整がありませんので、付加年金と同様、物価上昇には対応できません。

 

3. 年金を増やす方法「iDeCo(確定拠出年金 個人型)」

自分で運用して将来の年金を作る制度があります。「確定拠出年金 個人型」、最近よくきく「iDeCo(イデコ)」です。

取り扱っている銀行や証券会社などに申し込みをします。掛金は月額5000円~6万8000円の間で自分で決めます(1000円単位。付加年金や国民年金基金を利用している人はその掛金と合わせて6万8000円まで)。毎月の掛金で運用を行っていき、60歳(原則)になると、5年~20年間の年金または一時金で受け取りができます。年金額は運用次第! 運用がうまくいけば払い込んだ掛金合計よりもずっと多くの年金を受け取ることも可能ですが、その逆もあります。

■運用はどう行う?
金融機関が指定した投資信託や定期預金、10本~20本くらいのラインアップの中から、好きなように選んで組み合わせて運用します。たとえば「掛金の40%は日本株式に投資する投資信託に、30%は外国債券の投資信託に、残りの30%は定期預金に」といった組み合わせが考えられます。選択する商品や割合は途中で変更が可能です。安全重視の定期預金もラインアップに入っていますので、「投資信託の運用がうまくいっている時に一部を売却し、そのお金を定期預金に預け替えて守る」などの工夫ができます。

■その他のメリット
最大の魅力は税制面です。同じ投資信託商品を運用するなら、個人的に購入するよりも確定拠出年金制度の中で運用するほうが得ともいえます。
・掛金が小規模企業共済等掛金控除の対象になり、所得税・住民税が安くなります。
・運用中は課税が繰り延べられ、運用の利益から税金が引かれません。本来税金になる部分もその後の投資に充てられますので、運用の効率がよいのが特徴です(税金は、将来受け取る際に差し引かれます)。
・受け取った年金は公的年金等控除の対象になり、一時金で受け取った場合は退職所得控除の対象になり、所得税・住民税が安くなります。

■注意点
・将来の年金額は保証されていません。
・金融機関によって手数料が異なるのでよく比較検討しましょう。
・積立資産にかかる特別法人税・法人住民税は現在はかかりませんが、今後はどうなるかわかりません。
・途中でやめることは原則できません(掛金の増減はできます)。
・途中でお金を引き出すことはできません。
楽しい老後のために

楽しい老後のために

 

4. 自分で退職金を作る方法「小規模企業共済」

自営業やフリーランスの人は通常は退職金がありませんが、中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済」に加入して退職金を準備することができます(経営者や個人事業主のための共済であり、専業主婦などは加入できません)。毎月掛金を払って積み立てていき、将来仕事をやめる時にまとめて受け取るという仕組みです。年金のように分割で受け取ることもできます。申し込みは、機構の業務委託団体(商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、中小企業の組合、青色申告会など)や金融機関で取り扱っています。

毎月の掛金は、1000円~7万円の範囲(500円単位)で自由に決められます。収入が大幅に減るなどして掛金が出せなくなってしまった場合は、掛金を減額でき、よほどの事情がある場合は条件つきで掛金払い込みをストップすることもできます。もちろん増額も可能です。

■たとえば
30歳で課税所得金額300万円の人が小規模企業共済に加入し、毎月1万円の掛金を払い、30年後に廃業したとします。30年間で払い込む掛金合計は360万円、30年後に受け取れる共済金は434万8000円です。収入や税制に変化がないと仮定すると、掛金を払っている期間の節税効果は年間2万4200円です。亡くなった場合は遺族が共済金を受け取れます。

■その他のメリット
・掛金は全額所得控除の対象になり、所得税・住民税が安くなります。毎月7万円の掛金の場合は、年間84万円も控除されます。
・共済金は、一時金で受け取ると退職所得扱い、分割で受け取ると公的年金等の雑所得扱いになります。

■注意点
・掛金の途中引き出しはできないかわりに貸付制度があります。
・世の中の経済状況によって、将来の受け取り額が変わる可能性はありますが、短期的な市場動向で変更されることはありません。
 

5. 自分で年金を作る方法 その他

  このほか、自分で行う老後準備としては、「個人年金保険」がよく知られています。将来の年金額があらかじめ決まっている定額年金保険と、運用次第で受取額が変わる変額年金保険があります。

生命保険にも、老後準備に使える商品があります。たとえば、低解約返戻金型の終身保険や定期保険は、現役時代に解約した場合の解約返戻金を少なく抑え、その代わりに老後に解約した場合には多めの返戻金を受け取ることができるので、解約返戻金を老後資金に充てることができます。もちろん死亡保障があり、「保険と貯蓄をかね合わせた商品」です。
 

最後に

自分の収入と照らし合わせて、取り入れられるものを早めに取り入れて、準備していきましょう。途中でやめられない、途中で引き出せないというルールのものもありますが、それは必ずしもデメリットではありません。お金を計画的に貯めるのが苦手な人は、そういうルールをうまく利用して、否が応でも貯めていく環境を自分で作ることも必要です。

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