雑貨/古道具・アンティーク

千石 sasulai 下町風情に人の心が通い合う店

古きよき日本の暮らしがまだ残っている、文京区の小さな商店街。土間を利用したお店には、いつの間にかいろんな人が集まってきます。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド


お店



とあるパーティーでお会いした若い夫婦。「今度お店を出すんです。」と 名刺を頂きました。二人の雰囲気から、なんだか良さそうな予感がして、 初夏のある日、さっそくそのお店を訪ねてみることにしました。 三田線の千石駅から不忍通りを歩き、ちょっと脇道に入ると、 のんびりと風情のある商店街。巣鴨や谷中からも近くて、人の温かさを感じるエリアです。 古くからやっている魚屋さんと酒屋さんの間に、 そのお店はありました。



打ち水 看板
左:お店を開けたら、まずは打ち水。
右:古いトルソーに、古材で作った手作りの看板を下げた。


お店の名前は「sasulai(さすらい)」といいます。 これは、ある本の一文で「さすらいと変化を愛するものは生ある者である」という言葉から 取ったのだそうです。 常に変化を求めていたいということと、お店に来たお客様が自由な気持ちになって、 何か新しい発見をしてもらえたらいいな、という思いが込められているようです。 実際、自分達もさすらうことは好きだそうで、チベットやインドなどを旅して見つけた雑貨が 一角に並んでいることもあります。

階段 キッチン
左:自宅である2階へ続く階段。自分達で白く塗った。
右:人のぬくもりを感じるキッチン。


さて、お店の中に入ってみると、土間のようなところが店舗部分で、小上がりになった奥がキッチンになっています。 お店からはキッチンの様子がうかがえ、訪れたお客さんは手土産片手に小上がりにちょこんと腰掛けて、 世間話をしていきます。 奥ではお湯を沸かし、コーヒーのいい匂いが流れ、隣りでは 革作家の奥様・宇都亜紗子さんが、トンカン作品を作っています。 そこでは、忘れかけていた古きよき日本の日常の暮らしが、普通に営まれていました。 近所に住む年配の方が手作りのおかずをおすそ分けに来たり、 学生時代の友人がおしゃべりをしに来たり、 そこに初めてのお客さんが加わったり。 いろんな人が当たり前のように交わりながら、気軽に出入りしています。 お店を訪れた人は、売っているものを見に来るばかりでなく、この空間が造り出す雰囲気と、人との出会い も楽しんでいるようです。

バッグ バッグ
作業
上:宇都亜紗子さんの作ったバッグや革小物。
下:みんなとおしゃべりを楽しみながらも、手は手際よく動く。


革作家の宇都さんは、もともと手作りが大好き。学生時代に修学旅行に持っていくバッグを 探したら、好きなものがぜんぜんなくて自分で作った、という思い出があります。 自分で作ったものが周りにも好評で、友人に頼まれては作る、ということをしていたら、 いつの間にか仕事になっていました。 作品作りは全て独学のため、あれこれ注文の多い友人達が、良い先生になっていたようです。 メキシコやインドなど、民族的な雰囲気が好きな宇都さんの作る作品には、どこかプリミティブでとぼけた愛嬌を感じます。 作品は全て手作りだから、同じものはひとつもありません。その日の気分と思いつきで、 気ままにかたちを仕上げていきます。 くたくたになるまで使うことによって、味わいも深まります。 だから、もし壊れても気軽に直してあげたいし、お客さんと顔を合わせて会話することが大事なんだと 宇都さんはいいます。

うつわ うつわ
アート作品 アート作品
上:常滑の作家夫婦が作るうつわ。右はカレー皿。
下:クリエイターの作る作品も並ぶ。


二人の好きなクリエイターや陶芸家の作品も並んでいます。 うつわは常滑の作家夫婦・松原竜馬さん、角田淳さんが作ったもの。 角田さんの表情豊かな磁器、松原さんの温かい手触りの陶器は二人の大のお気に入りだそう。 特に写真のカレー皿は、カレー好きである当人たちが、持ちやすさ、食べやすさを考え、こだわりにこだわって作った、 思い入れの強い逸品。夫である北澤庸介さんは「この絶妙なカーブが、カレーを受け止めるにも、手を添えたときの入り具合にも 本当にちょうどいい。」とうれしそうに話してくれました。

古道具 古道具
useの古道具展(7月17日まで)。毎回違うものが見つかる。


お店には、北澤さんが見つけてきた古道具も並んでいます。 古道具というよりガラクタ、と北澤さんはいいます。 ちゃんと素材を感じるもの、長く使われ最後には土に返るもの、など自分達でルールを決めて選んだ、気に入ったものばかり。 そこに今だけ、useという浦和の古道具屋さんの展示が加わっていました。 木箱やブリキ、ガラス、布など、毎週新しく仕入れてきたものが並べられます。 useのオーナー・佐々木秀典さんの感性は、sasulaiの二人と相性ぴったりだったそうです。 今後もギャラリー的に様々なクリエイターの作品展や、コラボレーションをやっていきたいとのこと。 この辺りは昔ながらのお祭りなども多い地域で、地元を盛り上げるお手伝いとしても、 まだまだやりたいことはたくさんあるのだそう。 温かく大らかに迎えてくれる二人に引き寄せられて、誰もがつい長居してしまいそうな場所です。



sasulai(さすらい)
東京都文京区千石3-41-13
TEL 03-3947-1041
毎週土日のみオープン 13:00~20:00
http://www15.ocn.ne.jp/~sasulai

use
埼玉県さいたま市南区鹿手袋1-10-3-1F
TEL 048-838-9127
携帯 090-8817-5058
(事前に連絡を)

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