雑貨/ハンドクラフト・工芸

金属工芸作家・坂野友紀さん クールで温かい金属のうつわたち

坂野さんのうつわはトントンと丁寧に叩かれた金属でできています。硬く冷たいはずの金属が、人の手によって柔らかく温かいかたちに生まれ変わります。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

作品など
アトリエの入り口には坂野さんの作品と一緒に
友人の作った陶器やオブジェなども並んでいる。
金属工芸作家・坂野友紀さんの作品に初めて出会ったのはいつだっただろう? 作品よりも本人との出会いが先だったかも?

たぶんそんなに昔のことではないはずなのに、坂野さんの作品はまるで遠い昔からあったかのように家の中に馴染んでいて、ご飯どきになると当たり前の顔で登場しています。

その作品は、使い勝手を考えた機能的なフォルムでありながら、坂野さんらしい柔らかな人柄が表れていて、使っているとちょっとおへそがくすぐったくなるような、ほのぼの感が漂います。

工場の一角にある坂野さんのアトリエ

椅子
古い椅子たちが並ぶ。右端はインドの映画館で使っていた椅子。
坂野さんのアトリエは、お菓子を包むとある工場の一角にありました。 ほんわりと甘いお菓子の匂いが漂っている日もあるんだそうです。 まだまだ日差しの強い、夏の終わりの昼下がり、大きな扉をがらーんと開けて、 涼しい風を取り込みながら、坂野さんがにこにこと迎えてくれました。

アトリエには、古く味わいある椅子や棚が肩を寄せ合うように並んでいます。 錆がかった金属の棚、朽ちた木の板。 使い込まれた昔のものをたくさん集めてくる坂野さんに、 工場で働く人たちは「なんでそんなものが好きなの?」と目を丸くしていたとか。 工場の中で思わぬ古びた宝物を発見して、目を輝かせたこともあります。

イカ釣り機の椅子
イカ釣り機の部品で作った椅子。座面が広くて座り心地がよい。 。
「どうぞ」と勧めてくれた、少しとぼけた雰囲気の椅子は友達のお父さんの手作りでした。 2枚の鉄板を組み合わせたシンプルなかたちで、 実はイカ釣り用の機械の部品でできています。

柔らかな印象の坂野さんとは裏腹の頑強な道具たち

ドリル
穴を開けるのに使うドリルにも男らしさが…。
おっとりと柔らかな物腰の坂野さんとは裏腹に、アトリエは男らしさ(?)に溢れていました。 「職人」と呼ぶにふさわしい、頑強な道具や機械がどんと構えています。 ドリルやかなづち、バーナーなど、金属を扱うにはやはり力仕事も必要なのです。

かなづち
かなづちも全部かたちが違う。
かなづちは叩く面がとんがっていたり、波打った模様が入っていたり、様々なかたちのものがずらりと並んでいました。自分でかなづちの面を削ったり、薬品で面を腐食させたりして、好みの模様を作るんだそう。

当たり前のことだと涼やかに笑う坂野さんですが、かなづちをがんがんと打ち付けるたくましい坂野さんをどうしても想像できず、ただかなづちを撫で回しては感心するばかりでした。

次ページでは、坂野さんがなぜ今のお仕事を選んだのか、きっかけを伺いました。
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