コツコツと木の匙を作り続けて、気がついたら12年。
カメの歩みのようにゆっくりと遠回りして、
でも小さなことをきゅっきゅと積み上げて、ここまでたどり着きました、
と話すさかいさん夫妻。
東京・国立の駅から線路沿いを歩き、辺りもすっかりのどかになってきたかなあ、と思うところに、ぽつんと一軒つつましく、小さなお店がありました。
暮らしに一番身近だったのは、一本の匙

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手作りのカウンター。ここで宴が催されることも。
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ガラガラっと引き戸を開けて、お店に入ります。
古い木箱や椅子、手作りの家具の上に、漆や陶器、ガラスなど、ぽつぽつと作品が置かれ、真ん中には無垢の木のカウンター。
しっとりとしたコクと艶のある匙が、壁に点々と並び、店内には穏やかな空気が流れています。
奥の小さなアトリエでは、黙々と木の匙に漆を塗っている男性の姿。
さかいあつしさんです。
「こんにちは」と優しく迎えてくれたのは、ここの店主である奥様のかよさん。初めて訪れる人でも、ほっと安堵に包まれて、身体の筋肉がじわじわと緩んできます。
「匙屋」のお店は2006年の9月にオープン。それまでは同じ土地、国立にアトリエを構え、作品を作っていました。
「元々二人とも普通のサラリーマンだったんです。会社を辞めるとき、もの作りがしたいと思って、ふと思いついたのが木でした。
といっても全く知識はなかったので、どこで木を買ったらいいのか?というところから手探りのスタートでした」。
木で何かを作りたい、でもゼロからの出発ではなかなか思うようにはいきません。
自分達に一番身近で毎日使うもの、実際手に取って実感できるもの、とあれこれ考えた末、たどりついたのが匙だったそうです。
「木工作家という肩書きをもらうには、まだまだ自分達は未熟でした。木を扱っているというと、家具屋と思われてしまうこともあって。
だったらもっとシンプルで分かりやすい名前にしようと思い、『匙屋』という屋号を付けました」。
当初、お店をやるつもりではなかったという、さかいさん夫妻。
「お店ができたおかげで、ギャラリーなどでの個展とはまた違って普段の作る姿を見てもらえるし、お客さまと直接気軽に話ができることは、なにより嬉しいです」。
凛と美しい匙が壁一面に並ぶ
さかいさん夫妻の作る匙は、少しだけ種類があります。
赤ちゃん用の小さくて持ちやすい「初めての匙」。
普段使いに良さそうな「実から出た匙」はネーミングもユニーク。
手に馴染むサイズや優しい丸みには、使う人への心遣いと、さかいさん自身が愉しんで作られている様子が感じられました。
匙に使う木は、さくら、くるみ、いちょうなど実のなる木。
食べ物を扱うから、という小さなこだわりです。
その他の作品には、お鍋にぴったりのお玉や、バターナイフ、お盆や重箱などもあります。
つややかな漆の表情にしばし言葉を失って、まるで絵画を眺めているような気分でした。
匙屋
東京都国立市中1-1-14 松葉荘1階
TEL:042-577-5075
営業時間:12:00~18:00
通常月・火休み(不定休のため、お問い合わせ下さい)
http://sajiya.exblog.jp/
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