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目白、歴史を感じる、坂と緑豊富な住宅街

池袋、高田馬場という繁華、猥雑な雰囲気もある街に挟まれていながら、目白にはどこか風雅なイメージがあります。かつて大名の下屋敷が点在、今も由緒を感じる建物が残る街の住み心地を歩いてみていきましょう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

学生街のない学生の街には
様々な歴史の遺産も

学習院大学
山手線目白駅のすぐそばにある学習院大学。広大な敷地には緑が濃い
駅前にある学習院大学、川村学園、そして少し離れて日本女子大学、独協中学・高校、その他複数の専門学校などの存在から、文教の地という印象がある目白ですが、この街にはおもしろいことに学生街らしい雰囲気はほとんどありません。ボリューム自慢の飲食店、ラーメン屋さんが多い隣駅池袋や高田馬場に比べると、そうした、乱暴にも見える若さ、元気さを感じる店などは皆無に近い状況。全体におっとりした、品の良い校風の学校が多いからでしょうか、学生のいる街らしいものというと、古書店にカフェ程度なのです。

関口芭蕉庵
神田川沿いにある関口芭蕉庵。神田川沿いには桜が多く、散策路が設けられている
学生街なのに静か。このように、相反するように思えるものが混在している、一般的なイメージと異なるものがあるのが目白という街です。かつて松尾芭蕉が神田川の改修工事に携わった際に住んでいた住居跡、関口芭蕉庵や、旧熊本藩主細川家代々の宝物の展示する永青文庫、同じく細川家の屋敷跡を利用した新江戸川公園、明治の元勲山縣有朋の屋敷だった椿山荘などといった、江戸期からの歴史を感じさせる建物や公園が点在すると同時に、この街には数多くの教会もあります。

東京カテドラル
目白通り沿いにそびえる東京カテドラル。丹下健三の設計で、教会用としては最大クラスのパイプオルガンを備えていることでも有名
例えば、椿山荘の向かいには吉田茂元内閣総理大臣の葬儀が行われた東京カテドラル、目白駅から西の目白通り沿いにはロマネスク様式のクラシカルな目白聖公会、少し離れて聖母病院のチャペルなど。また、元大名屋敷が集まっていた目白通りの南側とは反対、北側には平安時代から庶民の信仰を集めた安産、子育ての神様、鬼子母神もあり、一言に歴史的な文物といってもその中身は様々なのです。

住宅街
徳川黎明会近くの住宅街。うっそうとした木々が歴史を感じさせる住宅も多い
住宅街も同様。駅の西側、尾張徳川家が行っている公益事業の拠点となっている徳川黎明会がある一帯やかつて目白文化村、目白近衛町などとして箱根土地が分譲した大正~昭和初期の高級住宅街、目白台などには今もお屋敷や高額マンションがあるものの、それ以外はイメージからすると、ごく一般的とも思える住宅街なのです。歴史がある分、様々な要素が入り混じっている街というわけです。

目白と周辺の位置関係概念図

周辺地図
今回取り上げるエリアと周囲の位置関係。近くには幹線道路も走っているが、賑やかさ、騒がしさはない街だ

坂、骨董店が多く、
スーパーの少ない街

胸突坂
急坂として知られる胸突坂。坂を上がったところに永青文庫があり、坂の向かいには関口芭蕉庵がある
さて、その目白という街で多いもの、少ないものを見ていきましょう。まず、多いものは坂です。今回私は江戸川橋から目白通りに入り、通りにそって下落合辺りまで歩いたのですが、ちょうど、目白通りと平行するように神田川が流れており、目白通りから神田川に向かっては坂になります。しかも、大半が急坂。上るのに胸を突くほど急で、胸突坂という場所もあるほどです。そのせいか、江戸時代には月見の名所だった場所も多く、今も通り沿いのマンション、住宅には新宿方面を見晴らす眺望自慢が少なくありません。

目白通り沿いにある甲冑、刀剣などを扱う店
目白通り沿いにある甲冑、刀剣などを扱う骨董店。大小さまざまな店が周辺に点在している
骨董屋さんも目につくもののひとつ。特に目白駅西側には新骨董通りとも呼ばれる通りがあり、何軒もの骨董店が並びます。ただ、青山にある本家骨董通りほど構えの大きな店はないので、注意してみないと分からないのが難です。

子どもを連れたお母さんたち
学生に加え、この街では子どもを連れたお母さんたちの姿もよく見かける
幼児教育のスクールや各種習い事などの看板も目に付きました。子ども向けの教室だけでなく、親も含め、学ぶことに熱心な住民が多いのでしょう。もうひとつ、紳士服店も目立ったもののひとつ。一般に女性向きのブティックはどの街でも目に付きますが、紳士服店はそれに比べれば希少。身だしなみこだわる紳士の多い街ということなのでしょう。

目白通り
目白通り沿いにはごく普通の民家も少なくない
逆に少なかったもの。駅前ではパチンコ屋さんも消費者金融も見かけませんでした。また、驚くほど無かったのはスーパーです。八百屋さん、米屋さん、酒屋さんなど、食料品店自体は見かけたのですが、江戸川橋から目白駅間には皆無で、その先、駅から10分ほど歩いてようやく見かけた時には、ほっとしたほど。

関口台
目白通りの、文京区関口台あたり。高額そうなマンションや住宅などが並び、幹線道路沿いとは思えない
そもそも、このエリア内の目白通り自体、他の幹線道路と違って、カーディーラーや大型家電店、ファミレスなどが少なく、コンビニもそれほど多くありません。働く主婦にとっては便利な街とは言いがたいわけですが、その分、交通量は少なく、通り沿いといっても静かな環境は保たれています。

次に気になる目白の住宅価格を見ていきましょう。

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