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学歴ロンダリングとは?その意味と大学院にもたらした弊害

「学歴ロンダリング」という言葉が使わていますが、どういった意味なのでしょう?ロンダリングという言葉から、出身大学を変える負のイメージが付きがちですが、そんなことはありません。学歴ロンダリングの意味と大学院へもたらした弊害もあわせてご紹介します。

西島 美保

執筆者:西島 美保

社会人の学びガイド

学歴ロンダリングの意味とは?

「学歴ロンダリング」という言葉は、悪い意味で使われるマネーロンダリングのもじりだが……

「学歴ロンダリング」という言葉は、悪い意味で使われるマネーロンダリングのもじりだが……

最近、「学歴ロンダリング」という言葉を目にすることが多々ある。

学歴ロンダリングとは、

「銀行などを通すことによって、不正なお金の出所を隠す『マネーロンダリング(資金洗浄)』のもじり。三流大学出身者がその出身大学を隠すために大学院に進学することをさしている。三流大学卒業の肩書では、有名企業に入ってもコンプレックスを感じることがあるが、大学院に進学してマスターコースなどを修了すれば最終学歴は大学院卒業となり、コンプレックスを軽減できるという。大学側もそうした学生を収容するために、大学院拡大の道をとっている。」(Yahoo!辞書より)

なお「ロンダリング」を短縮して、「学歴ロンダ」と使われることもある。

また、外部進学(自分が行っている大学の大学院に進学せず、他の大学院に進学)で、進学先の大学院が、出身大学よりレベルが高い場合や、社会人が大学や大学院進学することで、高学歴になる場合に使われている。

<目次>  

大学院進学などの学歴ロンダリングは悪くない?

ところで、「ロンダリング」という言葉は、マネーロンダリングから来ており、不正な意味合いを感じさせる。学歴ロンダリングという言葉自体、圧倒的に、差別的な(悪い)意味で使われることが多いようだ。しかし、学歴ロンダリングをして学歴を変えようとする姿勢には賛成だ。

学ぶ機会が多様化し、大学院が増設され、社会人になってから進学する人も増えてきた。今までの日本では、「学歴を変える」という発想自体が珍しかったが、大学改革の一環として、大学・大学院が身近になってきた。社会人が仕事を続けながら進学する環境も整いつつあり、今後、社会人の大学・大学院進学者は増えるだろう。大学院進学者の大学レベルが低いことを「学歴ロンダリング」とひとくくりにして、見下すように使うのは、いかがなものか。

むしろ、その努力なり、向上心なりをほめる形で、肯定的に使っていくべきではないか。(しかしロンダリングという言葉を使っている時点で、肯定的な意味を問うのは難しいのかもしれない)

このような言葉が生まれた背景には、最終学歴が重視される社会の存在が一因だろう。例えば人物紹介の略歴を見ると、氏名に続き、最終学歴を書く人が多い。すなわちそれ以前の学歴は関係なく、最終学歴さえ良ければいいわけだ。(参考:学歴が持つ力

 

アメリカの事例「学歴コンプレックス解消は良い印象」

学歴コンプレックスを解消するために、大学院に進学すること。これも立派な進学目標だ。

日本以上に学歴社会であり、社会人の大学、大学院進学が珍しくないアメリカでは、学歴ロンダリングに匹敵する言葉はないようだ。アメリカで会計事務所を経営する友人に、日本で起きている学歴ロンダリングの話をしたところ、興味深い答えが返ってきた。

「むしろ、そういった行為はすばらしいことだと思うよ。努力して学歴を変えようとしているんだから。私も人を採用する時、履歴書で学歴をチェックするが、いわゆる無名大学から、有名大学院に進学した人がいると、『努力したんだな』と良い印象を受ける。」

 

学歴ロンダリングを褒め、認める社会に

進学目的が人によって違うのは当たり前だ。「学歴を変えたい」という動機で大学院進学のために努力している人が、出身大学が大学院のレベルより低いからといって、「学歴ロンダリング」と差別的に言われるのはおかしい。

どんな動機や方法で進学したっていいのだ。大学院に進学するのは本人だし、その入学を許可するのはその大学院だ。出身大学のレベルをとやかく言うのではなく、むしろ上位大学院に進学した努力を褒め、それを認める社会でありたい。

 

学歴ロンダリングの弊害?大学院レベルの低下

大学院進学の敷居が低くなり「修士」という肩書きだけを欲しがる人もいるようだが……

大学院進学の敷居が低くなり「修士」という肩書きだけを欲しがる人もいるようだが……

前出のYahoo!辞書には、続きがある。

「しかし、過熱ぎみの拡大競争の陰で、大学院の質の深刻な低下を懸念する声もある。大学関係者によれば、『今の修士論文のレベルは、10年前の大学生の卒論以下となっている』とか。」(Yahoo!辞書より)

文部科学省は、大学や大学院の設置基準を改定し、定員の拡充、入学資格の弾力化などを推進した。これを受けて各大学院は、定員を埋めるために積極的に学生誘致を行い、学力試験を免除し、代わりに研究計画書や面接などで選抜を行う制度などを導入するなど、門戸を広げた。その結果大学院の大衆化が進み、研究を自ら進めることが出来ない、修士論文が書けないなどという人が、簡単に大学院生になってしまい、すなわち大学院レベルの低下につながっているという見方もある。

 

大学院は質の向上を重視せよ

AllAbout「資格」ガイドの山下氏は、「修士・博士の値打ち」という記事の中で、大学院における教育の質低下について次のように語っている。

「日本における教育水準が上がるのは喜ばしい事です。大学院の定員枠が広がることそれ自体は非難されることはないでしょう。要はいかにその質を保ち、向上させるか?という事だと思います。(中略)修士・博士の値打ちを下げないためにも、政府はそろそろ枠の拡大から、質の向上に政策を移すべきだと思います。 」

入学資格の弾力化、入試制度改革により、大学院生は年々増加している。今後、大学院の質を保つためにどのようにすべきか、政府及び大学院には対策が早急に求められている。


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