コーチング/人材育成・組織作り

「なぜ?」は、ビジネスにおいてやる気と成長を止める質問

ビジネス上、面談や部下との普段の会話であなたは「なぜ」をどのくらいつかっているでしょうか? この「なぜ」という質問は使い方に少し注意が必要です。今回は「なぜ」の使い方を通して、部下を活かす方法について考えてみましょう。

平野 圭子

執筆者:平野 圭子

コーチングマネジメントガイド

ビジネスで「なぜ」の使いすぎは要注意

ビジネスで「なぜ」の使いすぎは要注意

部下のやる気を上げるのときは、「なぜ」の使い方に要注意

部下が目標達成しなかったとき、部下が約束を守らなかったとき、あなたはどのような関わりをしているでしょうか? 

なぜできなかったんだ」
なぜやらないんだ」
なぜ売り上げが上がらないんだ」
なぜ目標達成できなかったんだと思う?」

もしこんな台詞が出ているとしたら、部下との関わりを少し見直す必要があるかもしれません。こうした場面こそ、部下のやる気や能力を上げる絶好のチャンスです。今回は「なぜ」の使い方を通して、部下を活かす方法について考えてみましょう。
   

「なぜ」が人に与える影響

あなたが部下に対して「なぜ」を使うとき、相手からどのような反応が返ってくることが多いでしょうか? 実は、「なぜ」という言葉は人を萎縮させたり、防御態勢に入らせるという側面があります。それは、「なぜ」は相手に説明を求める質問であるとともに、責任を迫る意味もあるからです。逆に、これまであなた自身が「なぜ」を問いかけられたときを思い出してみて下さい。

「なぜ宿題をやらなかったんだ?」
「なぜ部屋の片付けができないの?」
「なぜ成績が上がらないの?」

こういう言葉が出てくる時は良いことをしたときよりも、悪いことをしたときや上手くいかなかったときのほうが多いでしょう。先生や親からの「なぜ」に反省の促しや責任を迫る意図を感じ取ってきた私たちは、「なぜ」という言葉を聞くと無意識に防御態勢に入ってしまうのです。

そのため、「なぜ」と問いかけられると、相手は「申し訳ございません。私の不注意で」「がんばってはみたのですが」と反省モードに入ったり、「他に優先することがあって」「不況のせいでどこも話さえも聞いてくれなくて」と言い訳モードに入ってしまいます。

上司であるあなたが欲しいのは、反省でも言い訳でもなく、問題究明や未来に向けての一手です。しかし、相手の理由をすぐに知りたいがために、「なぜ」という言葉を使ってしまいます。そして、あなたの意図がどうであれ、往々にして「なぜ」は相手を萎縮させ、やる気を奪う関わりになりかねません。
 

「なに」と「どのように」に置き換える

言葉を置き換えることで相手を話しやすくさせることができる

言葉を置き換えることで相手を話しやすくさせることができる

「なぜ」の代わりに「なに」「どのように」を使うことで、相手に客観的に事実を捉えさせ、原因や理由を考えさせることができます。たとえば、「なぜ」は次のように言い換えることができます。

■「なぜできなかったんだ」
「できなかった原因はだろうか?」(「なに」の活用)
「次はどんなふうにやろうと思っている?」(「どのように」の活用)

■「なぜやらないんだ」
何が障害になっている?」(「なに」の活用)
どんなふうにするとやりやすいかな?」(「どのように」の活用)

■「なぜ売り上げが上がらないんだ」
「売り上げが上がらない原因はなんだろうか?」
「売り上げを上げるために他に何が必要だろうか?」(「なに」の活用)
「売り上げを上げるためにどのようにするといいだろうか?」
「売り上げを上げている人は、どのようにしているのだろうか?」(「どのように」の活用)

■「なぜ目標達成できなかったんだと思う?」
「目標達成に向けて、今回の体験からなにを学びましたか?」(「なに」の活用)
どうやったらうまく目標達成できただろうか?」(「どのように」の活用)

このように「なに(What)」や「どのように(How)」を上手く使うことで、相手を反省や自己防御といった「止まった状態」から、原因や次に行く方法を考えるという「動き出す状態」へ導くことができます。
 

やる気・成長をあげる質問とは?

使っている言葉に意識を向けて気をつけることが大事

使っている言葉に意識を向けて気をつけることが大事

質問の言葉を置き換える有効なポイントを最後にご紹介しましょう。

■過去に留まらず、未来に目を向ける
過去を変えることはできません。そのため質問が原因究明など過去に留まってしまうと相手は反省しかできません。「次はどうやってみるか」などこれから行動できる未来にステージを移す質問を加えることで、部下の行動や思考を促進することができます。

■経験を引き出す
過去を扱う際、かつて経験したことで役にたったことや失敗から学んだことを具体的にすることで、未来に活かす知恵にすることができます。過去を扱う際には事実の確認に留まらず、そこから相手が学べる環境を用意することで相手のやる気や能力を上げることができます。

■考えさせるのではなく、一緒に考える
相手だけに考えさせ、答えを出させるのは相手を緊張させたり、萎縮させてしまいます。本人の成長のため実際には上司は口をはさまず本人に考えさせるとしても、一緒に考えるという姿勢を見せることで相手に安心感や信頼感を生ませることができます。

今後、面談や普段の会話のなかで「なぜ」を使いたくなったら、一度それを飲み込んで、上記のポイントを意識しながら「なに(What)」アプローチを実行してみてください。今まで以上に必要かつ有効な情報を部下から引き出すとともに、部下のやる気をアップさせることもできることでしょう。

■関連情報
相手がすぐに答えられる質問からはじめる
部下を育てる言葉、ダメにしてしまう言葉

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