住みたい街 首都圏/子育て・環境重視の街選び

駅型保育園の多い沿線、少ない沿線

これから住む街を考えるにあたっては、沿線の住みやすさアップにどう取り組んでいるか、電鉄会社の姿勢もポイントになります。ここではその例として駅型保育園を取り上げてみます。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

電鉄会社が
子育て支援事業に乗り出すワケ

送り迎え
働く親の朝は忙しい。通勤と保育園への送り迎えが一度に行えればどれほど効率的か
子どもを預けて働く親にとっては保育園の送り迎えは一大事。できるだけ送迎の時間を短縮したいというのは誰もが思っているところでしょう。そこに駅型保育園のニーズがあります。通勤時に預け、帰宅時に子どもを引き取って帰れれば、時間のロスがないからです。

保育園の子どもたち
子育てに良い沿線であれば沿線活性化につながる、多くの電鉄会社はそう考えている
その駅型保育園を作る電鉄会社には、電鉄会社としての思惑があります。今後、人口が減る時代には当然ながら電車を利用する人が減ります。そこで、少しでも電車利用者、沿線に住む人を増やすためには、乗りやすい電車にしていくと同時に、住む人が暮らしやすい沿線作りをする必要があります。そのひとつが子育て支援。新しく家を買う、子どものいるファミリーにとっては子育てのしやすさは沿線、街を選ぶポイントになるからです。

そこで、電鉄会社は子育て支援事業に乗り出しているわけですが、今の時点では沿線によってかなり温度差がある様子。首都圏の主要各沿線の現状をみてみましょう。

JR東日本 埼京線は子育て環境充実路線?


1996年、今から14年前と早くから駅型保育園事業に取り組んできたのはJR東日本。私鉄各線に比べて駅周辺に所有する土地などが多いため、ホテル、商業施設その他など多岐に渡る事業を手がけており、子育て支援はその一環。実際、最初に作られた国分寺の駅型保育園は駅に隣接するホテルの中に作られています。

その結果、同社ホームページ内の子育て支援事業の項を見ると、2009年9月現在、保育園や送迎保育ステーションなどの子育て支援施設は合計で27ヵ所になっているとのこと。中でも多いのが2004年に「子育て応援路線」と位置づけ、開発を進めてきた埼京線(含む埼玉新都市交通)。ここには11園の保育園があり、延長保育や一時保育なども行われているといいます。混雑の激しさや痴漢の多さなどマイナス情報の多い埼京線ですが、子育て面からするとプラスもある沿線といえそうです。

東急電鉄 駅型保育園に加え、学童保育事業も


駅型保育園に加え、2008年には学童保育事業にも参入したのが東急電鉄。まず、駅型保育園としてはパレット保育園という名称で2003年に開始、実際の運営は別の会社が行っています。現在は大岡山、長津田、綱島などで営業していますが、一部沿線以外の場所もあるので、探す折にはご注意を。

また、東急電鉄は2008年からキッズベースキャンプという名称の学童保育事業にも参入しています。小学生を放課後、預かってくれるというサービスで、小学校その他公的な学童保育とは異なり、最長夜22時までと遅くまで預かってくれる上、送迎、昼食・夕食などのサービスがあるのが特徴。出店確定エリアも入れると2010年1月の時点で16ヵ所にあり、報道によると、2012年までに30施設の展開を目標としているとか。私鉄の中ではもっとも子育てしやすい環境作りに力を入れている沿線といえそうです。ただし、毎日利用するとなるとそれなりの出費になりますから、その点は頭の痛いところです。

相模鉄道 駅型保育園に学習支援も行う学童保育も


相鉄グループの子育て支援も保育園と学童保育の2本立て。子育て支援は緑園都市、二俣川、瀬谷など4ヵ所の駅型保育園をそうてつ保育園GENKIDSとして展開しており、特に二俣川は夜11時までの営業が目につくところ。もうひとつの学童保育そうてつエルフィーキッズ少人数制で宿題から中学受験に向けた基礎学力向上までの学習支援を行うということで、キャンセル待ちが出るほど。進学塾との提携で学童保育だけでないサービスを提供している点が受けているようですが、これは沿線の教育熱心さの反映ともいえるでしょう。

京王電鉄 駅型保育園+3事業で子育て支援


京王多摩川、千歳烏山など4ヵ所のキッズプラッツと呼ばれる保育園に加え、子育て支援の機能、設備を取り入れた賃貸マンション、小学校入学前の子どもを対象にした教室、子育て支援のための多機能拠点施設の4本の柱からなるのが京王電鉄の進める子育て支援事業。運営するのは京王電鉄100%出資の子会社京王子育てサポートでホームページを見ると、電鉄会社が子育て支援を行う意図が明確に分かります。事業の中では子育て支援機能のある賃貸マンションが面白いところですが、1ヵ所だけではなんともコメントはしづらい。こうした住まいが増えてくると家族も楽になるのでしょうが……。

小田急電鉄 主要駅中心に9施設が営業中


小田急線では2006年にグループ内に小田急ライフアソシエを設立、現在祖師谷、成城、新百合ヶ丘など9ヵ所で事業を行っています。手作りの給食、一時利用を可とするなど、こだわりのあるサービスが特徴のようで、基本的な利用時間は朝7時~夜9時までとなっています。設置されている駅を見ると、ターミナルとして利用者の多い駅が中心になっており、利便性は集中する傾向にあることが分かります。

京浜急行電鉄 ベビーシッター派遣などのサービスも


京急グループにはビルのメンテナンスやクリーニング、マンション管理などといった地域の生活サポートに関する京急サービスなる会社があり、ここで子育て支援事業も行われています。実際の事業としては井土ヶ谷、上大岡、金沢文庫など4ヵ所で保育園を展開、さらにベビーシッターの派遣なども行われています。園庭のある保育園が多いのが特徴で、子どもの画像を携帯に配信するサービスなども行われています。

西武鉄道 テナントの施設として保育園が


自社あるいは子会社などの事業としての保育園はありませんが、西武池袋線中村橋駅近くの高架下、西武新宿線武蔵駅ステーションビル内には東京都の認証保育所が入居しており、今後もテナントしての子育て支援事業は推進の方向とのこと。西武池袋線では複々線化などが進められていますから、駅が新しくなったところでこうした設備が増えることを期待したいものです。東武鉄道も同様にテナントしての保育園はあるようですが、自社ホームページ内からは探せないので、さほどに力を入れているジャンルではないのかもしれません。京成電鉄も状況は同じです。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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