住宅リフォーム/住宅性能向上リフォーム[断熱、結露・湿気対策、防犯]

バリアフリーリフォームの基本、意外な必要・不必要

バリアフリーリフォームはどこまで必要?いざという時に困らないために、ここまではやっておきたい基本のポイント、DIYでも簡単にできるアイデア、リフォームならではの問題点もご紹介します。(2017年改訂版、初出:2003年6月)

尾間 紫/Yuu

執筆者:尾間 紫/Yuu

リフォームガイド

いざという時に困らないために、バリアフリーリフォームの基本のポイントをご紹介します。DIYでもできる簡単アイデアや、リフォームならではの問題点もご紹介します。

バリアフリーリフォームの費用は、数千円から1,000万円単位まで様々

クレセント錠

バリアフリーリフォームと防犯リフォームは、慌てて行う人が多い。

バリアフリー住宅とは障害物の無い家という意味で、車椅子や松葉杖でも自由に動きまわることができ、年をとっても安心して暮らすことができる家です。

バリアフリーにするためのリフォームには、床の段差の解消、手すりの取り付け、ドアを引き戸にするなどの比較的小規模なものから、廊下を広げる、水まわりを移動する、ホームエレベーターを付けるなどの大規模なものまで、費用も数千円から1,000万円単位まで幅広くありますので、状況や予算に合わせてじっくりと計画を立て、我が家に必要な工事をしっかりと見極める必要があります。

 

バリアフリーリフォームはいつやればいい?

手すり

その手すりは本当に必要?むやみにつければジャマになることも。

ではこれらの工事は、いつ行えばいいのでしょうか。実は、バリアフリーと防犯リフォームは、必要になってから慌てて行う人が多いのが現状です。

その時になって慌てないよう、一歩早めの準備をしておくことが大切なのですが、そうは言っても、将来の全てを見据えて完璧な家作りをすることは難しいものです。

個人住宅のバリアフリーは公共スペースとは違い、これさえやっておけばいいというものではなく、個々の事情によってリフォーム内容が異なります。中には、将来のためにと、とりあえず手すりを取り付けたせいで、かえって暮らしにくくなってしまった家もあります。

 

その手すりは今必要?家族が安全に暮らす基本のバリアフリーリフォーム

乳幼児

赤ちゃんからお年寄りまで安全に暮らせるよう、バリアフリーの基本を押さえる。

バリアフリーリフォームで大切なことは、今すぐ手すりを取り付けることではなく、いざと言う時に困らないよう、将来の様々な状況に対応できる下準備をしておくことです。

手すりの取り付け位置は、その時の年齢や身体の状態によって、高さ、左右、向きも異なり、また今が右利きだからと言って、将来も右手で手すりを握るとは限りません。

実際に使う時になって利き手の握力が弱くなり、反対側に手すりを付け直したケースや、廊下の両側に手すりを取り付けしたら車椅子が通れなくなり、また外したケースもあります。

では今我が家に必要な工事は何なのか?まずは年齢に関係なく、赤ちゃんからお年寄りまで安全に暮らせる家にする、バリアフリーリフォームの基本をご紹介しますので、それらのポイントを押さえつつ、我が家の状況と照らし合わせて、必要な下準備を整えましょう。どれもリフォームの際の小さな工夫で、住まいの安全性を高めることができるものばかりです。

 

敷居など床の段差を解消するミニスロープなら、DIYリフォームでも可能

敷居解消スロープ

段差にミニスロープを取り付ける。DIYで簡単に取り付けできる(TOTO

ドアや敷居の小さな段差は、車椅子の通行にジャマになるだけでなく、小さな子どもや妊娠中の女性、お年寄りにとっても非常に危険です。

段差解消は、年齢に関係なく家族全員が安全に暮らすための基本のバリアフリーリフォームです。段差にミニスロープを取り付けるだけなら、DIYでも簡単にできますので、なるべく早く対策しておきましょう。ただし滑って動くと危険ですので、しっかり取り付けることが肝心です。

 

  

浴室の段差解消スノコは、分割できるように工夫を

風呂段差解消キット

置くだけで段差解消、からり床仕様の浴室すのこ。サイズの確認をし設置は専門業者に依頼(TOTO

浴室の床の段差は、すのこで解消できます。ただしすのこは動くと危険ですので、動かないよう滑り止めシートを敷くか、スキマ無く敷き詰める必要があります。また掃除がしやすいよう、一枚ものではなく、分割タイプを選んでおくことがポイントです。

古く寒いタイルの浴室なら、断熱性能が高いシステムバスへのリフォームを検討するのもいいでしょう。寒いお風呂は、高齢者にとってヒートショックという命にかかわる危険な体調の変化を引き起こす可能性があります。

暖かいシステムバスならヒートショックの危険性を減らし、またバリアフリー対応のバスなら脱衣室からの段差も無いので、安全にお風呂に入ることができるようになります。

 

忘れがちな浴槽のまたぎ高さ、バリアフリーな浴室選びを 

ベンチ浴槽

ベンチに座って身体が洗え、そのままスライドして浴槽に入ることができる安心設計(TOTO

忘れがちなのが浴槽のまたぎ高さです。またぎやすい高さは、洗い場から浴槽の縁まで40cm前後です。高すぎても低すぎても転倒や転落の危険がありますので、リフォームの際には必ず確認しておきましょう。

浴槽脇にベンチがついたシステムバスもあります。ベンチがあればいったんそこに腰掛けてから、身体を回転させて浴槽に入ることができるので安全性が高まります。

最近ではバリアフリーの工夫がされたシステムバスがいろいろありますので、浴室リフォームの際には、出入りの広さ、床の段差、冬の暖かさ、浴槽への入り方、洗い場の広さ、手すりの取り付けなどを忘れずに確認しておきましょう。

 

ドアは引き戸にリフォームを、3枚引き戸は車いすでも安心

バリアフリー引き戸

3枚連動引き戸なら、車いすや杖をついても開閉がしやすい(大建工業

室内ドアは引き戸にリフォームしておくと、車いすや杖をついての開閉がしやすくなります。

引き戸には色々な種類がありますが、3枚引き戸なら開口幅が広く取れるので、車いすでもスムーズに通り抜けができます。浴室やトイレのドアにも3枚引き戸タイプがあります。

 

足元の事故多し!滑りにくいフローリングやコルク床で転倒防止

フローリング

畳に近い柔らかさを持つフローリング材。上から重ね張りするタイプなのでリフォームしやすい(永大産業

家庭内事故で多いのが足元の事故です。滑る床は、お年寄りや小さな子どもたちにとって危険なだけでなく、ペットたちの健康にもよくありません。

滑りにくいフローリングや柔らかいコルク材などを選んで、安全性を高めておきましょう。最近は、転んだ時に衝撃を吸収してくれる柔らかいフローリング材もあります。まずは実物で確認してみましょう。

 

キッチンや洗面台は足元がポイント、トイレと寝室の位置の見直しも

ユニバーサルキッチン

誰もが使いやすいユニバーサルデザインのシステムキッチン(TOTO

キッチンや洗面台は、椅子に座って作業ができるよう、足が中に入るようにしておくと、車いすになった時はもちろん、普段のキッチンでの家事も楽にできるようになります。

また年をとるとトイレが近くなります。リフォームの際には、寝室からトイレに行きやすいよう間取りの見直しもしておくといいでしょう。

 

つまむのは大変!扉の取っ手は大きく、水栓金具はハンドルに

ドアノブ

引き戸にも大きなハンドルを取り付けておけば開閉が楽になる(パナソニック

高齢になると指先の力が弱まり、つまんでまわす、指でひっぱるなどの作業が難しくなります。

握力が弱くなってきた人や小さな子どもにも掴みやすいよう、ドアには軽い力で開くレバーハンドルを取り付け、収納扉には大きめの取っ手、窓サッシには掴んで開閉できる大型ハンドル、水洗金具は片手で簡単に出し止めできるレバー式を取り付けておきましょう。

 

段差がある場所、浴室、トイレには手すりを付ける

バリアフリー階段

階段など、高齢者だけでなくバランスを崩しやすい場所には安全のために必ず手すりを。

足腰が弱ってくると、手をついて身体を支えながら立ち上がるようになります。階段や浴室、トイレなど、段差がある場所、立ち座りをする場所、身体の向きを変える場所には、手すりを取り付けておきましょう。

デザイン重視で手すりが無い階段を見掛けることがありますが、足を滑らせた時にとっさに掴む場所が無いと激しく転倒する恐れがあり危険です。これらは基本のバリアフリーリフォームですので、できるだけ早く取り付けしておきましょう。

 

部屋は明るめに、LEDにリフォームしておけば交換の手間を省ける

照明

調光だけでなく調色も可能なLEDシーリングライト(オーデリック

年を取ると視界が暗くなり、より明るい照明器具が必要になります。暮らしのシーンで明るさのメリハリをきかせることができるよう、リフォームの際には明るさや色を変えることができるLED照明を選んでおくと便利です。

また高齢者の家庭内事故で多いのが、高所での作業をしようとして脚立や椅子から落下してケガをするというものです。LED照明なら寿命が長いので、交換頻度が低くて済み、安全性が高まります。

 

次のページはリフォームならではの問題点、今すぐ完璧にするのではなく将来の準備を。
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