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ピルの効果・副作用……気になるメリット・デメリット

【薬剤師が解説】ピルには避妊効果だけでなく、ホルモンバランスの改善を始め様々な副効用があります。ピルを処方してもらうときの費用の目安、服薬頻度、長期間飲み続ける場合の注意点やリスクなど、ピルを服用するにあたり、知っておくべき基礎知識を詳しく解説します。

三上 彰貴子

執筆者:三上 彰貴子

薬剤師 / 薬ガイド

ピルとは

患者に薬を渡す薬剤師

ピルを手に入れるには、医師の処方せんが必要です。病院を受診して医師に処方せんを発行してもらいましょう

Q:最近、友人がピルを飲み始めました。ピルについて良く耳にしますが、長く飲み続けても体に害はないのでしょうか? ピルに興味はあるので、色々教えてください。

A:お答えしますね。まずピルは、大きく分けて2つの目的で服用されています。避妊目的と避妊以外の効果である副効用目的です。そしてピルは全世界で何と1億人以上が服用している、ひとつの薬の種類の中では最も多くの人に飲まれている薬なのです。

今回は今まで受けた質問もあわせてご紹介しますので、内容が盛りだくさんです。重要なピルの基礎知識ですので、ぜひおさらいも兼ねてご覧ください。
 

ピルとは? 避妊効果に加え、生理不順や肌トラブル改善も

風邪
現在、ピルは日本で12種類ぐらいあります。自分にあったピルを見つけましょう
ピルは、エストロゲンとプロゲステノーゲン(プロゲステロンの作用をする物質の総称)というホルモンが入っている薬です。

ピルを飲むことによって、体のホルモンバランスを妊娠している状態に似たようにして排卵を抑制します。ピルには、妊娠が成立した時に分泌される上記2つのホルモンの1/20以下程度の量が含まれています。

ピルを飲むことで、妊娠している状態に近くなるので、排卵をしなくなります。そのため、避妊の効果があるのです(その他にも、着床を抑制したり、子宮内に精子が流入するのを防いだりという作用があり、それによっても避妊効果があるようです)。

避妊以外に副効用(避妊以外の効果)を目的としてピルを服用している方もいます。副効用の例は、次のようなものがあるといわれています。

■月経に伴うトラブルの改善
月経痛や月経量の軽減、月経不順や貧血の改善など

■ホルモンバランスの変化による効果
にきびの改善、多毛症の改善など

■排卵を抑制することによる効果
卵巣のう腫や子宮外妊娠の減少など

■長期服用による効果
良性の乳房疾患の減少、子宮体がんのリスク低下など

なお、これらの効果は必ず全ての人に見られるわけではありません。医師と相談の上、服用をするかどうかの選択をしてください。
 

ピルの入手方法……産婦人科や内科を受診して処方を

日本でピルを手に入れるには、医師の処方せんが必要です。産婦人科(婦人科)や一部の内科などを受診して、医師に処方せんを発行してもらいましょう。扱っていない医院もありますので、事前に電話で問い合わせた方がいいかもしれません。

最初の受診の際に、内診といって子宮の状態を超音波などで見たり、子宮がんの検査をする場合があります。受診で特に問題がなければ、処方せんを発行してもらえ、ピルを入手することができます。

でも産婦人科が初めてだと、恥ずかしかったり不安だったりと躊躇してしまいますよね。とはいえ月経を迎えているようでしたら、一度は産婦人科を受診しておいたほうがいいと思いますよ。万一女性の病気(子宮内膜症など)があった場合、早めに治療ができるかもしれません。色々相談できる産婦人科の先生を見つけておくと、将来子供を作るときなど、いろんな心配ごとを話せて安心ですしね。
 

ピルは自費診療での購入……1カ月分の値段は2000~3000円

ピルの処方は、保険がききませんので自費診療となります。目安として初回は上記のような検査などがいるので1万円前後かかることがありますが、ピル自体は1力月分(1シート)、2000~3000円程で買うことができます。

値段も医院によって異なりますので、事前に電話などで問い合わせておくと確実です。

時々、お金がかかるということだけで、ピルの服用を躊躇する方がいます。私個人の見解ですが、最近10代~20代前半の学生などの人工中絶が増えています。月々3000円という値段が高いかどうかという価値観は人それぞれですが、その値段で妊娠・中絶のリスク、すなわち心と体が傷つくのを防ぐことができます。

また、産婦人科にかかることで女性の病気の早期発見ができます。性交渉を行う年代になったら一度、ピルというものも避妊の選択肢として考えてもいいのではないでしょうか。もちろん、人によってはピルがどうしても体に合わない方がいるので、メリットとデメリットを考慮して選択肢に入れてみてください。
 

ピルの正しい飲み方……服薬時間と継続日数

ピルは、毎日同じ時間に飲みます。朝9時に飲む方は、次の日も朝の9時ごろに飲んでください。

ピルは、成分が入っている薬を21日間飲みます。その後、7日間は飲まない、またはプラセボ(偽薬:ぎやく)という成分の入っていない薬を飲みます。21日間飲み続けた後、3~4日後ぐらいに月経があります。

なお、ピルを飲んでいるときの月経は、子宮内膜がそれほど厚くなりませんので、飲まないときと比べて量が少ないことが多いです。長く飲んでいる人は、本当に少しの出血になってしまった!(または、まったくない人もいるよう)と、驚いていました。そのため、月経痛が軽減することがあります。

ひどい月経痛は、子宮内膜症などの懸念がありますので、特に突然ひどくなった場合などは、産婦人科の受診をお勧めします。子宮内膜症については、「子宮内膜症の原因・症状・診断方法」をあわせてご参照下さい。
 

ピルを飲み忘れた場合の対処法

飲み忘れた場合は、飲み忘れてから24時間以内かどうかが分かれ目になります。

■飲み忘れてから24時間以内の場合
気づいたときに、1錠飲み忘れた分を飲んでください。そしてその後、いつも通りの時間にもう1錠飲んでください。

例)毎日朝の9時に飲んでいるが、今日は夕方の4時(16時)ごろに飲み忘れに気づいた場合。飲み忘れの時間が24時間以内(16時-9時=7時間)なので、気づいたとき(16時に)1錠飲みます。そして、次の朝9時のいつもの時間にもう1錠飲みます。

■飲み忘れてから24時間の場合
いつもの時間に2錠飲んでください。

例)毎日朝の9時に飲んでいて、昨日飲み忘れてしまったことを今日飲む時間の9時に知った場合。9時に2錠飲んでください。

■飲み忘れてから24時間以上経過している場合
この場合は、目的に応じて2つのパターンがあります。

1.避妊を目的としてピルを飲んでいる場合
ピルを中断して、月経がくるのを待ちましょう。月経がきたらまた新しい次のシートを飲み始めます。

ただし、この期間(中断してから新しいシートを飲み始めて1週間)は避妊効果は確実ではありませんので、他の避妊方法(コンドームなど)を併用してください。

2.副効用(避妊以外の目的)を目的としてピルを飲んでいる場合
飲み忘れを知ったときに2錠飲んでください。その後、次の日からはいつもと同じ時間に飲んでください。

例)毎日9時に飲んでいて、昨日飲み忘れて、今日の夕方の4時(16時)に気づいたとします(24時間+7時間=31時間経っています)。24時間以上経っていますので、気づいた今日の夕方4時(16時)に2錠飲んでください。さらに、次の日は毎日飲んでいる9時に1錠飲んでください。


1の場合でも2と同じように続けて飲んでしまってもかまいません。ただ、服用を再開してから1週間は確実な避妊効果が得られませんし、出血(月経)が起こることがあります。
 

ピルは大きく2種類……適切な飲み方と選び方

ピルは、錠数が異なるタイプと、飲み始める時期が違うタイプの2つに大別されます。

■錠数が異なるタイプ
1つのシートに21錠入っている21錠タイプと、28錠入っている28錠タイプがあります。

21錠タイプは21日間飲んで、7日間休薬(薬の服用を休む)します。そして8日目から次の新しいシートの錠剤を飲み始めます。

28錠タイプは28日間飲み続けて錠剤がすべてなくなったら、29日目に新しいシートの錠剤を飲み始めます。28錠タイプの最後の7錠は、「プラセボ(偽薬:ぎやく)」といって、薬の成分が入っていない錠剤です。21錠タイプだと7日間飲まない期間の際に、何日目か分からなくなってしまうことがありますが、28錠タイプですと薬を飲まない期間がないので、飲み続ける習慣をそのまま維持できるというメリットがあります。

■飲み始める時期が違うタイプ
月経が始まった日に飲み始めるDAY1(デイワン)タイプと、月経がきてから初めてくる日曜日から飲み始めるSunday(サンデイ)タイプがあります。どちらも効果は一緒ですが、Sundayタイプは、月経が日曜日にあたらないようになっているので、土日のイベントや旅行などを考えている方はこちらを選ぶと便利でしょう。

ただ、どちらも飲み始めてから1週間は確実な避妊効果が得られませんので、他の避妊方法(コンドームなど)を併用してください。

■その他
ピルに含まれている成分の違いや、成分の量によってピルの種類を分ける場合もあります。少し専門的になりますので、受診の際に医師または薬剤師にたずねてみてください。

日本で販売されているピルは、12種類ぐらいあります。合うピルが見つかるまで、何種類か試してみてください。友人は、3種類目で合うピルに出会えたようです。

合うか合わないかというのは、気持ち悪くなるなど副作用がでるかでないかということが目安になります。2シート(2ヶ月)ぐらい飲んでみて、合わないようだったら医師に相談して他の種類のピルに変えてもらいましょう。
 

ピルの副作用・デメリット……気になる症状は早めに受診を

ピルを飲み始めると、つわり様症状(軽度の吐き気、乳房の張りなど)や月経と月経の間に出血(不正性器出血)がみられることがあります。
また、人によって変わりますが、ピルの種類によってはニキビのような吹き出物が出る場合があります。

軽度のものであれば、2~3ヶ月(2~3シート)飲み続けることによって治まります。

しかし、ひどい場合、なかなか治まらない場合など、ピルの種類を変えることによって治まることもありますし、それ以外の原因がある場合もあります。おかしいなと思う場合は、ピルを処方した医師に相談してみてください。

最近、10代~20代前半の人工中絶だけではなく、性感染症(クラミジア、ヒトパピローマウイルスなど)が増加しています。ピルには、性感染症の予防効果は一切ありませんので、性感染症予防には、コンドームを性器挿入行為の前から着けましょう。


また、女性ホルモン(エストロゲン)の作用で頬骨のあたりに少しシミができるという人もいます。妊娠時にはシミに気を付けたほうがいいのですが、妊娠時の1/20ぐらいのホルモン量ですので、ピルのせいという訳ではない場合もあります。

シミを気になさるようでしたら、ピルを飲む飲まないにせよ日焼け止めを塗ったりビタミンCを飲むなどのケアはした方がいいですね。

ただ、最近は過度な日焼け予防により、免疫や骨形成などに必要なビタミンD3が不足しているという報告もあります。ビタミンD3は皮膚で作られるのですがUV(紫外線)が必要だからです。

UVの浴び過ぎもシミ、しわだけでなく皮膚がんのリスクがありますので、半袖短パンの状態でしたら直射日光で2~5分ぐらいが目安です。
シミ、しわにならない手のひらでしたら、15~30分ぐらいは大丈夫ですので、少しUVのことは気にしてみてくださいね。

 

ピルを飲んではいけない人は? 服薬の禁忌事項

次の項目に当てはまる人は、ピルを服用することができません。または、医師と相談の上、服用できるかどうか判断してもらいましょう。
  • 35歳以上で1日15本以上タバコを喫う方
  • 血栓性静脈炎、肝塞栓またはその既住のある方
  • 乳癌、子宮体癌、子宮頸癌、子宮筋腫、または疑いがある
  • 脳血管、心血管系の異常のある方
  • 肝機能障害
  • 高血圧、血栓症、心筋梗塞にかかったことがある、またその疑いがある
  • 糖尿病、高脂血症
  • 妊娠(または、その可能性)、授乳中の女性
  • 最近手術をした、また手術の予定のある方
など
 

ピルには月経前症候群・PMSの軽減作用も

性交渉の可能性はあるけれど、まだ妊娠を望んでいない女性。例えば、学生や未婚の女性、妊娠することによってキャリアを中断できない女性、もしくは、ある程度キャリアを実現してから出産を考えている女性です。

また、最初にご紹介した副効用を目的として飲んでいる女性もいます。例えば、月経痛がひどかったり、月経の前の憂うつな気分、「PMS:月経前症候群」を軽減するために飲んでいる人もいます。さらに、定期的に月経がきたり、月経の時期をある程度柔軟に動かせるというメリットのために服用している女性もいるようです。

これは、あくまでも私の周りの事例ですので、受診時に服用する理由などを含めて医師に相談してみてください。
 

効果をよく理解することが、ピル服用の第一歩

知人の女性外来の医師や産婦人科の医師は、ピルも理解して正しく付き合えば、とても良い薬だと言っています。もちろん、個人的にピルの服用を勧めているわけではありませんが、ピルという薬があるということ、ピルによって妊娠などの不安や月経時の諸症状を軽減して過ごしやすい生活になる可能性があることを知っておくのは良いかもしれません。

ピルに関しては、いろいろな議論があるようですが、私なりに誤解のないように、メリット・デメリットをご紹介してみました。もし誤解になる部分がありましたら、ご意見をいただければと思います。

*ネット上での診断・相談は診察ができないことから行えません。この記事は実際の薬局での会話をもとに構成したものです。相談が必要な方は、医師や薬剤師に実際にお聞きください。

■参考
  • 女性医療ネットワーク
  • ピル110番>「エコロジーと女性」ネットワーク
  • ピルとの付き合い方>ruriko

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